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ベートーベン:交響曲第1番
トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1939年録音
- ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21 「第1楽章」
- ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21 「第2楽章」
- ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21 「第3楽章」
- ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21 「第4楽章」
栴檀は双葉より芳し・・・?
ベートーベンの不滅の9曲と言われ交響曲の中では最も影の薄い存在です。その証拠に、このサイトにおいても2番から9番まではとっくの昔にいろいろな音源がアップされているのに、何故か1番だけはこの時期まで放置されていました。今回ようやくアップされたのも、ユング君の自発的意志ではなくて、リクエストを受けたためにようやくに重い腰を上げたという体たらくです。でも、影は薄いとは言っても「不滅の9曲」の一曲です。もしその他の凡百の作曲家がその生涯に一つでもこれだけの作品を残すことができれば、疑いもなく彼の代表作となったはずです。問題は、彼のあとに続いた弟や妹があまりにも出来が良すぎたために長兄の影がすっかり薄くなってしまったと言うことです。
この作品は第1番という事なので若書きの作品のように思われますが、時期的には彼の前期を代表する6曲の弦楽四重奏曲やピアノ協奏曲の3番などが書かれた時期に重なります。つまり、ウィーンに出てきた若き無名の作曲家ではなくて、それなりに名前も売れて有名になってきた男の筆になるものです。モーツァルトが幼い頃から交響曲を書き始めたのとは対照的に、まさに満を持して世に送り出した作品だといえます。それは同時に、ウィーンにおける自らの地位をより確固としたものにしようと言う野心もあったはずです。
その意気込みは第1楽章の冒頭における和音の扱いにもあらわれていますし、、最終楽章の主題を探るように彷徨う序奏部などは聞き手の期待をいやがうえにも高めるような効果を持っていてけれん味満点です。第3楽章のメヌエット楽章なども優雅さよりは躍動感が前面にでてきて、より奔放なスケルツォ的な性格を持っています。
基本的な音楽の作りはハイドンやモーツァルトが到達した地点にしっかりと足はすえられていますが、至る所にそこから突き抜けようとするベートーベンの姿が垣間見られる作品だといえます。
コントロールされた熱狂
なんだか論理矛盾そのものの日本語ですが、トスカニーニよるベートーベンを聴くとき思わずその様なおかしな日本が頭に浮かんできます。おそらく、トスカニーニほどベートーベンの音楽に内包されている強烈な推進力とその推進力がもたらす熱狂をオーケストラから引き出した指揮者はいないと思います。
ただし、その熱狂は厳密にコントロールされた中から出てくるがゆえに、聞き手にはより凄みを持って音楽が迫ってきます。
第1楽章の素晴らしい推進力とそれによってもたらされるコントロールされきった熱狂を味わうだけでも、この演奏を聞く価値はあると思います。