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グリーグ:ペールギュント第1組曲
スウィートナー指揮 バンベルグ交響楽団 1952年8月29日録音をダウンロード
- 前奏曲「朝の気分」 第4幕の前奏曲(No.13)
- 「オーゼの死」 第3幕前奏曲・第3幕第4場(No.12)
- 「アニトラの踊り」 第4幕第6場(No.16)
- 「山の魔王の宮殿にて」 第2幕第6場の開始(No.8)
今では組曲の方が有名になってしまいました。
イプセンが書いた詩劇「ペールギュント」はノルウェーに古くから伝わる民話を素材としていますが、簡単に言えば、とんでもない身勝手な男とそんな馬鹿な男を支えて待ち続ける純情な女の物語です。ワーグナーなんかが典型なのですが、どうもこういう「とんでもない男の身勝手」というモチーフが西洋人は好きなようです。
登場するのは道楽の果てに財産を使い果たした馬鹿親父を持つ大ボラふきのペールとそんな馬鹿息子を溺愛する馬鹿母のオーゼです。(凄い一家です^^;)そして、そんなペールに心を寄せる「純情な娘・・・ソルヴェイグ」がこの物語の主要な登場人物です。
物語はペールの波乱に満ちた人生を縦糸に、そんなペールを信じて待ち続けるソルヴェイグを横糸として展開されていきます。
ペールはソルヴェイグという恋人がいながら幼なじみだったイングリットを結婚式の場から奪って逃げたり、国際的な山師となってモロッコの皇帝の財宝をだまし取ったり、カリフォルニアで大金持ちになったりします。しかし、せっかく奪ったイングリッドなのにあきて捨ててしまったために山の魔物に酷い目にあわされたり、だまし取った財宝を色仕掛け(アニトラのお踊り)でだましたられたり、せっかくの財宝も船が難破して全て失ったりしてしまいます。
そしてようやくにして帰り着いた故郷では盲目になりながらもソルヴェイグが彼の帰りを待ち続け、そんなソルヴェイグに許しを請いながら安らかな最期を迎えるというお話です。(何という荒っぽいあらすじ・・・_(_^_)_ ゴメンチャイ)
グリーグはそんなとんでもないお話に音楽をつけるのは心がすすまなかったようですが、頼まれると嫌といえない性格だったのか、苦労しながら28曲の音楽を作曲します。そして、その28曲の中から4曲ずつ「お気に入り」を抜き出し、オーケストレーションなどを手直しして1888年に第1組曲、1892年に第2組曲を作曲します。
現在では本家の詩劇の方はほとんど読まれることもなく、そのために全曲版の方も滅多に演奏されません。しかし、組曲の方は見方によっては4楽章構成の交響曲のように見えなくもない(見えないか・・・^^;)まとまりの良さもあって、現在ではグリーグを代表する作品としてよくコンサートでも取り上げられます。
○ 第1組曲
1. 前奏曲『朝の気分』 第4幕の前奏曲(No.13)
2.『オーゼの死』 第3幕前奏曲・第3幕第4場(No.12)
3.『アニトラの踊り』 第4幕第6場(No.16)
4.『山の魔王の宮殿にて』 第2幕第6場の開始(No.8)
○ 第2組曲
1. 前奏曲『花嫁の略奪とイングリッドの嘆き』 第2幕の前奏曲(No.4)
2.『アラビアの踊り』 第4幕第6場(No.15)
3. 前奏曲『ペールギュントの帰郷』 第5幕の前奏曲(No.21)
4.『ソルヴェイグの歌』 第5幕第5場(No.23)
オトマール・スウィトナー
指揮者というのは死ぬまで活動を続けるのが一般的です。また、何らかの理由で活動を中止するときは何らかの声明や宣言がなされるのが一般的です。しかし、スウィートナーはその様な公式の発表などは一切なしで事実上の引退をしてしまった珍しい人です。
1990年の来日公演をキャンセルした後は一切の演奏活動を停止し、2002年にバレンボイム主催によるスウィトナーの80歳を祝うパーティーに姿を見せた以外は公的な場には一切姿を表していません。
おそらくは東西ドイツの統一とその過程での政治的混乱が彼に深刻なダメージを与えたことは想像できるのですが、彼自身が何も語らずに第一線を引退してしまったために、その真相は永遠に闇の中になることでしょう。
さて、スウィートナーという人の評価なのですが、個人的に言えば非常に高いです。それは、彼が事実上の引退生活に入る少し前に手兵のベルリン国立歌劇場のオケ(シュターツカペレ・ベルリン)を率いての来日公演を聞いたからです。
プログラムはモーツァルトの3大交響曲曲とベートーベンのエロイカというヘビー級のものでした。
スウィートナーのモーツァルトは同業者の中では非常に評価が高くて、中堅・ベテランの指揮者の中でも、モーツァルトの交響曲が予定にはいると彼の録音を参考にする人も多かったという噂が流れています。ですから、当日のモーツァルトも素晴らしかったのですが、それ以上に素晴らしかったのが後半のエロイカでした。とりわけ、第2楽章の中間部でフーガのように音楽が進行する場面ではまさにオケ全体がすすり泣いているかのような凄演で、後にも先にあれほど凄いエロイカをライブで聞いたことはありませんでした。
スウィートナーという人は「手堅い」指揮者というイメージがあるのですが、なかなかどうして、ライブでは驚くような熱っぽい演奏を展開する懐の深さを持った人でした。
この時のコンサートは、ユング君の人生の中で5本の指には入るものですから、誰がなんと言ってもユング君の中ではスウィートナーは凄いのです。(ただし、同じオケで録音したスタジオ録音の方は実につまらないです。この辺が指揮者を評価する難しさですが優先すべきはライブでしょう。)
なお、ここでの演奏は彼が西ドイツの地方の歌劇場でキャリアを積み上げていた頃の録音です。取り立ててどうこう言うような演奏ではありませんが、即物的な表現が大勢を占めていた当時の状況を考えると、後のスウィートナーを予想させるような優美な音楽が姿を表していることだけは確認できます。