初心に帰って

気がつけば、こういうサイトをスタートさせて17年の歳月がたちました。各ページのフッターに「Copyright(C) 1998~2015 Blue Sky Label.All rights reserved.」と記しているように、スタートしたのは1998年です。我ながら、しつこく続けてこれたものだと感心しています。

最近、そんな17年間に書きためてきた文章の中でてアーカイブしておきたいものを整理しようと思い立ったことで、久しぶりに大昔の文章を読み返しています。そんな中で、サイトを立ち上げた頃を振り返った文章に久しぶりに出会いました。

『思い立ってから、実際にサーバーにアップするまで約2ヶ月ほどかかりました。いろいろ大変でしたが、・・・11月の末にBIGLOBEが提供してくれている無料サービス分のスペースにアップしました。
トップページを入れても全体で5ページぐらいのささやかなサイトでした。
しかし、サイトづくりのポリシーだけははっきりしていました。
「人生に、常に励ましと勇気を与えてくれたクラシック音楽のすばらしさを少しでも多くの人に知ってもらいたい」、これだけがサイトづくりの基本でした。
人生のあらゆる場面で、いつも励まし続けてくれたクラシック音楽は人生の恩人であり、そういうクラシック音楽にたいしての「恩返し」をしたいと思ってサイトづくりをスタートさせました。』

とある方のサイトに残っていた立ち上げ当時のバナー画像です。
yung

なるほど、17年前の自分なのですが、なかなかに偉いモンだと感心してしまいました。そして、この思いがあったからこそ、いろいろな紆余曲折があったものの17年も続けてこれたのだと、他人事のように納得した次第です。
そして、そんな振り返りを通して、サイトをスタートさせたときの「初心」みたいなものが薄れてきている自分にも気づくようになってきました。
17年という紆余曲折はサイト運営をしていく上で必要なことを学ばせてもらい、併せて配慮すべき事の多さにも気づかざるを得なかった時の流れでした。そう言うこともあって、ともすれば身につけた「利口さ」だけでサイト更新をしている自分に気づかざるを得なかったのです。

もちろん、そう言う「小利口さ」も必要なのですが、「人生に、常に励ましと勇気を与えてくれたクラシック音楽のすばらしさを少しでも多くの人に知ってもらいたい」という一番の初心についていえば、だんだん希薄になり、不親切になっているのではないかと思わざるを得ませんでした。
しかしながら、そう言う不親切さに胡座をかいているにもかかわらず、時には以下のようなコメントもいただきます。

「最近クラシック音楽にはまりました。当サイトの解説を見ながらいろいろな曲をきいています。良いという解説があると良いところを探して聞いています、おかげでただ聞き流していた曲が好きな曲になるときがあります。」
「ふとしたことからクラシック音楽に興味を持ち、あれこれ調べているうちにこちらのサイトに辿り着きました。曲や演奏者に関するエピソードが、自分のような初心者にも理解しやすい語り口で書かれていて、目を通すことが毎回楽しみです。」
「初めてクラシック音楽に興味を持つようになりました。PCオーディオの手軽さと音源提供のお陰です。楽曲の解説も素人の私には大変有益です。」

そう考えれば、ぼちぼち本気で、クラシック音楽などにはほとんど興味を持っていない人に対しもクラシック音楽のすばらしさを知ってもらえるようなサイト作りを目指さないといけないようです。
実は、何度かそう言ういうことを考えたこともあったのです。

一つは「クラシック音楽入門」です。
結局は野ざらしになっているのですが、これは続きが書けなくなったのではなくて、「方向性がちょっと違うな」と思ったからです。どうしても内容がコアになってしまい、どう考えても初めてクラシック音楽に初めてふれる人のための内容にはなっていません。
そこで、無理はしないでそのコーナーは閉鎖し、淡々とパブリックドメインとなった音源をサイトに上げ、やれる範囲で作品の解説と演奏への感想などを書き連ねる日々が続いていたのです。

でも、どこかで、「初めてクラシック音楽にふれる人」のためのコーナーを立ち上げる必要性は感じていました。
そんな中で、久しぶりに、そしてそれとなく始めたのが『パブリック・ドメインでたどる「のだめの世界」』でした。

しかし、これも始めて見ると、他人様の書いたストーリーに乗っかってクラシック音楽の世界を俯瞰するのはいささか無理があることに気づかれました。また、書いていて、他人様のストーリーに制約されるというのはあまり楽しいものではありませんでした。
と言うことで、『パブリック・ドメインでたどる「のだめの世界」(10)』まで書きながら、これも野ざらしになりそうです。

名曲三〇〇選―吉田秀和コレクション (ちくま文庫)

しかし、『パブリック・ドメインでたどる「のだめの世界」』を書き始めてみて気づいたのは、そんな人様のストーリーに乗っからなくても、今まで淡々と追加してきたパブリックドメインの音源を使って、自分なりの形で『名曲300選』みたいなものが出来るのではないかということです。恐れ多い事ながら、ここで『名曲300選』と書いているのは、あの吉田大明神の『名曲300選』をイメージしています。
思い出せば、クラシック音楽などというものを聞き始めた私にとって、あの『名曲300選』はまさにバイブルでした。あそこに紹介されている作品、録音を頼りに、なけなしの小遣いをはたいてはレコードを買いあさったものです。

2015年3月末の時点で、サイトに上げたパブリックドメインの音源は2200を超えました。
当然のことながら、そこに付してある作品や録音への紹介文は吉田大明神のものと比べれば足元にも及ばない素人仕事ではあるのですが、そうやって紹介した作品と録音を実際に「聞くことが出来る」という点では圧倒的なアドバンテージがあります。

もちろん、新しくパブリックドメインとなった音源を追加していくというのは、このサイトの責務だと考えているので、その事については今まで通り淡々と続けていくつもりです。
また、TPP交渉の行方によっては著作権法が改悪されサイトの運営に支障が出ることを懸念されるメールやコメントもいただきます。しかし、例え隣接権の保護期間が70年に延長という改悪が為されても、また時計を20年巻き戻して、落ちこぼしてきている録音を拾い上げていくだけです。今は、新しくパブリックドメインとなる音源があまりにも多くて、それらを紹介していくだけで手一杯の状態なので、改悪されれば改悪されたで、また違った面白い展開も可能です。

ですから、「クラシック音楽の青空文庫」という基本は維持しながら、もう一つの大きな柱として「パブリックドメインでたどる名曲300選」みたいなものをスタートしようかと考えています。
ただし、いきなり「300選」は大変なので、まずは「これだけは絶対に聞いておきたい50曲」あたりからスタートしようかと考えています。構想としては、「これだけは絶対に聞いておきたい50曲」→「名曲100選」→「名曲300選」のホップ・ステップ・ジャンプを考えています。

と言うことで、当面問題となるのは、誰のどの作品を「50曲」の中に選ぶかです。
構想としては、音楽史的にもジャンル的にも網羅したいので、モンティベルディからシェーンベルグあたりまでカバーすること、さらには「交響曲」「管弦楽曲」「協奏曲」「室内楽曲」「器楽曲」「声楽曲」「オペラ」と網羅することです。
考えてみると、この二つの変数を満たす解を求めるのはかなり難しいようです。

音楽史的にいえば、ザックリと以下のような区分けになるでしょうか。
「古典派以前」「古典派」「前期ロマン派」「後期ロマン派」「国民楽派」「20世紀の音楽」

古典派以前というのはあまりも大雑把すぎるとか、ロマン派の前期・後期は何を基準にするんだとか、20世紀の音楽って分け方はないだろう、とか言う声もあるでしょうが、「初めてクラシック音楽にふれる人」を対象とすれば、専門的な分類はかえって分かりづらいかもしれません。
そんな、あれやこれやを考えて著素をしてみるのも楽しい悩みです。

取りあえずは、自分ありの初案を提示してみて、それに対するご意見などをいただければ有り難い限りです。

4 comments for “初心に帰って

  1. nakamoto
    2015年4月4日 at 12:30 PM

    名曲300選、是非やってください。吉田秀和は、私が一番尊敬する評論家ですが、ユング君さんの感性は、それに遠慮することのない、素晴らしい物ですよ。吉田秀和の300選は、現代とは、くらべものにならないくらい情報量の少ない中で書かれたもので、年齢的にも、今のユング君さんより若かったはずです。遠慮なく独断でしかし、ファンの皆様の意見を交えつつ、結論を出すことは、初めてクラシック音楽を聴く人なんかには、最高の手引きになると思います。吉田秀和の300選は、単旋律聖歌、ゴチック、ルネッサンス、バロックとそして、20世紀中庸まで網羅したものですが、それにトラワレルことなく、ユング君さんの思うように選んでいくことが、私なんかの古株から、新米の方まで、為になるものになるのは、間違いないと思います。

    • yung
      2015年4月4日 at 4:18 PM

      ユング君さんの感性は、それに遠慮することのない、素晴らしい物ですよ。

      これは流石に恐れ多いことで褒めすぎだとは思いますが(^^;、いろいろコメントもいただけているのは有り難いことです。
      もう少し、考えて「初案」に続く第2案」を出してみようかと考えています。

  2. rb_ヒデ
    2015年4月9日 at 3:08 PM

    名曲300選!!なつかしいですねぇ(笑)
    私にとってもさんざんお世話になった本です。
    特にバッハ以前の音楽には感心しましたし、いわゆる現代音楽についてもおおいに興味を抱かされました。

  3. カンソウ人
    2015年9月7日 at 6:28 PM

    生き死に、というよりも、自分の脳に関しての、大きな病気で長期に渡り入院しました。
    リハビリの結果、ようやく今のカンソウ人に戻りましたが、途中で色んな事が起こりました。
    入院直前には、手持ちのCDを手放しました。
    音楽を聴いても何の感動も無い所では無く、オンリーノイズでしかなく、不快でした。
    その直後、人格が破滅するかのような状況におちいり、精神科に入院を余儀なくされました。
    面白い物は無くなり、食わずば死ぬので、旨くも無いと思いながら食事をしました。
    ただ生きるために生きたのは、例え家族が悲しむとも、自死よりは相当に良いと想像したからです。
    もちろん、働かない頭で、不快な感情の中で、金銭・友人・諸々な物を失いながらも、選び取った物です。
    音楽を聴いて、何らかの心が動くのは、自宅で布団の上で、この一か月前からです。
    ブルースカイレーベルにも、今日、久し振りに来ました。
    変化には付いていけませんが、知ろうともしません。しかし、音楽は聴きましたよ。時間は短いですがね。
    身体を動かす事が、今は大切だから、仕方はない事です。

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