クラシック音楽へのおさそい〜Blue Sky Label〜


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ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調, Op.83(Brahms:Piano Concerto No.2 in B-flat major, Op.83)


(P)ヴィルヘルム・バックハウス カール・ベーム指揮 シュターツカペレ・ドレスデン 1939年録音(Wilhelm Backhaus:(Con)Karl Bohm The Staatskapelle Dresden Recorded on 1939)をダウンロード

  1. Brahms:Piano Concerto No.2 in B-flat major, Op.83 [1.Allegro non troppo]
  2. Brahms:Piano Concerto No.2 in B-flat major, Op.83 [2.Allegro appassionato]
  3. Brahms:Piano Concerto No.2 in B-flat major, Op.83 [3.Andante]
  4. Brahms:Piano Concerto No.2 in B-flat major, Op.83 [4.Allegretto grazioso]

気力・体力ともに充実しきった絶頂期の作品



まったく可愛らしいきゃしゃなスケルツォをもった小さなピアノ協奏曲

逆説好みというか、へそ曲がりと言うべきか、そう言う傾向を持っていたブラームスはこの作品のことそのように表現していました。しかし、そのような諧謔的な表現こそが、この作品に対する自信の表明であったといえます。

ブラームスは第1番の協奏曲を完成させた後に友人たちに新しい協奏曲についてのアイデアを語っています。しかし、そのアイデアは実現されることはなく、この第2番に着手されるまでに20年の時間が経過することになります。

ブラームスという人は常に慎重な人物でした。自らの力量と課題を天秤に掛けて、実に慎重にステップアップしていった人でした。
ブラームスにとってピアノ協奏曲というのは、ピアノの名人芸を披露するためのエンターテイメントではなく、ピアノと管弦楽とが互角に渡り合うべきものだととらえていたようです。そう言うブラームスにとって第1番での経験は、管弦楽を扱う上での未熟さを痛感させたようです。

おそらく20年の空白は、そのような未熟さを克服するために必要だった年月なのでしょう。
その20年の間に、二つの交響曲と一つのヴァイオリン協奏曲、そしていくつかの管弦楽曲を完成させています。

そして、まさに満を持して、1881年の夏の休暇を使って一気にこの作品を書き上げました。
5月の末にブレスハウムという避暑地に到着したブラームスはこの作品を一気に書き上げたようで、友人に宛てた7月7日付の手紙に「まったく可愛らしいきゃしゃなスケルツォをもった小さなピアノ協奏曲」が完成したと伝えています。
決して筆のはやいタイプではないだけにこのスピードは大変なものです。まさに、気力・体力ともに充実しきった絶頂期の作品の一つだといえます。

さて、その完成した協奏曲ですが、小さな協奏曲どころか、4楽章制をとった非常に規模の大きな作品ででした。
また、ピアノの技巧的にも古今の数ある協奏曲の中でも最も難しいものの一つと言えます。ただし、その難しさというのが、ピアノの名人芸を披露するための難しさではなくて、交響曲かと思うほどの堂々たる管弦楽と五分に渡り合っていかなければならない点に難しさがあります。
いわゆる名人芸的なテクニックだけではなくて、何よりもパワーとスタミナを要求される作品です。

そのためか、女性のピアニストでこの作品を取り上げる人は少ないようです。また、ブラームスの作品にはどちらかと言えば冷淡だったリストがこの作品に関してだけは楽譜を丁重に所望したと伝えられていますが、さもありなん!です。

それから、この作品で興味深いのは最終楽章にジプシー風の音楽が採用されている点です。
何故かブラームスはジプシーの音楽がお好みだったようで、「カルメン」の楽譜も入手して研究をしていたそうです。この最終楽章にはジプシー音楽とカルメンの大きな影響があると言われています。


この時代のシュターツカペレ・ドレスデンは古き良きドイツそのものでした。


ベームとバックハウスによるブラームスのコンチェルトと言えば、1967年盤が今も不朽の名盤としての地位を保っています。あの冒頭のウィンナ・ホルンのソロを聞くだけで陶然たる気持ちにさせられる素晴らしい演奏でした。
ただし、そんな事を書くと、それじゃ肝心のバックハウスのピアノはどうなんだと言われそうなのですが、そこはもう、その時バックハウスは80歳を超えていたと言うことだけを申し述べておきましょう。(^^;

そりゃぁ、評論家先生というのは上手いこと言いますよ。
「年を経るに従って外面的な美しさを捨て去り、晩年には男性的な極みともいうべき武骨さを身上とする演奏家へと変貌を遂げました。」なんてのは実に上手い言い回しです。(^^v
それでも、「晩年の芸風を余すところなく伝える演奏」なんてのは、字面をじっくりと眺めていると褒めてるのか貶してるのか分からなくなりますね。

それに対して、こちらは30年近く前の1939年の録音ですから、バックハウスは50代、ベームは未だに40代でした。
気力、体力ともに充実しきった頃の録音と演奏です。

そして、オーケストラはシュターツカペレ・ドレスデンです。
この時代のシュターツカペレ・ドレスデンは古き良きドイツそのものでした。そして、その伝統は戦争によって永遠に失われてしまったのですから、この組み合わせはこの上もなく貴重な歴史的遺産と言っていいでしょう。