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ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98


ジョージ・セル指揮 北ドイツ放送交響楽団 1959年5月25日録音をダウンロード

  1. ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98「第1楽章」
  2. ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98「第2楽章」
  3. ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98「第3楽章」
  4. ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98「第4楽章」

とんでもない「へそ曲がり」の作品



ブラームスはあらゆる分野において保守的な人でした。そのためか、晩年には尊敬を受けながらも「もう時代遅れの人」という評価が一般的だったそうです。

 この第4番の交響曲はそういう世評にたいするブラームスの一つの解答だったといえます。
 形式的には「時代遅れ」どころか「時代錯誤」ともいうべき古い衣装をまとっています。とりわけ最終楽章に用いられた「パッサカリア」という形式はバッハのころでさえ「時代遅れ」であった形式です。
 それは、反論と言うよりは、もう「開き直り」と言うべきものでした。

 
しかし、それは同時に、ファッションのように形式だけは新しいものを追い求めながら、肝腎の中身は全く空疎な作品ばかりが生み出され、もてはやされることへの痛烈な皮肉でもあったはずです。

 この第4番の交響曲は、どの部分を取り上げても見事なまでにロマン派的なシンフォニーとして完成しています。
 冒頭の数小節を聞くだけで老境をむかえたブラームスの深いため息が伝わってきます。第2楽章の中間部で突然に光が射し込んでくるような長調への転調は何度聞いても感動的です。そして最終楽章にとりわけ深くにじみ出す諦念の苦さ!!

 それでいながら身にまとった衣装(形式)はとことん古めかしいのです。
 新しい形式ばかりを追い求めていた当時の音楽家たちはどのような思いでこの作品を聞いたでしょうか?

 控えめではあっても納得できない自分への批判に対する、これほどまでに鮮やかな反論はそうあるものではありません。


ニュートラルでない放送オケ


ケルンのオケと較べると、セルはハンブルグのオケとは関係が深くなったようです。
調べた範囲ではこの1959年5月25日ののライブ以外には録音は残されていないようです。


  1. ブラームス:交響曲第4番ホ短調 Op.98

  2. モーツァルト:交響曲第40番ト短調 K.550



北ドイツ放送交響楽団の本拠地ハンブルグはブラームスが生まれた町ですから、この作曲家に寄せる思いには深いものがあります。いや、ありました、と言うべきかもしれません。
51年のフルトヴェングラーとのライブ録音から始まって、イッセルシュテットやヴァントとの全集録音という優れた業績を残していたオーケストラです。
しかし、テンシュテットの後任としてガーディナーを選んだあたりから潮目が変わったのかもしれません。

ケルンのオケとハンブルグのオケは兄弟みたいな存在です。
もとは、戦後すぐに結成された北西ドイツ放送響楽団が、母体となった放送局の分離に伴って二つのオケに分離したからです。

放送局のオーケストラというのは一般的にニュートラルな性格を持っています。それこそ色んな指揮者を相手にして色んな音楽を演奏することが求められるからです。
ですから、指揮者にとっては「客演」しやすいオケだとも言えます。

しかし、このハンブルグのオケは明らかにイッセルシュテットのオケです。イッセルシュテットは1945年に連合軍の要請で北西ドイツ放送交響楽団を立ち上げるときから深い関係を持ち、1954年に分離独立して北ドイツ放送交響楽団となったときに初代の首席指揮者に就任します。そして、その関係は1971年まで続くわけですから、それはもうイッセルシュテットのオケと言ってもいいほどです。
それは、セルとクリーブランド管との関係(1946年^1970年)をすっぽりと覆ってしまうほどの期間なのです。

世間ではこの録音を、クリーヴランド管との完璧なスタジオ盤にはない一種苛烈な熱気と緊張に満ちた一期一会の演奏と評価するムキもあります。しかし、その方向性で言うならば、明らかにケルンのオケとの録音に一歩譲ります。
そして、その背景には、ケルンのオケが持っていたであろうニュートラルな性格があったことは間違いありません。

ハンブルグのオケの背後には常にイッセルシュテットがいます。そして、ブラームスに対する矜恃もあったことでしょう。
そう言うニュートラルでない部分が、結果としてケルンのオケがみせる爆発力に結びつくことを「拒否」したように見えるのです。

そして、結果として、北ドイツにおけるセルの客演指揮のパートナーはケルンのオケと言うことになったのではないでしょうか。