TPP交渉に伴う著作権の保護期間の延長について(1)

TPP交渉という訳の分からない(交渉の内容を一切公開しないため)もののために、著作権保護の期間が70年に延長されそうだと言うことで、随分多くの方々からご心配のメールをいただいています。これで、このサイトも今後20年間、新しい音源の追加が出来なくなりそうだという声もいただいています。
しかしながら、正直なところ、この交渉で保護期間が延長されてもあまり困ることはないな・・・と思っています。

ただし、これもまたいい機会ですので、この著作権を巡る問題についての私なりの考えをまとめておきたいと思います。そして、何故困らないかについては順を追って説明していきたいと思います。

最初のボタンが掛け違っている・・・この時点でお話にならない。

著作権の問題をについて話をすると、必ず「お金」の問題が絡んできます。例えば、メールをいただいた方から教えてもらった新聞記事を読んでみてもこんな感じです。

「70年に統一されれば、日本はTPP参加国の著作物を利用するときは、著作権使用料を20年長く払わなければいけなくなる。日本の使用料の国際収支は米国を中心に2013年で約6200億円の赤字となっており、赤字幅は拡大する見通しだ。」
「保護期間が「70年」になると、米国に有利に働くという見方が強い。米国は「ミッキーマウス」や「スーパーマン」など長期にわたり世界中で使われるコンテンツを多く持つからだ。著作権に詳しい福井健策弁護士によると、現行の制度なら「くまのプーさん」の著作権は2017年に切れるが、保護期間の延長で延命することになるという。」
「著作権管理団体にとっては、「戦時加算」の解消によって、海外の音楽作品などを扱うハードルが下がるのはメリットだ。」

しかしながら、著作権法はその目的として第1条で次のように書いていることを忘れていけません。

第1条「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」

つまり、この法律は一部の著作権管理団体の既得権益をいかにして守るのかという観点では作られていないのです。ですから、50年から70年に延長するという措置が、そう言う一部団体にとっての損得勘定でジャッジされるという交渉のあり方自体が根本的に間違っているのです。大切なことは、その延長が結果として「文化の発展に寄与する」かどうかという観点で論議されなければいけないのです。
しかしながら、現実はその様なそもそも論などはどこかに吹っ飛んでしまい、何処まで行っても一部の著作権管理団体、もしくは一部の著作権者にとっての利益と権益をいかにして守るのかという観点でしか論議はされないのです。

ですから、こういう論議をすること自体が、何だかとてつもなく汚いものを触るような気持ちになるのです。

ただ、保護期間が50年から70年に延長されると言うことが「文化の発展に寄与する」のかと問われれば、答えは明らかに「NO!」です。
知的財産権のもう一つの柱である特許法では、その保護期間はわずか30年です。そして、この保護期間を延長しようなどという話は全く聞こえてきません。

それは二つの面で当然のことでしょう。
一つめは、そう言う特許権を長く囲い込むことは新しい技術開発の足枷にしかならないからです。
二つめは、特許料を払う側が、安易な保護期間の延長を許さないからです。つまりは、特許権と著作権を較べてみれば、前者では権利の対価を支払う側も力を持っているので、権利を持っている側が一方的に保護期間を延長することは出来ないのです。

そして、この観点を著作権に当てはめてみれば、この延長問題の本質が何となく見えてきます。
一つめは、著作権を延長して多くの文化的所産を檻の中に飼い殺しにすることは文化の発展にとって足枷にしかなりません。これは明らかです。
しかしながら、二つめとして、著作権管理団体からすれば著作権料を払う側の存在などは「虫けら」みたいな存在です。たとえ、その虫けらどもがどれほどの正統な論理で反論をしても、彼らはそれを無視し続けることに何の痛みも感じないのです。
情けない話ですが、それが現実の力関係です。

しかしながら、忘れていけないのは、法というものは、それが持っている本来の精神を失ってしまえば、その安定性と正当性は揺らがざるを得ません。
現状でもその正当性と安定性はかなり揺らいでいます。

国内の一部著作権管理団体(えーい、まだるっこしい!! JASRACの事です^^;)は、一貫して著作権の保護期間を現行の50年から70年へ延長することを主張し続けていました。しかしながら、その主張の正当性はきわめて疑わしいために、何度論議のテーブルに上げてもその実現は阻まれてきました。
それだけに、彼らは今回のTPP交渉という「外圧」を絶好の機会ととらえているのでしょう。そして、一部報道によるとその「野望」は実現されようとしているようです。

しかしながら、この期間延長はただでさえ揺らいでいる著作権法の安定性と正当性をさらに危ういものにしてしまう恐れがあります。
そして、日本には昔から「一寸の虫にも五分の魂」という言葉があります。
英語にも「Even a worm will turn.」という言葉があるそうです。

虫けらにだって、合法的にやれる反撃の方法はいくらでもあるのです。・・・それは、次回に続く・・・です。