CD規格って不十分なの?(3)~アナログは20kHzを超えるのか?(補足)

前回の文章を読み直してみて、字数を気にしすぎてはしょりすぎた部分があるので、少しばかり補足しておきます。
ただし、この録音に関わる内容は、ほとんど「SOUND ENGINEERING BIBLE」のサイトより頂戴したものです。興味のある方は是非一度訪れてください。
再生しかしないユーザーにとって録音現場というのは興味はあっても実際に触れる機会はほとんどありません。そして、それを知ったところで、ユーザーサイドとしては出来上がったメディアに対しては何も出来ないのですが、それでもそう言うメディアがどれくらい「信じれるのか」を知っているのと知らないのとでは大違いです。

結構、「目から鱗」の内容が多かったです。

ヘッドの調整

テープ録音は録音マイクから入力された電気信号を磁気変化という形で記録します。Wikipediaには「磁気記録は磁性体における様々な磁化パターンを使ってデータを格納することで、一種の不揮発性メモリを形成している。」と書かれています。

この、電気信号を磁気記録するのが「ヘッド」と呼ばれる部分です。このヘッドがテープに正確にあたっていないと電気信号は正確に磁気記録として記録されません。
では、正確にあたっているとはどのような状態なのかと言えば、一般的には以下の4点がきちんとあっている状態のことを言います。

  1. ジニース(Zenith)
  2. 高さ(Height)
  3. アジマス(Azimuth)
  4. ラップ(WRAP)

ジニースとアジマスはテープに対するヘッドの角度のことを示す用語です。
ジニースはヘッドが垂直な状態でテープに接しているか(仰角)、アジマスはテープの進行方向に対して直角を維持しているかを調整する用語です。
特に、テープの進行方向に対してヘッドの角度が少しでもずれていると録音特性は一気に悪くなるので、この部分だけは念入りに調整する必要がありますし、急いで録音したいときなどはとりあえずアジマスだけを調整することが多かったようです。

ラップとは、そうして角度が調整されたヘッドが適切な強さでテープと密着しているかどうかを調整することです。当然のことながら、強すぎても弱すぎてもいけません。微妙なさじ加減が求められます。
そして、最後は高さ調整で、ヘッドのど真ん中をテープがきちんと走行するように調整します。

つまり、ヘッドの調整というのは全てが純粋に機械的な調整なのです。そして、機械的な調整というのは必ず時間の経過とともに必ずずれてきます。
特に、テープ録音の場合は常にテープは秒速38㎝で動き続けるのですから大変です。おそらくは、きちんと調整をしても、一定時間動かし続けていれば録音の途中でもどんどんずれていくような代物です。そして、この部分がほんの少しでもずれれば高域特性は一気に悪化します。
おそらく、良心的なエンジニアであれば随分苦労したと思うのですが、それほどの苦労も感じなかったエンジニアの存在が否定できない現実が悲しいのです。

それから、余談になりますが、テープを再利用するときは消磁するのですが、プロ用の業務機では機種が違うと上手く消磁できないことがあったようです。(たとえば、OTARIの1/4インチ2トラックデッキで録音した物をAMPEXの1/4インチ2トラックデッキで消去したときなど・・・と言うのが有名なようです。)
レコーディングでテープを再利用するなどと言うことは普通は考えられませんが(考えられないことだったと信じたい)、放送音源の場合は普通に行われていました。
そう言うときは、専用のバルクイレーサで消去してから使用するのが原則なのですが、結構怪しい場合もあったようです。

そう言う意味では、放送音源をもとにディスク化している場合などは酷いものが混じっている可能性があります。(実際酷い音質のものが多いです。)

バイアスの調整

次に必要なのはバイアスの調整です。
一部ではこのバイアス調整次第で高域特性を向上させる事が出来ると過信する向きもあるようですが、基本的にはそのような立派なものではありません。率直に言えば、アナログ再生のRIAA曲線のようなもので、なければないですませたい「必要悪」だと考えた方がいい代物です。
ここからは少しややこしい話になるのですが、我慢しておつきあいください。(ややこしいので、前回はわざとパスしました。)

電気信号を磁気のパターン変化として記録するというのは天才的な発想だったと思います。しかし、万能ではありません。(そんなものはこの世に存在しない・・・^^v)
磁気テープの最大の問題点は、記録パターンが直線性を持たないと言うことです。

これを読んで、「おお、なるほどそうだったのか!」と言ってもらえると有り難いのですが、私も最初何を言っているのか分からなかったので、おそらくそんな人はほとんどいないと思います。よって、この私めが拙いながらも説明させていただきます。

録音用のマイクから入力される電気信号の変化に対してテープが同じような比例関係で帯磁してくれれば理想的です。

弱い電気信号が入ってくれば弱く帯磁し、強い電気信号が入ってくればそれにあわせて正確に強く帯磁してくれれば何の問題もありません。この理想的な状態のことを「直線性を持っている」と表現するのです。
ところが、テープという記録媒体はそのような直線性を持っていないのです。

問題点は二つあります。
まずは、弱い電気信号が入ってくるとテープはなかなか帯磁しません。つまり、テープという記録媒体は弱い電気信号の変化に対してはきわめて鈍感なのです。この部分では直線性を持ちません。
そして、電気信号がある一定のレベルを超えると元気に働きはじめてくれます。ここではじめて直線性を持つことが出来ます。
ところが、さらに電気信号が強くなってある一定のレベルを超えると、今度は「もうこれ以上は帯磁出来ない」というレベルに達してしまいます。この「もうこれ以上は帯磁出来ない」というレベルに達することを「飽和」と呼んでいます。当然のことながら、このレベルを超えると再び直線性を失います。

つまり、テープ録音というのは、この小さすぎず、大きすぎない、頃合いの良い部分でしか直線性を持たないのです。ですから、録音で使える信号のレベルはこの真ん中の直線性を持っている部分だけと言うことになります。

オープンの調整のページより

bias1

自分が録音エンジニアになったつもりで考えればすぐに納得していただけるかと思うのですが、避けたいのは「飽和」です。せっかくの音楽が盛り上がっているところで寸詰まりでは売り物になりません。ですから、エンジニアとしては「飽和」を避けるために入力信号のレベルを一定レベルまで下げておくことが絶対必要です。ところが、入力レベルを下げると微少レベルの音が非直線性の世界に埋没してしまいます。
いつも言ってることですが、この世の中は全てバーター関係です。

そこで、登場するのがバイアス電流という技です。
入力レベルを下げることで微少レベルの音が非直線性の世界に埋没するならば、最初からその部分に一定の電流を流しておけば底上げが出来るではないか!という発想です。そして、よく「深いバイアス」とか「浅いバイアス」と言われるのですが、これはこのバイス電流を広い範囲にわたって適用するのが「深いバイアス」、狭い範囲で適用するのが「浅いバイアス」と言うことになります。

オープンの調整のページより

bias2

この図を見れば分かるように、バイアスを深くとれば直線性が保持される部分は小さくなります。結果として高域特性が劣化するというデメリットを生みます。
逆にバイアスを浅くとれば、仕方なしに直線性を保持できていない部分も録音に使用する必要がでますので、歪み特性がどうしても劣化します。

つまり、バイアス調整の肝は、この高域特性の劣化と歪みの増加という困りものを両天秤にかけて、頃合いの良いところを見つけ出す作業なのです。そして、レコーディングにおいては、当然と言えば当然ですが、高域特性よりは歪み特性を重視してバイアスは深めにかけるのが常識でした。LPレコードの再生ではどうせ15kHzを超えるような周波数帯域はまともに再生できないのですから、そんな領域の高域特性を重視して歪み特性に目をつぶるなどと言うことはあり得ないのです。

ですから、バイアス調整で高域特性が改善できると書いている人もいるのですが、それほど単純なものではないようです。

そして、本当はふれなければいけないのでしょうが、マイクのセッティングの仕方やマスタリングの仕方によってさらに録音の特性は決定的に変化します。
そして、そう言うあれこれを知るにつけ、そう言う気の遠くなるような繁雑な作業を乗り越えて、かくも多くのすぐれた録音を後世に残してくれた事に心からの感謝の念を覚えます。しかし、感謝の念は覚えつつも、やはり彼らの残してくれた録音のクオリティを汲みつくす上でCD規格の「16nit 44.kHz」という器は十分なスペースだと言うことにも確信を持てるようになりました。

業務機への過信

民生機と業務機を比べれば、なんだか業務用で使う機械の方が凄そうに思う人がいるのですが、これもまた完全に勘違いです。このあたりのことは分かっている方ならば分かっているだろうと思ってあえてふれなかったのですが、少し補足しておきます。

たとえば、録音用のテープにはいくつかの規格があります。トラック数とチャンネル、テープの幅、さらにはテープの厚さなどです。そこに加えてテープスピードという規格もあります。これらの規格によって録音特性は大きく変わってきます。

まず、テープスピードは速ければ速いほど音質的には有利です。
テープスピードの規格は「2.38cm/s」「4.75cm/s」「9.5cm/s」「19cm/s」「38cm/s」「76cm/s」という6種類です。
「4.75cm/s」というのは昔懐かしいカセットテープのスピードです。そして、プロがレコーディングで使うのは「19cm/s」「38cm/s」「76cm/s」あたりなのですが、最も一般的なのは「38cm/s」です。大手のメジャーレーベルのレコーディングはほぼこのスピードを採用していました。

次にテープの厚さですが、これは薄い方がヘッドとテープとの密着度があがるので音質的には有利だと言われています。しかし、テープは薄くすればするほど伸びたりしますし、何よりも怖いのが転写(Print Through)という現象が起こりやすいことです。長期保存が前提のマスターテープとしてはちょっと困った事になりますので、プロはベストよりは少し厚めのテープを使っていました。

もしも、アマチュアが趣味で録音をするならば、音質的に最も有利な薄いテープを「76cm/s」という高速でぶん回すでしょう。そして、俺はプロを追えるようなハイスペックで録音していると自慢している人がたくさんいました。もちろん、個人が趣味でやっていたことをとやかく言うつもりはありませんが、少し考えれば、目的が全く違うことくらいはすぐに理解できるはずです。

プロにとって最も大切なことは、失敗を恐れずに最高のクオリティを目指すことではなくて、レコード作成に耐えうるだけのクオリティの録音をいつでも、どこでも、そしてコンスタントに実現する安定性にこそあるのです。薄いテープを高速で回して、プレイバックの時に強いトルクの再生機で引っ張ったらちょっと伸びちゃいました(実際、録音現場の再生機のトルクはかなり強かったようです)、すみませんが明日もう一度スタジオにきてくださいとミュージシャンに言えるエンジニアなんかはいないのです。

そして、このような事情はその他の業務機機器にも当てはまる原則です。
ですから、業務機に第一義的に求められるのは、最先端のハイスペックではなくて何よりも安定性と堅牢生、さらに付け加えれば保守性の高さです。民政機ならばいくらでもチャレンジできますし、いくらでも騙しようがありますが、プロ用の業務機ともなれば相手は簡単には騙せません。ごまかしのハイスペックは通用しませんから、カタログの数値的には民政機のフラグシップ機と比べれば一段落ちる場合が多いのです。
しかし、業務機はそれでいいと思いますし、そうでなければいけないのです。

それから、テープ幅に関しても誤解があるようですので、最後に補足しておきます。

テープの幅とトラック数の間には、テープの幅が同じならばトラック数が少ない方が音質的には有利で、逆にトラック数が同じならばテープの幅が広いほど有利だという関係があります。つまりは、テープの幅が出来る限り広くてトラック数が小さい方が音質的には有利なのです。理屈は簡単で、その方が記録できる面積が広くなるからです。
ではプロがアナログ時代のレコーディングに使っていたテープは一般的にどのような規格なのかと言えば、2トラック2チャンネルで、テープの幅は「1/4インチ」または「1/2インチ」のものを使用していました。なお、1インチや2インチのテープもあるのですが、そう言うテープはMTR(マルチトラックテープレコーダ)に使用されるもので、トラック数は少ないもので16トラック、多いもので32トラックという仕様になっていました。
テープ幅が「1/2インチ」で2トラックのものと、「2インチ」で16トラックのテープではどちらが音質的に有利なのかは少し考えれば簡単に分かるはずです。(ちなみに、2インチで16トラックのテープは今は存在しないようです。現状での2インチテープのベストは24トラックです)

テープ幅が1インチ、2インチと聞けばいかにも音が良さそうなのですが、テープの規格というのはそれほど単純なものではありません。


24 comments for “CD規格って不十分なの?(3)~アナログは20kHzを超えるのか?(補足)

  1. HS
    2014年9月14日 at 3:46 PM

    ページを変えての補足ですか。
    いろいろ調べた上での文というのは分かりますが、内容的には
    アナログ全盛時にアナログ製品を使いこなそうとした方々は
    知っている事です。
    知らないとテープに思うような録音が出来ません。
    調整が必要なのも当たり前で、プロ用ならなおさらです。
    アナログ機器はそのような物ですから、これで特性に問題ありとは
    言えません。
    音が悪いLPは調整が悪かったからというのは、あなた自身の憶測、
    思い込み。
    思い込みと狭い視野で書かれた文での比較は無理があります。

    ちなみにデジタルの実態は大体こんな感じ。
    冷めた目でみれば、それほど大層な物ではない。
    1.「デジタルはサンプリングによって情報を間引きするので、アナログより
       情報量が少なく音が悪い。これは宿命的な欠陥」
    2.「再生では間引き部分を成形し、元の音に似せた音をだして誤魔化す
       のがデジタル。違いが分からなければそれで良く、理想的な状態でも
       元の音とは異なる」
    3.アナログ機器に比べ調整が簡単で使い勝手が良い。
      パーツを揃えればどこでも作れ、そのため安価。
    若干、辛辣な文になってしまいました。
    この点は”ごめんなさい”です。

    • tksh
      2014年9月14日 at 5:52 PM

      HS様。
      横からで恐縮至極なのですが、YUNGさんはハイレゾが台頭する今、CDの規格では音楽再生には不十分なのかどうかにフォーカスしているのであって、アナログの音が悪いと攻撃しているわけではないと思います。論点が大きくずれているように見えました。
      アナログの音が良いという前提でその要素を分析し、その音源をCD化した場合にCDのフォーマットでは十分なのか不足なのかを分析しているところではないでしょうか。LPでも20kHz以上が記録できないのは明白な事実です。仮に記録されていたとしても10回も針を通せば再生不能になります。なのに音が良いとすれば高域の周波数の問題ではなく…といったことも含めて今後の記事が展開されていくのでしょう。テーマはアナログvsデジタルではなく、CD(16bit 44.1kHz)vsハイレゾです。
      失礼、お詫び申し上げます。

    • 2014年9月14日 at 8:29 PM

      >若干、辛辣な文になってしまいました。
      この点は”ごめんなさい”です。

      辛辣な文章なら歓迎するのですが、他の人の書いた文章をしっかりと読んでそれを理解することのできない方の文章というのは本当に困ってしまいます。
      と、思っていると、下の方で(上ですね^^;)tkshさんが適切のフォローしてくれているので、これ以上は述べませんが、論議をする上での最低限のルールとマナーと能力くらいは身につけてから参加してください。

      ただ、嫌みの一つくらいと警告だけは言わせてください。「嫌み」は多少の腹いせ(^^v、警告は管理人としての責務からです。

      テープのf特はバイアスを変えれば幾らでも変化することをご存じですか。

      レコード用のマスターテープは1~2インチ位(うろ覚えではっきりしませんが)だった気がします。

      はどこへいったのでしょう?
      それでいながら、バイアスの調整で特性を変化させることができないことや1~2インチのテープ幅のテープはレコーディング用には使っていなかったことを説明させていただくと、「アナログ全盛時にアナログ製品を使いこなそうとした方々は知っている事です。知らないとテープに思うような録音が出来ません。」はないでしょう。
      もしも知っていながら、そんなことを書き込んでいたならばただの「荒らし」ですよ。
      少なくとも他者の書いた文の意をしっかりと読み取り、さらには自分の言葉にも責任を持ち、それとかみ合わせた上で論議をするのがこういう場合の基本です。

      それが守れない場合はただの「荒らし」と判断するしかありませんから、その点はご理解ください。

      ただ、覚悟はしていましたが、アナログ録音の問題について言及するのはやはり「パンドラの箱」のようですね。(^^;
      やれやれ・・・です。

  2. noname
    2014年9月14日 at 5:50 PM

    「アナログ全盛時にアナログ製品を使いこなそうとした方々は
    知っている事」

    も十分思い込みだと思います。
    というかそれほどの知識で、問題を除外して録音できる人と条件が十二分もいたとは思えませんし、著名な作品すべてがそういう環境下で録音できてた、というのも無理がありそうです。

    # だいたい経年劣化から免れないのがアナログってのもありますが

  3. 2014年9月14日 at 6:47 PM

    最初に手に入れたテープレコーダーはおもちゃ同然で、直流バイアスだった。とにかく録音できただけでも満足ではあったが、今にしてみれば聴けたものではなかっただろう。まともなテープレコーダーは交流バイアスで、100kHzくらいが音声信号に注入されている。従って再生時には、ハイカットフィルターでバイアス信号をカットする。ぴったり100kHzをカットするんではなくて、20kHz以上はカットしている。ついでに音楽信号が元にはその帯域にあったとしてもカットしている。
    それから44,1kHzでのサンプリングは、20kHz以下を完全に復元することが理論的に明らかになっている。

  4. toshi
    2014年9月14日 at 7:17 PM

    面白いコメント拝見させていただいています。

    CDの実力・・・確かに数字上の問題もありますがやはりマスタリングの問題は
    大きいと思います。同じ録音をマスタリングを変えたCD(アマチュアの演奏を
    プロが録音、マスタリングしたものです)を比較したことがありますが、
    残響の聞こえ方が全然違っていました。

    またLPとCDの比較の問題ですが、アナログでは高域の音(倍音)が録音されて
    いても周波数特性はかまぼこカーブで信号レベルが低いため本当に聞こえるのか
    疑問はあります。(高域をブーストするのはインチキですね)

    オーディオファンの多くは年代的に高齢(私も50台です)の方が多く、年齢が
    上がると高音域が聞こえ難くなるとか・・・どこまで聞こえているのでしょうね^^
    勿論個人差はあるでしょうけど。結局自己満足のような気が・・・

    ハードが進化してもそれを人間が受け止め切れるのかな?

  5. nakamoto
    2014年9月14日 at 10:11 PM

    素人怖い物知らずで、コメントさせて頂きます。私の様にオーディオに無知な者は、皆さんが論じている中身すら全く文盲状態で、まともに読む事すら出来ません。しかし高級オーディオは、オーディオファンのモノだけではなく、私の様に素晴らしい音楽を、より良い音で聴きたいという者達のものでもある筈です。若い頃は高額なアナログオーディオを持っていて、それはそれは艶やかな音で鳴っていました。特にストリングスの音が、今聴いている安物オーディオとは、比べ物にならない凄い音をしていました。しかし、今、どちらを取るかと言われれば、今、聴いている安物オーディオをとります。様々な面で、比較にならないほど進化してきているからです。クオリティが全然違うのです。それから、私がオーディオに無知であると言う事は、誰かさんの刷り込みを全く受けていないと言う事でもあります。そんな私が、アナログ再生装置に未練を持っていると言う事は、やはりアナログ装置の素晴らしさは否定できないということです。論点がずれていると思いますが、素人君の意見も、多少参考になるのでは、と思いコメントしています。ユング君さんのパンドラの箱と言う表現は、文学的で的確で、そういった素養の無い私には、羨ましい限りです。

  6. 2014年9月14日 at 10:56 PM

    >そんな私が、アナログ再生装置に未練を持っていると言う事は、やはりアナログ装置の素晴らしさは否定できないということです。

    どこかにも書いたことがあるのですが、私は長い間アナログな人でした。アキュフェーズのプリアンプを長い間後生大事に使っていたのは、そのフォノアンプが捨てきれなかったからです。
    でも、それが壊れてしまったとき、買い直す気にはなれませんでした。理由は簡単で、何かの間違いではないかというような価格になっていたからです。

    それで、仕方なしにデジタルな人になったのですが、長い間転び伴天連のような気分でした。(^^;
    それくらい、私たちの世代は刷り込みが強かったのです。

    そんな風向きが大きく変わりはじめたのは、PCオーディオに出会ってからでした。なぜなら、そこにアナログ時代と同じような趣味生の復活を見いだす事ができたからです。
    パソコンを弄るのはそれほど嫌いではなかったですし、こういうサイト運営をしていたおかげでLinuxに関してもほとんど抵抗なしに受け入れることができました。なにしろ、サイト運営のサーバーはLinuxですから、Web運営という限られた範囲ですが毎日のようにLinuxにはさわっていました。

    ですかから、PCオーディオのPCがらみの煩わしさや難しさは趣味として適度なハードル・抵抗でした。

    そして、そんな日々を過ごしているうちに、何だ結局はCD規格の箱の中でもアナログ再生に負けないくらいの魅力的な再生が可能ではないかと気づくようになりました。
    そして、そのことは逆から見れば、多くの人はデジタルの簡易性に胡座をかいて、あまりにも安易な取り組みしかしていないのではないか?・・・という思いも頭をもたげてきました。

    ですから、本音を言えば(そして、話の流れをよく読んでもらえばおわかりいただけると思うのですが)、この「CD規格って不十分なの?」というページは自分の中にある刷り込みを捨て去るための作業でもあるのです。
    ですから、アナログ時代の古い資料などは随分あさって、それなりに勉強しております。(^^v

    しかし、この勉強、将来的には役に立ちそうです。
    私もあと2年ほどで退職です。
    退職してやりたいことは二つあります。

    そのうちの一つは、パブリックドメインとなったアナログ音源をできる限り良好な状態でデジタル化してネットで配信することです。ですから、今も日本橋に行くたびに中古レコード屋に顔を出しては目ぼしい物をあさっています。

    もう一つは、日本中の有名な桜の木を見て回ることです。
    桜と音楽は私にとって人生そのものです。

  7. yk
    2014年9月15日 at 1:33 AM

    LP vs. CD ( vs. SACD, etc. ?)の優劣論争にはあまり関心のないロートルです。LPしかなかった時代にはLPを、CDの時代になってからは簡便さと安定性にあっさり負けてCDに偏向した意志薄弱の徒でもありますが、今も昔のLPおよびその再生環境はなんとか維持し、CD化されていない録音であれば時折中古LPも購入(し、CD-R化)することもあるという優柔不断の徒でもあります。
    録音・再生メディアとしてのLPおよびCDの実態についてはyungさんの認識にほぼ同意です。もちろんLPにも良い・・と言うより”好き”な音のものもあり”嫌い”なものもあるし、CDについても同様ですが、その由って来るところは千差万別だなー・・・と言うのが私の実感です。
    ただ、LPと言うメディアに20KHz以上の音が入りうるのか否かについては、その昔の4チャンネル・ステレオLPが思い起こされます。確か、幾つかのメーカーの4チャネルLPでは30KHとか40KHzのキャリア信号をLPに埋め込んで、それを使って4チャンネルを実現していたと思います。それに対応してカートリッジも50KHzあたりまで採れるものが市販もされたと記憶しています。この場合、積極的に”音”として20KHz以上も再生しようというものではありませんが、精度はともかくLPもこの周波数帯域を扱うことが出来るのは確かです・・・・ただ、私はこのことをもってLPのCDに対する優位性を主張するつもりはありませんのですが・・・・実際、4チャネルLPの音は総じて褒められたものではないものが多かったように記憶しています。

  8. 2014年9月15日 at 8:33 AM

    昔、エアチェックというのがはやって、FMの番組表のある週刊誌をよく購読していた。FMステレオは当時音楽の宝庫でした。いい音でした。それを録音してウォークマンで聴く、というのが楽しみでした。ところで、ここでの議論との関係では、FMステレオ放送は19kHz以下は完全にカットしています。和差信号を38kHzのサブキャリアに載せているからです。変調されたサブキャリアは20kHz~60kHz弱まで広がっています。いかにもアナログ的ですが、搬送も再生も現在はスイッチング方式です。19kHzで右と左を切り替えています。デジタルです。でも結果は一緒です。

  9. 2014年9月15日 at 8:36 AM

    訂正です。「FMステレオ放送は19kHz以下は完全にカットしています。」ではなくて、「FMステレオ放送は19kHzの下あたりから上はの音声信号は完全にカットしています。」です。
    失礼しました。

    • 2014年9月26日 at 7:11 AM

      FMステレオ放送の場合、実際はもっと狭くて15kHzですね。
      元々モノラル(L+R)段階で50Hz~15kHzしかなく、それにサブキャリア(23~53kHz)のL/R差分を和差合成します。

  10. joecool
    2014年9月15日 at 10:46 AM

    話が横道に逸れますがご容赦下さい。

    アナログの話題につられて、超久しぶりにターンテーブルをセットしてLPを聴いたのですが、その音の好ましさに今更ながら驚きました。

    私のセットはエントリークラスそのもので、明らかに音が歪んでいるばかりか、情報の欠落まではっきりと解るのですが、涙が出そうに好ましい音なのです。(少年時代を思い出すというバイアスが大いに掛かっていますが)

    この好ましさは一体どこから来るのでしょうか?

    情緒的な話、失礼いたしました。

    P.S.
    しかし片面の収録時間が短すぎる・・・(−−;

  11. 2014年9月15日 at 7:41 PM

    >私のセットはエントリークラスそのもので、明らかに音が歪んでいるばかりか、情報の欠落まではっきりと解るのですが、涙が出そうに好ましい音なのです。(少年時代を思い出すというバイアスが大いに掛かっていますが)

    この部分が非常に大切だと思っています。おそらく、音楽再生という趣味に何を求めるのかという、大げさに言えば「哲学的」な命題が含まれていると思うからです。そして、最後の最後にこの部分以下変わる私なりの考えは述べたいとは思っています。(文案はほぼまとまっています)

    決して情緒的な話ではないと考えています。

  12. Fuji
    2014年9月16日 at 5:31 PM

    ユング様、皆様、ご無沙汰しております。
    今回、LPレコードが話題になりましたので、以前から気になっていたLPレコードに付いての質問がございます。
    最近、新譜のLPレコードが発売されている様で、これらの音源はデジタル録音された物
    ですが、このデジタル音源を基に作成されたLPレコードの音質ってどうなんでしょうか。どう考えても直接DACの出力を聞いた方が好ましいと思うのですが、実際この様なLPレコードを聞かれている方、又この辺りの事情をご存知の方がいらっしゃればご意見を伺いたいと思うのですが。

  13. Dr335
    2014年9月18日 at 1:14 AM

    前々回に続き書かせていただきます.私もLPを再生していて,ボワンとしたアナログらしい太い響きにニンマリすることはあります.しかし最新録音のCDを再生していて,オーケストラの弦楽器がふわっと空気中に広がる感じに,この音はアナログでは出せないな,と感動することもあります.もちろんハイレゾ音源の,空間の広がりに驚くこともあります.どうして皆さん,LPにだけ涙を流すのでしょう...最新録音によるLPを聴いたことがないので,正確な比較はできませんが,元の録音が良ければ,メディアの特性の違いを超えて,いい音がするのではないでしょうか.

    CD化されたアナログ録音の音が良くないことがあるのは,「リマスタリング」で弄りすぎるからではないか,と思います.CD初期に出たアナログ録音のCD復刻盤は,イコライジングだけのストレートな復刻が多く,テープヒスもそのまま残っていて,最近の復刻盤よりむしろ好ましいことがあります.テープの傷みをレストアして聴きやすくしてくれるのは結構なのですが,なるべくノイズリダクションはかけないでほしいです.どうも一部のリマスタリングは,アナログ録音の美味しい所を削って,デジタル録音ぽく聴こえるように小細工しているようにしか思えません.

    最終的に,スピーカーが動く時は,A地点からB地点にコンプライアンスを持ってなだらかに動くのであり,波形に細かいギザギザがあっても,結局スピーカーはギザギザを均して滑らかに動く,と理解しています.理想論として,ギザギザをより細かくする努力は必要と思いますが,CDの規格は,昔ながらの電磁式スピーカーの限界をふまえて,上手い所を押さえているのではないでしょうか.ハイレゾ規格が本当の意味で必要になるのは,今と全く違う方式のスピーカー(?)が出来てからだと思います.素人の勘違いかもしれませんが...

    • Fuji
      2014年9月18日 at 6:16 PM

      Fujiです。
      >元の録音が良ければ,メディアの特性の違いを超えて,いい音がするのではないでしょうか。

      確かに元の録音が良くなければ話にならないのですが、デジタル録音された音源で作成したLPレコードはすでにDAC、RIAAフィルター、カッティングマシーン(ラッカー盤に音の溝を彫る作業)、等々多くのプロセスを経て、さらに聴く場合はカートリッジ、ヘッドアンプ、RIAAフィルターを経てやっとアンプの入口に入る訳で、どう考えてもデジタル音源をそのまま何もせず、直接DACを通して聴いた方がよほど鮮度が高く、良い音で聴く事が出来ると思うのですが。又これは推測ですが、1980年代以降に発売された新譜のLPレコードの殆どは、デジタル録音された音源を使用しているのではと思っています。この様な事から、デジタル録音された音源で作成したLPレコードを聴くメリットはどこにあるんでしょうか。

      • 2014年9月18日 at 9:15 PM

        80年代の新譜LPレコードの大部分はデジタル録音されたものをマスターにしていたと思います。しかし、最近は再びアナログのテープで録音してLPレコードを作成しているところも増えてきているようです。
        そうなると、録音用のマイクは文句なく20kHzまでフラットに音を拾いますし、それを録音するデッキもおそらくは30kHzあたりまでの特性は保障されるはずです。そうなると、録音クオリティとしてはハイレゾ音源とほぼ同等のクオリティのアナログマスターができるはずです。そう言う音源をもとに、盤質などにも十分配慮してカッティングされたLPレコードならば、アナログ全盛期とは一線を画すような音質が期待できるような気はします。

        しかし、本質的な面で二つにの不安があります。
        ひとつは、アナログ録音に求められる職人技がきちんと継承されているのかと言う点です。機材のクオリティは向上しても腕が落ちていたのではどうにもなりません。そして、50年代のマーキュリー録音などを聞かされると、録音は本質的に機材のクオリティよりは録音する人の腕だと言うことを思い知らされます。
        二つめは、そのような特殊な条件で録音したいという演奏家のクオリティに関する不安です。
        オーディオで「音」だけ聞きたい人にとっては不要な不安ですが、「音楽」を聞きたい人にとっては、素晴らしい音質で下らない演奏を聴かされるほど空しいことはありません。

        まあ、こんな事が杞憂ならばいいのですが、音のクオリティを追求するならば意味のないことではないとは思います。
        ただし、そう言う実物は聞いたことはないので、あくまでも理屈優先の保障のない話ですが・・・・。

        • Fuji
          2014年9月19日 at 7:52 AM

          Fujiです。

          >最近は再びアナログのテープで録音してLPレコードを作成しているところも増えてきているようです。

          アナログテープ録音のLPレコードですか、しかしこの様なLPレコードって、おそらく発売枚数は少なく、相当価格が高くなると思いますし、グラムフォンやデッカなどのメジャーレーベルが手を出すとは思えません。そうなるとユングさんが仰った、”素晴らしい音質で下らない演奏を聴かされるほど空しいことはありません。”と言う事になって私自身この様なLPレーコードが発売され音質も良いと言われても、購入する事は無いと思います。

    • 2014年9月18日 at 9:28 PM

      「最終的に,スピーカーが動く時は,A地点からB地点にコンプライアンスを持ってなだらかに動くのであり,波形に細かいギザギザがあっても,結局スピーカーはギザギザを均して滑らかに動く,と理解しています。」

      このあたりのことは、ハイレゾ音源の必要性を考える上で検証すべきポイントだと思います。
      たとえば、16bitと24bitの電圧の差について言及されている方がおられましたが、たとえばプリアンプのボリュームを通れば、その違いはどの程度反映するのかは検証しなければと思います。つまみを回して抵抗の組み合わせを変えて減衰するような可変抵抗型のタイプならば、そんな些細な電圧の差などはホント意味を持たないことは容易に察しがつきます。ただし、ボリュームのタイプにはいろいろありますから、ものによっては意味を持つようなものがあるかのもしれません。
      さらには、アナログデータはケーブルの中を流れれば劣化します。そして、最後のスピーカーシステムこそは最大の「不確定要素」に満ちた世界です。Dr335さんがふれておられるように、入り口部分におけるデジタル信号の精緻さの差をどの程度まで現実のものとして表現できるのかは考えてみる必要があるだろうと思います。

      私には、正直言ってよく分かりません。

      • 2014年9月20日 at 1:33 PM

        こんにちは。

        私もいろいろ述べさせていただいておりますが,
        お題の「CD規格って不十分なの?」について,

        私の結論は,
        44.1kHzは十分だが,16ビットは全く不十分
        です。

        その理由は理屈以前で,例えば
        44.1kHz/16ビット と 88.2kHz/16ビット を
        聴き比べても,その違いは
        ・空気感が違うような気がする
        ・自然な佇まいを感じる
        ・音がスムーズになっているような気がする
        といったようなもので,分る人には分るのかもしれませんが,
        個人的には44.1kHzで足りないという印象はありません。

        それに対して
        44.1kHz/16ビット と 44.1kHz/24ビット を
        聴き比べると,その音の違いは途方もなく,全く比較になりません。
        ・音のニュアンスが全く違う
        ・音の厚みや存在感が全く違う
        ・空間を形成する音の情報量が全く違う
        ・音像の小ささと明瞭さが際立っている
        といった印象があり,
        喩えて言うなら,
        6万5千画素のデジカメ写真と1600万画素のデジカメ写真
        軽自動車の走りと,5000CCクラスの車の走り
        くらい違います。
        なので,私は16ビットは全く不十分だと思っているわけですが,
        一方で,
        ・6万5千画素のデジカメ写真でも十分
        ・軽自動車の走りで十分
        という考え方も有り得るでしょうし,それを否定するものでもありませんので,
        16ビットが不十分というのは,あくまで私個人の考えです。

        理屈はいろいろあると思いますが,それ以前に,実際に聴いた印象があまりに
        ハッキリしているので,聴いての判断だということです。

        • 2014年9月20日 at 2:49 PM

          今はアナログ再生の環境に対してCD規格が十分なのかを論じていますので、ここで論ずるには少し論点がずれているかとは思います。
          しかし、この問題の次にはハイレゾ音源の意味についてもじっくり考えてみたいとは思っていますので、とりわけビット数の問題は大きな問題になるとは思っています。

          そして、そのときにおそらく問題となるのが、デジタル以降のアナログ領域での再生環境だと思っています。

          ・音のニュアンスが全く違う
          ・音の厚みや存在感が全く違う
          ・空間を形成する音の情報量が全く違う
          ・音像の小ささと明瞭さが際立っている

          という差異が聞き取れる最上流部のデジタル段だけでなく、アナログ段以降の環境なども公開してくれると多くの方に参考になるのではないかと思います。
          確かに、最上部で失われたデータを下流部で補うことは不可能ですが、同じように、劣化せずに送り出した上流部のデータを現実の音に変換するのは下流部のアナログ段だからです。

          • 2014年9月20日 at 5:25 PM

            当方の再生環境については以下に掲載しています。

            http://homepage1.nifty.com/classicalcd/audio/

            私はアナログを再生するのに16ビットでは不十分と主張しているわけですが,

            例えば,以下のサイトに,ワインガルトナーの第9のSP盤を3種類のフォーマットでアップロードされていますので,聴き比べられてはいかがでしょうか。

            SP盤復刻にハイレゾは必要か
            http://fukkokulab.com/memo/20130502/

            1.mp3(128kbps) 1.42 MB
            2.Wave(16bit/44.1kHz 1,411kbps) 15.6 MB
            3.Wave(24bit/96kHz 4,608kbps) 51.1 MB

  14. 2014年9月20日 at 9:23 PM

    加藤様、貴重な情報を公開していただきありがとうございます。
    感謝です。
    (これ以上深い階層まで返信にできないんだ、はじめて知った。管理人なのに・・・^^;)

Comments are closed.