アニー・フィッシャー/EMI録音集

アニー・フィッシャー/EMI録音集

EMIのイコン・シリーズは忘れ去られようとしている演奏家の中から忘れ去ってはいけない存在を選び出し、その業績を概観できるようにボックス盤にまとめてリリースするというのがポリシーらしいです。
もちろん、そんなことをEMIが謳っているわけではなく、あくまでもそう言う方向でシリーズをさらに充実させてほしいという希望も含めた私だけの定義付けです。

しかしながら、そう思わせるようなシリーズに「イコン」とネーミングしたのはなかなかのセンスです。
もともと「イコン」とは「キリストや聖人、天使、聖書における重要出来事やたとえ話」の事を示す言葉のようで、やがてそう言う出来事やたとえ話を絵にしたものも「イコン」と呼ばれるようになったのです。
そう言う意味で言えば、このアニー・フィッシャーの録音こそはクラシック音楽における「イコン」です。

彼女はヨーロッパ各地で活躍しながらも、なくなるまでブダペストを拠点として活動していたために録音の数は多くありません。また、今の売れっ子ピアニストのように世界中を演奏旅行で駆け回るというのは嫌いだったようで、大西洋を渡って渡米したのは生涯に2度という「出不精」も死後の忘却につながったようです。
もっとも、「知っている人は知っているわけで」、さらにそう言う人は彼女のことを「高く評価」しているのが一般的なので、「忘却」などと言えば「何をふざけたことを!!」と言われそうですが、一般的に見れば、「Who is a Annie Fischer?」なんだと思います・・・、ご容赦あれ。

しかしながら、その数少ない渡米経験で協演したのがセル&クリーブランド管というのですから「ただ者」ではありません。クレンペラーとも親好があり、同郷のショルティが「ハンガリー最高のピアニスト」と讃えた話も有名です。
セル・クレンペラー・ショルティですから、まさに「猛獣使い」みたいなもんですな。
極めて貴重なボックス盤です。

[収録作品]

Disc1
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
・ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488

 フィルハーモニア管弦楽団
 サー・エードリアン・ボールト(指揮)
 録音:1959年

Disc2
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467
・ピアノ協奏曲第22番変ホ長調 K.482

 フィルハーモニア管弦楽団
 ヴォルフガング・サヴァリッシュ(指揮)
 録音:1958年

Disc3
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595

 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
 エフレム・クルツ(指揮)
 録音:1966年

Disc4-5
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ集
・第8番ハ短調 Op.13『悲愴』
・第14番嬰ハ短調 Op.27-2『月光』
・第18番変ホ長調 Op.31-3
・第24番嬰ヘ長調 Op.78『テレーゼ』
・第21番ハ長調 Op.53『ワルトシュタイン』
・第30番ホ長調 Op.109
・第32番ハ短調 Op.111

 録音:1957-1961年

Disc6
シューベルト:
・即興曲集 D.935~第2番
・即興曲集 D.935~第4番
・ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960
 録音:1960年

・シューマン:幻想曲ハ長調 Op.17
 録音:1958年

Disc7
シューマン:
・謝肉祭 Op.9
・子供の情景 Op.15
・クライスレリアーナ Op.16

 録音:1957年、1964年

Disc8
・シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 Op.54
・リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調 S.124, R.455
 フィルハーモニア管弦楽団
 オットー・クレンペラー(指揮)
 録音:1960-1962年

・バルトーク:ピアノ協奏曲第3番 Sz.119
 ロンドン交響楽団
 イーゴリ・マルケヴィチ(指揮)
 録音:1955年

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