LP資料館

LP資料館(Flame Version)
「クラシック・データ資料館」と言うサイトの中にあるコーナーです。古いレコ芸を丹念に調べてLPレコードがいつ発売されたのかが網羅されています。
隣接権の起算点が「録音」から「発売」に変わってパブリックドメインか否かの判断に苦しむことが増えてきたのですが、このサイトのおかげでかなり助けられています。
もちろん、起算点の発売というのは世界で初めて発売されたときなので、この国内での発売よりもかなり早いのが一般的なのですが、どうしても確定できないときはこのサイトが大きな助けとなっています。
さて、今回書きたいのはそんなことではありません。
最近このページに久しぶりにアクセスしてみると発売当時の価格が記入されていて、それが実にいろいろなことを考えさせてくれたので、その辺のことをちょこっと書いてみようかと思った次第なのです。
例えば、
●モーツァルト
歌劇「魔笛」K.620全曲
■ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーンpo. ウィーン楽友協会cho.
[LP](M)C?コロムビアWL5032?4(3枚組) 6,900円 (1953.2発売)
例えば、
●J.シュトラウス?世
喜歌劇「こうもり」全曲
■ユージン・オーマンディ指揮 メトロポリタン歌劇場o.、同cho.
[LP](M)C?コロムビアWL5066?7(2枚組) 5,400円(1953.6発売)
みたいな感じです。
1953年の大卒初任給を調べてみると精々8000?9000円程度です。ですから、3枚組のLPで6900円、2枚組で5400円というのはとんでもなく高価な買い物だったことが分かります。
最近の大卒初任給は20万円程度ですから、その感覚で言えばLP一枚あたり6万円程度になります。2枚セットで12万円、3枚セットならば18万円です。
おそらく、当時の音楽愛好家は大変な決断の末にそれらのレコードを購入したことでしょう。そして、必死の思いで購入したレコードをそれこそ押し頂くようにして、己の全てを傾けてその音楽と向き合ったことでしょう。
その事を思えば、今は信じられないほどにCDの価格は低下しました。ブリリアントのセット物なんかだと一枚あたり200円程度ですから、感覚的には三百分の一です。
おかげで、いろいろな音楽に気軽に接することが出来るようになったことは確かに幸せなことです。
しかし、事はそれほど単純ではありません。CD価格の低下は同時に自分が向き合うべき音楽の価値も知らず知らずのうちに押し下げているのではないかという疑念がわき上がってきます。
実際、ユング君も半世紀以上人間をやってきたおかげで、随分と自由にCDを買うことが出来るようになりました。そのため、最初の数分を聞いただけで「これは駄目!」という感じでお蔵入りにしてしまうものも少なくありません。
これは、購入すべきかどうかというチョイスの段階で真剣味が失せているのと、音楽と向き合う姿勢がどこかで傲慢になっていることのあらわれではないかと自戒しています。
かつては「不足」の中で「充実」を見いだしていたものが、いつの間にか「過剰」の中で「欠乏」に陥っているのかもしれないなぁ・・・なんどと思わせられたデータでした。

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