“1961&62年ステレオ録音。カラヤン2度目のベートーヴェン全集で、オーケストラとの良好な関係を反映した覇気にあふれた演奏がとにかくみごと。まだカラヤン色に染まりきらない時期のベルリン・フィルが、木管のソロなどに実に味のある演奏を聴かせているのも聴きどころで、ほとんど前のめり気味なまでの意気軒昂ぶりをみせるカラヤンのアプローチに、絶妙な彩りを添えています。”
ベートーベン交響曲全集 カラヤン&ベルリン・フィル(1960年代)(5CD)
カラヤンのベートーベン交響曲全集については、50年代のフィルハーモニア管とのお仕事をアップしたときに簡単にふれました。
そこで、50年代のフィルハーモニア管とのお仕事を
「カラヤンと言えば「俺が俺が」という自己主張が前面に出て、どんな作品を振っても全てがカラヤン色に染められてしまうものだと思っていただけに、このあまりにも謙虚なスタンスには正直言って驚かされました。そこには「帝王カラヤン」のおごりは微塵もなく、ひたすらベートーベンの音楽に仕える真摯な姿がうかがえるだけです。」
と書き、
それに続くこの60年代のベルリンフィルとのお仕事に対しては、
「60年代の全集を貫いているあの快速テンポが、あまりにも正統的なチャレンジで完成させた50年代の全集に対する新たな挑戦であったことにも気づかされます。」
と、書きました。
そして、70年代の3回目の全集のことを、
「70年代の全集はベートーベンに対してもその様な美学(カラヤン美学)を適用したらどうなるかを問うたものでした。
ですから、70年代以降のカラヤン美学に惚れ込んだ人にとってはこの全集こそがベストだと断ずるでしょうし、私のような者にとっては出来れば敬遠したい録音だと言うことになります。」
と評し、さらに最後の80年代の録音に関しては
「こればかりは、いったいどの様な意味があって録音したのかは全くもって私には図りかねます。」と切って捨てています。
そして、
「個人的には50年代のフィルハーモニア管弦楽団との全集か、60年代のベルリンフィルとの全集が好ましく思えます。もしどちらか一つと言われれば録音の問題もありますので一般的にはベルリンフィルとの全集を選ぶんでしょうか。そう言えば、グラモフォンがSA-CD化にあたって選んだのもこの 1回目の全集でした。」
と、結論づけました。
もちろん、異論はあるでしょうが、今のところそれが私の結論です。
その全集5枚セットが、1500円で買えるとは・・・とんでもない時代になったものです。