コルト&ワルシャワ・フィル再説

コルト&ワルシャワ・フィル:ベートーヴェン交響曲全集
 少し前に奥歯に物が挟まったような言い方になったので、もう一度3番?7番をザッと聞いてみました。
 やはり、率直な感想として、「こんな演奏、昔はどこでも聞けたよな!」です。こう言っては失礼かもしれませんが、これが30年前にリリースされたものならあまり話題にもならなかったでしょう。
 ユング君の好みからいっても、4番や6番は音楽の流れが重くなる部分もあり、それがどうにもしっくりきません。
 3番と5番は確かに堅実で,そして十分にアツサも感じとれる演奏で好ましく感じられますが、歴史的録音にどっぷりとつかっているユング君には平均点クラスの演奏です。悪くはないですが、過去の遺産を押しのけて存在を主張するには至っていません。
 ただし、古楽器による軽ーいベートーベンばかり聴いていて、ベートーベンとはそう言うものだと教えられて育ってきた人には(^^;;、かなり刺激的な演奏に聞こえるのかもしれません。
 そして、これが一番残念なことなのですが、今どき(と言っても、録音されたのは10年以上も前にのことですが・・・)こういうベートーベンをある意味恥ずかしげもなく、躊躇いもなく、堂々と演奏できる組み合わせはもしかしたらここしかいない!ということに愕然とさせられます。
 昔はどこでも聞けたベートーベンが、今やこの組み合わせでしか聞くことができないのではないか?という問いかけは、ちょっと恐ろしいものがあります。
 ただし、一部で高い評価を与えられ話題にもなった演奏に対して、誉めているのか貶しているのか分からないような書き方をしているのですが、最後にこれだけはハッキリと言っておきしょう。
 7番は絶品です!!
 これは文句なしに素晴らしい演奏です。そして、過去の偉大な遺産の中においてもその存在価値が失われることのない演奏です。
 この作品が、かくも深々とした呼吸の中で演奏されるのを聞いたことがありません。そして、その深い呼吸に裏打ちされたテンポは、聞き手に「絶対にこれしかない!」と思わせる強い説得力があります。これは押しても引いてもビクともしないクレンペラーの演奏にしなやかさと柔軟さをつけ加えたと表現すれば、ある程度想像がつくのかもしれません。
 フルトヴェングラーなどに代表される、「狂」的なアツサや凄みはありませんが、聞き進むにつれて次第次第に盛り上がっていく様はなかなかに感動的です。

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