発売延期に次ぐ延期だったのですが、8月に注文したCDが2日前に漸くにして手元に届きました。
音質は確かに良好で、ワンポイント録音らしい自然な音場のなかで演奏の姿が捉えられていルような気がするのですが、最終評価としてはやや微妙です。
手元にそろったのは以下の3枚です。
・フォーレのレクィエム マルタン&サン・ユスターシュ管弦楽団
分厚くて暖かみのある音が魅力的ですが、所々に「カチャ」とか「カシャッ」みたいな雑音が背後に混ざります。
・ジョルジュ・オンスロウ:弦楽五重奏曲 Op.78-1/弦楽四重奏曲 Op.8-1
ほとんどCDの存在しない作品ですが、その美しいメロディにはひきこまれます。ただ、2?3回聞けば飽きてしまうような面もあります。
録音は70年代のものとしては標準レベルでしょう。
ワンポイント録音のメリットはあまり感じませんでした。
・フォーレ:ピアノ五重奏曲第1番、第2番、ピアノ四重奏曲第1番、ドリー、他 ティッサン=ヴァランタン、ORTF四重奏団、ピュイグ=ロジェ(2CD)
これが今回一番ほしかったCDで、2日前に漸く届いたのもこのCDです。
早速聞いてみましたが、エレジーのチェロの生々しい響きなどはかなり魅力的です。
ピアノ五重奏曲や四重奏曲も、弦とピアノのバランスが難しい録音だと思うのですがかなり上手くとらえられていると思います。響きがやや薄いかなとも思いますが、まあ合格点でしょう。
ただし、これもまた背後にわずかながら「ボソ、ボソッ」というようなノイズが乗ります。
と言うことで、ここからは私の全くの推測です。
どうも、今回のシリーズも(サブ)マスターテープからのCD化ではなくて、初期LP盤からの板起こしのような気がします。
ご存知のように、シャルランの手になる「マスターテープ」は既にこの世に存在しません。税金の滞納で差し押さえを食らったときに、彼の「ワンポイント録音」によるマスターテープは時代遅れの代物で無価値なものと判断されて廃棄されてしまったからです。
ですから、現在存在するのはマスターテープのコピーです。しかし、その保存状態もあまり良くないようで、おそらくは初期盤からの板起こしの方がベターだと判断したのではないでしょうか。(あくまでも私個人の推測ですよ・・・^^;)
ただ、背後のノイズは、(サブ)マスタテープの劣化によるものではなく、明らかにスクラッチノイズの類のように聞こえます。
おそらく、今回の発売延期はその辺りの音質の詰めで、発売元のキングがかなりだめ出しをしたのではないでしょうか。
その結果として、かつてのような粗悪な復刻とは一線を画すものになっていますが、シャルランの「完全ワン・ポイントのむせかえる香り高き録音」が再現されているかと言われれば疑問です。個人的評価は70点程度でしょうか。
しかし、その辺りのいろんな事情を勘案すれば、これが「限界」かとも思えます。
残念ながら、シャルランの偉業は完全に失われてしまったと言わざるを得ないようです。
はじめまして。mknと申します。このシリーズ、やはり「板起し」だったようですね。
ところで昨春、大阪四天王寺の古本市でベルリオーズ「葬送と勝利の交響曲」(ドンディーヌ指揮)のCDを購入しました。私の装置では滅多にないことですが、二本のスピーカーの外やら上やらに金管が響き渡るので驚いて解説を見たところエンジニアがシャルランでした。「偉業は完全に失われ」とお嘆きですが、1950年代のエラートやパテでかなりの録音に携わったそうなのでわずかながらその片鱗は今でも偲ぶことはできそうです。