アナログ時代の趣味性が復権するPCオーディオ(7)~悩ましいケーブル問題(3)

新年明けましておめでとうございます・・・いささか時期外れではありますが(^^;
さて、昨年の11月の末に「アナログ時代の趣味性が復権するPCオーディオ(5)~悩ましいケーブル問題(2)」と題して、LANケーブルに関わる話題について言及してからパッタリと更新が止まってしまっていました。続けてUSBケーブルについて言及する予定だったのですが、私の興味が他の部分に移ってしまい、年末はそちらにかかりっきりになっていました。
どうにも移り気な性分で興味があちこちに飛んでしまうのですが、年末の件はとりあえず自分なりにある程度は納得がいったので、再びPCオーディオにおける趣味性の問題に舞い戻りたいと思います。

USBケーブルで音は変わるのか?

2009年の7月に「ワイヤーワールド オーディオグレードUSBケーブルド」という記事を追加しています。「こんな事を書いたら、せっかくのサイトが荒れちゃいますよ!!」というご忠告をいただいたことを鮮明に覚えています。(^^;
その頃は、「デジタルでデータをやりとりしているPCオーディオにおいて、ケーブルを変えたくらいで音が変わるはずがないだろう!」という事を余裕の「上から目線」で忠告できる時代だったのですね。今時そんなことを言えば、反論の対象にもならないで黙殺されるだけです。

しかし、2011年の9月に「PCオーディオの都市伝説(3)~USBケーブルで音が変わる(1)(2)」という記事でこの問題を集中的に考えた時点でも、「USBケーブルで音が変わる」と言うことは完全なコンセンサスにはなっていませんでした。
わずか2年前の話です。
私はこの「デジタルだから音は変わらない」という主張を「デジタル不変の神話」と呼びました。この神話は本当に頑強で、今も影響力は失っていない部分もあるのですが、それでも昨年(2013年)は「デジタル不変の神話」がようやくにして翳りを見せた年としてPCオーディオの歴史に刻まれるのではないかと考えています。

あらためて確認しますが、USBケーブルで音は変わるのか?
変わります、間違いなく。

ただし、なぜ変わるのかは「よく分かりません。」残念ながら、そう言わざるを得ないのが現状です。
データ転送の規格としてのUSBがかかえる問題については、都市伝説として2011年9月の段階で集中的に考えてみましたので興味のある方は上記リンクから参照してみてください。ひと言で言えば、「TCP/IPプロトコル」を基盤としたLANケーブルに比べれば問題点が満載の規格だと言うことです。そして、そう言う問題点が山盛りになっているがゆえに、その問題点に対する「対策」が施されたと主張する各種のUSBケーブルが市場に出回ることになるのです。
そして、そういうUSBケーブルを使ってみると、困ったことに(^^;音は変化します。誤解のないように言い添えておきますと、その「変化」は「良し悪し」の価値判断を含みません。とにかく変化します。
ただし、なぜ変わるのか、それを完璧に説明できる人がいないのです。よって、現時点では経験則で見極めていくしかないと言うことが、この問題を悩ましく、そして難しくしています。

例えば、USB規格がかかえる一番大きな問題点として指摘されるのが「データと電源が一本のケーブルに同居している」ことです。
これは、オーディオ規格として使っていく上では実に困ったことです。電磁波ノイズの固まりとも言うべきパソコンから、そのパソコン由来の強烈なノイズが電源ラインを通ってオーディオシステムに持ち込まれるからです。
ですから、この問題に対策を施すことの必要性は早くから指摘されていました。私の知る限りでは、メーカー製のUSBケーブルの中でこの問題に早くから取り組んでいたのがアコースティックリバイブのUSBケーブルでした。
<USB-1.0SL>

この会社のケーブルの特徴は、普通は一本であるケーブルをデータ用と電源用の2本に分けてある点です。

そして、この発想を突き詰めれば、最終的には「電源系の信号線なんか切ってしまえ」というところに行き着きます。
オーディオ用に使うUSB-DAC(USB-DDC)ならば専用の電源を持っているのが普通ですから「バスパワー駆動」で動作させる必要はありません。そうなると、USBケーブル内の電源系の信号線はノイズを持ち込む「有害なだけの存在」になってしまいます。それならば、そんな信号線なんかはじめから切ってしまえ!!と言うわけです。
この発想の行き着く先が、エルサウンドの「データ専用USBケーブル汎用版」です。

エルサウンド「データ専用USBケーブル汎用版(Improved)

ただし、電源系の信号線を切ってしまうと、大部分のUSB-DACがPC側から認識されなくなるので、認識用の電気信号を別途アナログ電源で供給してあげると言う、普通の人から見ればかなり「変態的」なケーブルです。この発想は基本的にはポイントを突いていたようで、データ転送部分のケーブルは普通の汎用品に毛の生えた程度のものしか使っていないにもかかわらず、音質改善の効果には目覚ましいものがありました。

ところが、困るのは、この電源ケーブル問題にそこまで突っ込んだ対策を施していなくても、音質的に肩を並べるようなUSBケーブルがいくつも存在するようになったことです。
その一例が、現在私がメインで使っているオヤイデのケーブルです。

オヤイデ電気「Continental 5S

もちろん、このケーブルも電源ライン問題にはそれなりの対策を施しているのですが、エルサウンドの変態的なケーブルと比べれば甘いものです。そして、普通はこういう勘所への対策で差があれば音質的にも大きな差がつくというのがオーディオの常識でした。
ところが、この両者を聞き比べてみると、エルサウンドのケーブルのいい部分がオヤイデのケーブルからもしっかりと聞き取れた上に、少しは「お化粧上手」なようで、その分だけ軍配が上がりそうなのです。

USBケーブルというのはLANケーブルと違って「アイソクロナス転送」なので、データ転送の正確性は犠牲にされています。しかし、「Voyage mpd starter kit」や「Cubox」のような安定性の高いシステムにおいて、わずか1メートル前後ケーブル長でデータの欠落が起こるとは思われません。
ですから、「USBケーブルの導体の素材を改善して電気抵抗を下げる」事を売りにするようなケーブルは眉唾だと思っていたのですが、現実はそれなりの効果を発揮しているように見えます。もちろんその効果が、オヤイデが主張しているように、データをおくる導体に「高品位5N純銀導体」を使用しているためなのか、それとも「インピーダンスを最大限に考慮した設計と高度な技術で厳密なピッチ調整」を行なったためなのかは分かりません。
つまりは、USB転送というオーディオ的には問題山積の規格のどこに問題があって、その問題に対してどのように対処すれば効果があるのかが、必ずしも全体のコンセンサスになっていないのです。そして、そのコンセンサスの不在は怪しげなメーカーを跋扈させる原因となっていて、それがPCオーディオにおけるケーブル(特にUSBケーブル)問題を悩ましくしているのです。

さらに言えば、以前も少しふれたのですが、フォステクスの「ET-U1.0」という名もないようなケーブルが私のシステムとは不思議と相性がいいのです。

フォステクス「ET-U1.0

このケーブルをつないだとたんに、エソテリックの「D-07X」をメインとしたシステムが、パラサウンドのDACに変更したかと思わせるようなナローレンジで音楽を再生しはじめます。帯域的には上も下も出しゃばらず、音場的にも中央部分に行儀良くまとまって、実にこぢんまりとした世界を演出します。たかがケーブル一本でここまで世界が変わるのかと思わせるほどの変貌ぶりです。
そして、恐ろしいのは、この状態で音楽を聴き続けていると、「あんた、そんなに肩肘張らずに、もっと気楽に音楽を楽しんでもいいんじゃないの」という囁きに屈しそうになるほどの「美しさ」を持っていることです。
私はこれを「ナローレンジの美」と名づけたのですが、たかがケーブル一本で優劣というレベルを超えて、世界観が異なるほどの違いを演出してしまうことに開いた口がふさがりませんでした。

USBケーブルこそはPCオーディオ最大のネックポイント

ケーブル一本で時にはシステム全体の世界観を変えてしまう、ならば「USBケーブル=アナログ時代のカートリッジ」と割り切ってしまう考えもあるのかもしれません。それくらいに、USBケーブルは大きな影響力を持っています。
しかし、私の中には「USBケーブル=アナログ時代のカートリッジ」などと暢気なことを言う気持ちは全くありません。

何故ならば、どう考えてもUSBという規格はオーディオ用に使うには問題がありすぎるからです。
私はUSBケーブルこそはPCオーディオ最大のネックポイントだと考えています。

しかしながら、USB規格にかわるものと言えば、現状では「HDMI」か「FireWire」くらいしかありません。
「FireWire」にも問題がないわけではありませんが、少なくともUSBよりはましでした。ですから、PCオーディオ黎明期には高級品は「FireWire」、安物は「USB」という棲み分けがあったのですが、残念ながら「FireWire」は「USB」に駆逐されてしまいました。肝心のPCに「FireWire」の接続端子がつかなくなったのでは仕方がありません。死んだ子の年を数えるようなものです。

「HDMI」に関しては未だに未知数です。
私の知る限りでは、DACのデジタル入力端子として「HDMI」を装備しているのはLINNのシステムくらいでしょうか。当然のことながら、LINNのシステムは試したことがないので、何のコメントもできません。(^^;
それ以外では「HDMI → S/PDIF 変換コンバーター」なんてのもあるようですが、まだまだオーディオグレードで使えるレベルではないようです。
それに、何よりも、私自身が「HDMI」と言う規格について何も分かっていないので、それが期待の星なのか屑なのか、それすらも全く分かっていません。

と言うことで、要望です。
オーディオの世界でPCオーディオは既に確固とした地歩を築いています。今やこれを無視してオーディオメーカーも商売が成り立たないでしょう。
オーディオメーカーもその事は腹に落ちているようで、ソニーを先頭にして大きく舵を切ろうとしている様子が伝わってきます。しかし、その舵の切り方を見てみると、「ハイレゾ対応」を着地点に据えているだけのように見えます。願わくば、力の傾注をそのような小手先のものに矮小化するのではなく、できればUSBに変わる、真にオーディオグレードの転送規格を作り出してほしいのです。
そして、もしも、その事に成功すればCDに匹敵するほどの特許になるかもしれません。

そんなことを言えば、「それなら最初からCDプレーヤーを使ってよ!」という声がかえってくるのは分かっています。しかし、オーディオとPCの融合はすでにとどめることができません。
今まではこの融合はPCサイドの論理で行われてきました。
PCとDACをUSB規格で接続するというのはオーディオ側の要望ではなくてPC側の都合でした。しかし、PCオーディオがここまで成熟してきたならばオーディオの側から攻めていってもいいのではないでしょうか。
オーディオ側の要望で新しい転送規格を策定し、それにあわせた接続端子がPCに搭載されるようになれば素晴らしいとは思わないでしょうか。

もちろん、話がそこまで進めば、PCオーディオというフィールドもまたプロの手に戻ることになり、アマチュアの出番も少なくなっていくのでしょうが、それはそれで仕方のないことだとは思っています。
2014年の初夢です。


6 comments for “アナログ時代の趣味性が復権するPCオーディオ(7)~悩ましいケーブル問題(3)

  1. 小川隆
    2015年9月6日 at 7:30 PM

    初めまして。
    つい一ヶ月位前から、ハイレゾに目覚めたものです。
    TEACのUD-501を購入して、CDからリッピングして聴いております。購入に際して、CDプレイヤーからCOAXで接続してアップ・サンプリングで聴くつもりでした。だからUSBケーブルは購入しませんでしたが今になり、USBでも試してみたくなり、PCとで色々やってます。とりあえずPCのUSBケーブルで代用しています。USBケーブルはNetで探し「エルサウンド」を購入しようかです。PCのデジタルノイズで汚れた電源は、、やはり良くないかなで。「オヤイデ」も気になりますが。それからCOAXケーブルはオーデオPINコードで代用しております、、手持ちのオーデオ用PINコード色々試しましたが、私はTDKかオルトフォンの8Nが良いようです。これは線材なのか製造のノウハウなのか分かりませんが、デジタルのコードも通常のオーデオ的な配慮が必要なのかと、、。

    • 2015年9月6日 at 7:58 PM

      結局は何をやっても音が変わるのがオーディオなんですよね。たとえそれがデジタル信号であってもケーブルを変えれば音は変わるんですね。
      それから、USBケーブルなのですが、これまた理屈から考えればエルサンドのケーブルは100%完璧だと思えるのです。ですから、私も長くそれを使っていたのですが、何故か分かりませんがオヤイデのケーブルの方が音がいいんですね。オヤイデの方は電源と信号が一緒に流れているので理屈で言えばいいはずはないのですが、現実の音はこちらの方が上なのですね。難点は高いことですが、それでも、オカルト的に馬鹿高いその他のケーブルと較べればギリギリ許容範囲です。(許容範囲でないという人も多いとは思いますが・・・^^)

      ただ、個人的な経験から言うと、USB経由のノイズをDACに持ち込まない最良の方法は、間にDDCを挟み込むことだと思います。それが、未だにPCオーディオのコアなユーザーの中ではHiface Evoが絶対的な信頼を得ている理由です。
      しかし、これまたお金のかかる話ですので、ケーブルの問題も含めて適切な場所で折り合いをつける必要はあるでしょうね。

  2. 小川隆
    2015年9月8日 at 9:04 AM

    おはようございます。
    CDプレイヤーが出始めた頃、「デジタルでは機器の音は高い安いに関係なく同じ、、」の話もありました。それが、アナログ機器並みに物量投入すると音が変わると変わりました。この世界は本当にお金が掛かりますね ^^;
    エルサウンドは注文してしまいました。後でYungさんのオヤイデのケーブルを読み、、おやおやです (^^)エルサウンドは、PCのノイズを取り込まない為、別電源には納得でしたが。考えてみればその先のDACだって、デジタルの塊ですね。また、ノイズです。しかしオヤイデも関心があり、後日何とかしたいの気持ちです。何かUSBケーブルにはまりそうです。

    小樽は秋の風です。大阪はまだまだ暑いんですね。体調管理にお努めください m(__)m

    • 2015年9月8日 at 10:03 PM

      >エルサウンドは注文してしまいました。後でYungさんのオヤイデのケーブルを読み、、おやおやです (^^)

      いやいや、決してエルサウンドさんのケーブルが悪いと言っているのではありません。理屈から言えば万全です。そして、そこから生み出される音は決して悪いものではありません。結局、このあたりまで来ると、最後は聞き手の「官能検査」みたいなレベルになってきますから、オヤイデよりもエルサウンドの方がいいという人がいても不思議ではないと思います。
      いつも言っているのですが、アナログ時代はカートリッジを変えて音の違いを楽しむのは常識でした。
      少し前に、「DAC=カートリッジ」論みたいなのを提唱したことがあるのですが、さすがにコスパが悪すぎてあまり賛同は得られませんでした。
      しかし、オカルト的に馬鹿高くもなく、理屈の上でも納得がいくもケーブルならばカートリッジ代わりに楽しめるかもしれません。

      >小樽は秋の風です。大阪はまだまだ暑いんですね。体調管理にお努めください m(__)m

      それが今年はどうしたわけか、記憶にないくらい涼しい9月なんです。年寄りには助かります。(^^v

      • 小川隆
        2015年9月10日 at 7:36 PM

        こんばんは。
        エルサウンドから11日に発送のメール有りましたから、、遅くても来週はじめに届くかもと、、。

        今は、色色無料ソフトをダウンロードして試しています。
        今日は、、「PlayPcWin」を落として、聴いてます。
        これは、本当に気に入りました。
        先日KS電気でハイレゾコンポを見てきました。
        高音質のハイレゾをポータブルでお手軽は分かりますが、据え置きはミニコンポが主流なんですね。
        音が良いからミニコンポで充分なのかな??

  3. 小川隆
    2015年9月10日 at 7:40 PM

    それから、フオステクス「ETUー1.0」も聴いてみたくなりました。

    面白そう (^^)

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