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ベートーベン:ピアノソナタ第24番「テレーゼ」
(P)バックハウス 1952年4月録音をダウンロード
繊細さへのチャレンジ
巨大で、闘争的な中期の傑作を書いたあとで、今度はそれらとは正反対な、言うなれば「繊細さへのチャレンジ」とも言うべき試みで作曲されたのがこの作品です。
この作品はベートーベンとは格別に親しかったブルンスヴィック伯爵家の令嬢テレーゼに献呈されています。一家はベートーベンを快く家庭に迎え入れ、一時はこのテレーゼがベートーベンの「不滅の恋人」に擬せられたこともありました。
しかし、第1楽章冒頭で歌い出される優美な旋律はこのテレーゼを言う女性を想像させるに十分なほど美しい音楽となっています。
事実ベートーベン自身もこの作品をことのほか気に入っていたようです。
ピアノソナタ24番「テレーゼ」 Op.78 嬰ヘ長調
第1楽章
アダージョ・カンタービレーアレグロ・マ・ノン・トロッポ 嬰ヘ長調 4分の2拍子ー4分の4拍子 ソナタ形式
第2楽章
アレグロ・ヴィヴァーチェ 嬰へ長調 4分の2拍子 ソナタ形式
バックハウス全盛期の演奏
バックハウスはモノラルの時代とステレオの時代にそれぞれ全集を録音しています。(ただし、29番「ハンマークラヴィーア」のみはステレオでの再録音がされなかったのでモノラル時代の録音が流用されています)
以前は随分と高価なボックスだったように記憶しているのですが、最近はどのような仕掛けがあるのか分かりませんが、イタリア・ユニーバーサルからかなり安価な値段で供給されるようになりました。
ところが、面白いのが、音質的には劣るモノラル録音の方がステレオ録音よりも高く値段が設定されていることです。
この手のものはお店によって価格設定が変わることが多いのですが、私がよく利用しているお店では
モノラル録音が10000円
ステレオ録音が6900円
に設定されています。
こういう古い録音は最終的には需要と供給の関係で決まるようですから、多くの人が音質的には劣ることは分かっているのにモノラル録音を求めることをこの事実は示しています。
理由はいうまでもありません、演奏そのものが圧倒的にモノラル録音の方が優れているからです。
日本では何故かシルバーシート優先で老大家の枯れた演奏を持ち上げる習慣があるのですが、いうまでもなく、その様な「枯れた演奏」よりは脂ののりきった全盛期の演奏の方が優れていることが多いのは自明の理です。とりわけ、この23番のような覇気満々たる作品であるならばそのアドバンテージは絶対的です。
ステレオ録音によるバックハウスしか聞いたことがない人には是非とも一度は聞いてもらいたい演奏です。