lightmpdの「mpd.conf」を弄る~bit数の拡張

lightmpdは基本的にブラックボックスなので弄るところはほとんどありません。しかし、環境によっては以下に述べるように、もしかしたら(^^;・・・「mpd.conf」は弄った方がいいかもしれません。ただし、特殊な環境限定です。(^^;
しつこく繰り返しましたが、では、その特殊な環境とは何かと言えば、以下の2点を満たしている環境です。

  1. 聞く音楽は基本的にCD規格の44.0kHz 16bit。ハイレゾやDSには興味は全くない
  2. DDCとDACの間にデジタルのイコライザを挟み込んでルームチューニングをしている

特に(2)のデジタルイコライザを使っているような人はほとんどいないと思います。しかし、もしもお使いのようでしたら、以下のように「mpd.conf」の設定を変更して以下の2点にチャレンジしてみる価値はあるかと思います。この世界は理屈より手を動かせ!ですから、やる前から駄目だと決めつけるよりは、やってみても駄目だった・・・となる方が、いろいろと得るものが大きいと思います。

  1. ビット数の拡張:16bit→24biti
  2. アップサンプリング:44.1kHz→88.2kHz

ビット数の拡張:16bit→24biti

まず、ビット数を拡張するための変更は以下のようにします。

audio_output {
type “alsa”
name “uda”
device “hw:0,0” # optional
priority “FIFO:54” # optional
mixer_type “disabled”
dsd_usb “yes”
# use_mmap “yes”
buffer_time “150000”
period_time “37500”
}

これを以下のように太字の部分変更します。

audio_output {
type “alsa”
name “uda”
device “hw:0,0” # optional
priority “FIFO:99” # optional
format “44100:24:2″ # 追記する
mixer_type “disabled”
dsd_usb “yes”
# use_mmap “yes”
buffer_time “150000”
period_time “37500”
}

サンプリング周波数はCD規格の「44.1kHz」に決めうちをし、ビット数だけを16bitから24bitに拡張します。

デフォルトではaudio_outputの設定項目にformatは省かれていますので、「format “44100:24:2″」を追記します。それから、「priority “FIFO:54″」の部分を「priority “FIFO:99″」に変更します。
ただし、「priority “FIFO:99″」の有効性に関しては今ひとつ確信は持てません。持てませんが、さらにアップサンプリングにも挑戦したいので、とりあえずはサンプルコンバートに関係するスレッドの優先度は最高にしておいた方がいいだろうという判断です。

では、何故にビット数を拡張したかったのかと言えば、デジタル領域でのイコライジングを施すことで効果的にルームチューニングをしたいからです。

<・・ 注意 ・・>

ただし、この追記をしてしまうと、ハイレゾ音源であってもすべてCD規格の44.1kHzになってしまいますから、オーディオのハイレゾ化でミニバブルをねらっている業界からしてみればとんでもない設定です。

mpdはformatの項目を省いておくと、「192kHz 24bit」を上限として入力された音源のフォーマットに追随します。
「44.1kHz 16bit」の音源が入力されればCD規格の音が出力されますし、「96kH 24bitz」や「192kHz 24bit」の音源が入力されれば、そのフォーマットに対応したハイレゾの音が出力されます。DSDに関しても不安定さは残りますが「DoP(DSD Audio over PCM Frames)」という規格を使ってそれなりに再生されます。
しかし、「format “44100:24:2″」と追記してしまうと、全ての音源は「44.1kHz 24bit」にデコードされて出力されてしまいます。ですから、ハイレゾ音源が聞けなくなっては困るという方は以下のようにアスタリスク(*)を使って記述してください。

「format “*:24:2″」

ただし、私は「聞く音楽は基本的にCD規格の44.0kHz 16bit。ハイレゾやDSには興味は全くない」という「変わり者」なので、ここは「44100」に決めうちをしています。しかし、そんなつまらぬこだわりはないという人は「 “*:24:2」という全方位対応でいいかと思います。

<・・ 注意終わり ・・>

DEQ2496を使ったルームチューニング

BEHRINGER_DEQ2496

では、なぜビット数を拡張することが効果的なルームチューニングにつながるのでしょうか。
それは、オーディオで最後に突き当たる部屋の問題を解決する上で、イコライジングというのはきわめて有効な手段だと考えるからです。

確かに、ピュアオーディオの世界では今でもイコライジングには懐疑的です。そして、そう言う懐疑を引き起こす要因がイコライジングには存在していることは事実です。

たとえば、イコライジングをすることのデメリットとしてよく取り上げられるのが「音楽の勢いが殺がれる」と言うことです。これについては「デジタルでイコライジングすることの限界」というページで自分なりの考えをまとめたことがありますので、暇な方はそのページを見ていただければと思うのですが(^^;、かいつまんで言えば以下のようになります。

  1. 調子に乗って思い切ってイコライジングをしてしまう
  2. 聞いていると、入力オーバーでインジケーターのレッド表示がつきっぱなしになってしまう
  3. これはいけないと言うことでマスターでボリュームを絞る
  4. そのとたんに音楽に勢いがなくなってしまう

全てをデジタル領域で操作したとしても、この問題はおこってしまいます。入力オーバーしないようにマスターでボリュームを絞った時点で間違いなく音楽のエモーショナルな部分がスポイルされます。
いわゆる「ビット落ち」とよばれる現象です。

マスターボリュームで6dB絞れば16bitの音源から情報が1bit削られてしまいます。調子に乗ってイコライジングをしてしまうと、10dB以上しぼらないと頻繁に入力オーバーとなってレッドゾーンになってしまいます。そうなると2bit程度の情報が削られます。
16bitあるうちの1bitや2bit程度削られてもたいしたことがないだろうと思えば大間違いで、bit数は指数計算なので、1bitで2の1乗、2bitで2の2乗の情報が捨てられてしまいます。
つまり、1bit削れば情報量は半減、2bit削れば4分の1になってしまうのです。

ですから、イコライジングをするときは「抑制的、且つ禁欲的」でなければいけないのです。
いろいろやってみて少しずつ分かってきたことは、押さえ込む周波数は思い切って絞り込んでもあまり大きな問題を引き超さないのですが、増幅する周波数は上限を決めて抑制的に使わないとあまりよろしくない結果になると言うことです。

試行錯誤の中で、現状ではその上限値は6dBに設定しています。

この設定にしておけば、クラシック音楽をメインに聞くならばマスターボリュームは4dB程度絞っておけば入力オーバーを引き起こすことはまずありません。

しかしながら、そこまで「抑制的、且つ禁欲的」に使用したとしても、やはり最後はマスターでボリュームを絞らなければいけない「事実」に変わりはありません。
そして人間の耳は思われている以上に鋭敏ですから、そのわずかなビット落ちでさえも検知してしまいます。(言い切っちゃいます。)

マスターボリュームで絞った状態と絞らない状態を音圧が同じになるようにして聞き比べてみれば、明らかに絞った状態の方が音楽に勢いがありません。いわゆる「なんか冴えんなぁ」という状態です。
ただし、絞らないとフォルティッシモでは入力オーバーしてしまいます。
DEQ2496は入力オーバーしたときには自動的にリミッターが働く仕様になっているのでノイズが発生するようなことはないのですが、それでもレッドゾーン状態が続くとどこか寸詰まりのような音になってしまいます。

ネット上の情報を探ってみると、DEQ2496は内部的に24bitで処理をしているのでマスターボリュームで絞ってもビット落ちはおこらないという書き込みが見受けられるのですが、聴感上は明らかにビット落ちがおこっていると判断せざるを得ません。
そこで、このビット落ちを回避するための手法として考え出されたのがビット数の拡張だったわけです。

つまり、マスターボリュームを絞ることでビット落ちが発生するならば、最初からCD規格の音源のビット数を16bitから24bitに拡張してからDEQ2496に放り込めばいいのではないか、となったわけです。
そして、そのための設定が「format “44100:24:2″」の追記というわけです。

結果は良好・・・なような気がします。

音楽が鳴り響いている背景の静けさが格段に向上します。さらに、マスタボリュームを絞ることによる「へたれ多雰囲気」は減少したような気もします。

と言うことで、きわめて限られた環境下でのみ意味のある設定変更なのですが、もしかしたら、CDからリッピングした音源しか聞かないという人ならばDEQ2496のようなデジタルイコライザを使っていなくても有効かもしれません。(ハイレゾ音源ならばほぼ全てが最初から24bitでしょうから、こんな事をする必要がありません。)

気になるのは、mpdにデコードという作業をさせることが無用な負荷となって音質を損なうことなのですが、聞き続けてきた感じではほとんど気になりません。このあたりは、デュアルコアのAPU1Cの威力が発揮されているような気がします。
htopコマンドでシステムの挙動を調べてみても、CPUの負荷が2%を超えることはありません。

そう言う意味では、ありあまるCPUの力を発揮させるためにも次はアップサンプリングにも挑戦すべきだと考えました。そして、改めてこの世界に踏み込んでみて、今まで全く気づいていなかったいくつかのことに出会うことが出来ました。
やはり、この世界は理屈より手を動かせ!ですから、やる前から駄目だと決めつけるよりは、やってみても駄目だった・・・となる方が、いろいろと得るものが大きいと思います。・・・次回に続く!!

<イコライジングに関する追記>

イコライジングする事のデメリットとしてもう一つ取り上げられるのが、「おかしな色づけ」がされるという現象です。
確かに、アナログ領域でイコライジングしていた時代は、かなりの物量を投入しないと(例:CELLO PALETTE PREAMP)まともなイコライジングは出来ませんでした。

アナログ時代に唯一まともにイコライジングが出来たと言われる「CELLO PALETTE PREAM」。ただし、定価1250K円でした。

CELLO_PALETTE_PREAM

しかし、DEQ2496のように全てをデジタル領域で完了するシステムならば重要なのは物量ではなくて集積度です。物量には金がかかりますが、集積度にはお金は必要ありません。
そして、当然のことながら、デジタル領域でイコライジングしてデジタルデータとして出力するならば、そこでおかしな色づけなどが負荷されることはあり得ません。
しかし、実際に使ってみると、これまた不思議なことに、使いようによってはおかしな色づけのようなものが付加されているように聞こえることがあります。

このあたりがオーディオの摩訶不思議なところなのですが、最後は理屈よりも現実です。
そして、あれこれ弄ってみて気づいたのは、試聴ポイントで周波数を測定して特定の帯域を増幅する必要があるという結果が出ても、それは部屋固有の問題が悪さをして落ち込んでいるだけであって、スピーカー本体からはフラットな状態で音が出ているという事実です。

どういう事かと言いますと、試聴ポイントで特定の周波数が大きく落ち込んでいるからと言ってイコライザで極端にブーストすると、正常に動作しているパワーアンプに対して大きな負荷を与えるという事実です。もちろん、原因はこれ一つではないでしょうが、全てをデジタル領域で処理しているのにおかしなカラーリングが感じられるというのは、結局はパワーアンプというアナログ領域で引き起こされている現象ではないかとにらんでいます。

その意味でも、全てをデジタル領域で処理していても「抑制的、且つ禁欲的」を肝に銘ずべきです。

<さらにどうでもよいイコライジングに関する追記>

さらにどうでもよい追記ですが(^^;、デジタルイコライザの「DEQ2496」に関して、「そんな20k円程度の安物でイコライジングをするとろくな音にはならないですよ。ピュアオ-ディオでイコライザを使いたいならば少なくとも800K円はする○○社の製品くらいは使わないと駄目ですよ。」・・・という親切な忠告を少なからずいただきました。

しかし、デジタル領域で処理を完了させる機器に必要なのは物量ではなくて集積度です。そして、これもまたしつこく繰り返していますが、物量には金がかかりますが集積度は時代とともに向上していきますから必ずしも多額のお金を必要としません。

ちなみに、デジタル機器の仲間に入れられる「DAC」は最後でアナログ信号に変換させる必要があるので、全ての処理はデジタル領域で完結しません。その意味では「DAC」はアナログ機器だと思っています。つまりは、「DAC」からまともな音を出そうと思えば物量が必要になり、金がかかると言うことです。
しかし、デジタルイコライザの「DEQ2496」はデジタル入力された信号をデジタルで出力するならば、間違いなく全ての処理はデジタルの領域で完結します。当たり前の話ですが、「DEQ2496」にもアナログ入力や出力も搭載されていますが、そんなものを使えばお話にもなりません。

ただし、基本が業務機ですのでホームユースのようには使い勝手はよくありません。また、設定項目が多くていろいろなことが出来てしまいます。そして、この「使い方が難しい」事と、変にあれこれやれるという「誘惑が多い」ことが重なって、一般的には「やりすぎてしまう」傾向があります。
そして、イコライジングというのは少しでも「やりすぎる」と、上で述べたように確かに「ろくでもない音」になります。
それは間違いありません。

しかし、こういう機器はやりすぎることなく、きわめて「抑制的、且つ禁欲的」に使用すれば、効果の怪しいルームチューニング用のアクセサリを導入するよりは確かな改善が望めると思います。ですから、20K円程度の安物の機器なので最初からろくな音にならないと決めつけるのは早計であり勿体ない話です。

オーディオを突き詰めた人ならば誰もが最後に突き当たるのは部屋の問題です。
私などは到底そのレベルには達していませんが、それでも部屋の問題は悩ましいです。
そして、この問題が厄介なのは、たとえ専用のリスニングルームを作ったとしてもそれで全てが解決するほど事が単純ではないと言うことです。どれほど考え抜いて新しく部屋を作ったとしても、やはりその部屋固有の問題が発生します。そのことは、実際のコンサートホールの音響を考えても分かることです。プロ中のプロであっても、みんな悩んでいるほどに難しい問題なのです。

しかし、それでも部屋を新しくできる人は恵まれています。
大部分の人は不満が満載の現状を前提としてルームチューニングに取り組まなければいけないのです。そんなときに、効果の怪しいアクセサリに頼って出口のない迷路に迷い込むのは本筋ではないと思います。
ピュアオーディオの世界ではイコライジングする事への抵抗感が強いことは承知していますが、それでもルームチューニングの本線はイコライジングだろうと思います。そのことを考えれば、20k円程度の安物だから最初から駄目という形で切って捨てるのはあまりにももったい話です。

もちろん、電源部をもう少し強化したり、デジタル入力に対しても外部クロックが有効になるようにしてほしい・・・というような要望はあります。ですから、そう言う機能面が改善された機器が登場すればすぐにでも乗り換えたいとは思っていますが、コスト面も含めて現状ではDEQ2496に変わりうる機器は見あたりません。
残念な話です。


3 comments for “lightmpdの「mpd.conf」を弄る~bit数の拡張

  1. joecool
    2014年8月30日 at 11:21 PM

    今晩は。
    yungさんが提供して下さった情報のおかげで、数年来ままこだったDEQ2496が大活躍しています。

  2. 2014年8月31日 at 1:46 PM

    こんにちは。

    mpd.confに同じoutput deviceを二つ記述し、一つはアップサンプリングなし、ひとつはアップサンプリングの指定を行っておくと、ipod等のコントロールアプリからのoutput deviceの選択操作で簡単にアップサンプリング無し、有りを切り替えられるようになりますので、比較試聴等には重宝いたします。(判り易いようにnameはちょっと変えておいた方が良いかも)

    当方もデジイコの利用に際しては、88.1KHz/24ibtへのアップサンプリングを大前提にしていますが、やはり音質はSampelerate Converterの処理内容に大きく依存するようです。世のいろいろなアップサンプリング可能な再生ソフトを試していますが、演算処理にどこまで負荷をかけるのかということとSInc補間のアルゴリズムで音は変わるように思います。究極的にベストと思えるものにはまだ出会えていませんので、これからも探し続けるつもりです。

    一方でデジタルイコライジングの使用についても行き戻りつしており、使うメリット、デメリットに悩む日々です。(理想的なリスニングルームを手に入れられるのなら、別ですが、、、)

    yungさんのこの先の展開を楽しみにしております。

    • 2014年8月31日 at 2:14 PM

      >mpd.confに同じoutput deviceを二つ記述し、・・・

      言われてみれば、まさにコロンブスの卵!!、そんな手があったのですね。
      私も早速に設定してみたいと思います。・・・なぜなら、私は基本的に「44.1kHz 16bit」の人(^^;だったので、いけそうな気はしつつも未だ確信が持てないのです。

      >究極的にベストと思えるものにはまだ出会えていませんので、これからも探し続けるつもりです。

      アルゴリズムでここまで音が変わるのか!という感じですね。
      ただし、ボードの高スペック化でかなりの高負荷に耐えられるようになってきましたので、このあたりの開発に弾みがつくんではないかと期待しています。

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