まずは、「オーディオ ジコマン開陳」から。
これは文句なく面白かったです。
オーディオに何の興味がなくても「読み物」として充分楽しめる「面白さ」にあふれています。
そして、読み終わったあとにしみじみと、「アホ」って素敵だなと思わせられます。
ケチな金持ちというのは見てくれがよくありません。ましてや、金ぴかのブランド品を誇示して自分の金持ち度を誇示するような方々は、見ている方が恥ずかしくなります。(まあ、貧乏人のひがみですが・・・^^;)
しかし、かくもアホウなことに散財の限りをつくしている金持ちを見ることは決して悪い気分ではありません。
特に面白かったのは、「ダブル・ウーハーズ」なる集団です。入会資格は「JBL43350シリーズのオーナーで、JBLのダブルウーハーなら社外箱でも可」ということで、基本的には物量投入こそが尊いという集団らしいのです。
どなたかがコメントしていただいたように、「1ビットの差も分かるアホで神経質な」PCオーディオ派とは対極にある人たちです。
しかし、「やるとなったらとことんやってみないと気が済まない」という点では基本的なベクトルが同じですから、痛く共感をしてしまいました。
ただ、投入できる資金量には大きな違いがあるので、結果としての「凄味」には雲泥の差があります。もちろん、「お金持ち」の方も多いようですが、中には人生破綻しても・・・という方もおられるようで、そう言う方こそ「アホ」の極みなのでしょう。
ちなみに、私はここで何度も「アホ」という言葉を使っていますが、「ダブル・ウーハーズ」においては「最上、最高の賞賛」を表す言葉として使われているそうで、まさにそのあたりにこの集団の「本質」がうかがえます。
次に興味をひかれたのは、筆者の田中氏が「ウッドウイル」なる工房に発注した超弩級スピーカーの制作記。
ヤワな工作機械では歯がたたないほど固いハードメープルの無垢材で「JBLの大型3Way ホーン形システム」を制作するのですが、いやあ、実に「壮絶」のひと言です。
そして、この中で少しだけふれられていたウッドウイルの標準作品もサイトの方で確認してみると、これまた実に惚れ惚れするほど「美しい」ので、私の中で「欲しい、欲しい」の虫が動き出してしまって困っています。
特に魅力的だったのは通称「ウィング」と名付けられたこのスピーカー。
美しいスピーカーは音も絶対に美しいと思っていますので、きっと素晴らしい音で鳴るだろうなと思わせられます。本体とスタンド、サランネットこみで60万円程度です。実に微妙な値段。何が微妙ってですか?そりゃあ決まってるじゃないですか、買うには少しばかりの決心と根回しが必要な額なのですが、手が出ないような価格ではないというあたりが微妙なのです。
最後に、やはりな・・・と思ったのが、こういう世界にもPCが進入を開始していることです。入力系にPCを使っている人が何人かいて、こういう世界は今でも頑なにみんなアナログプレーヤーを使っているのだろうという先入観を打ち破ってくれました。
さらに、やはりデジタルの世界はこういう方向にいくんだなと確信させてくれたのは「DEQX」なるシステムです。簡単に言えば、かつてFrieve Audioの紹介でPCならばデジタル情報もブラックボックスではなくなるとして紹介した「音響特性の測定と自動補正」をより高い次元で実現しようというものです。
オーディオの業界はすでに瀕死と思っていたのですが、意外なほどにアホウな男は生き残っているようで、まだまだ捨てたものではないようです。
ぼくのオーディオ ジコマン開陳 ドスンと来るサウンドを求めて全国探訪 (P-Vine Books)