読後報告?PCオ-ディオfan2

瀕死の状態だと思っていたオーディオ業界が少しですが活気が出てきています。キイワードは「PCオーディオ」です。
昨年発売された「PCオ-ディオfan」という雑誌が想像をはるかに超える売れ行きだったそうで、あちこちで「品切れ」が続出したそうです。もっとも、この御時世、オーディオ関連の雑誌なんて売れたところでたかがしれていますし、ましてや未だにマニアックな存在だと思われていた「PCオーディオ」の雑誌ですから、印刷した部数がかなり少なかったという噂も流れています。
しかし、版元にすれば、この反響は想定外だったようで、1年も経ずして「PCオ-ディオfan2」が発売される運びとなりました。
私は、今年の正月に「後年、2010年はPCオーディオの元年だったと思い出されるような年になるんではないかと思われます。この年を境に、それ以前は「B.C」、それ以後は「A.D」と記述されるでしょう。」と予想しました。私の予想はたいていは全くあてにならないのですが、この「PCオーディオ元年」という言葉があちこちで登場するので、もしかしたらこの予想だけは珍しくも当たるかもしれません。
そう言うわけで、この「PCオ-ディオfan2」にはかなりの期待をしていたのですが、読後の感想としては「期待はずれ」と言わざるを得ないものでした。
おそらく、雑誌のコンセプトとしては、これからPCオーディオに取り組もうという初心者と、すでに取り組んでいる経験者を両にらみしているのでしょうが、結果としてはどっちつかずの中途半端な構成になっているように思えます。
まず、初心者に関しては、おそらく「難しすぎる」内容になっていると思います。
「PCオーディオ元年」というかけ声はかなり広く行き渡ってきているように思えます。今まで、こういう分野には目が向いていなかった層も、「面白そうだな」と目を向け始めている雰囲気があります。最近頂くメールを読ませていただくと、そう言う雰囲気がヒシヒシと伝わってきます。
つまり、「PCオ-ディオfan」を発売した時期の「初心者」と、「PCオ-ディオfan2」を発売した時期の「初心者」では、同じ「初心者」でも、その「初心度」にかなりの開きが出てきています。編集者は「PCオ-ディオfanを入手できなかった人のために基礎知識のページは追補の上に再掲載したと書いていましたが、それはこの1年の変化をあまりにも読み切れていない姿勢だと言わざるをえません。
今トップページで、「自宅のCD、リッピングした枚数は?」というアンケートをやっているのですが、その選択肢に「リッピングって何?」という選択肢を入れました。結果は、全体の40%程度が「リッピングって何?」でした。
これを見て、いくら「PCオーディオ元年」とかけ声を欠けても現実は厳しいと思う人もいるかもしれませんが、私は60%の人がリッピングを経験しているという事実に驚かされました。そして、頂くメールの内容を見てみると、「リッピングって何?」という人も、「PCオーディオ」という新しい潮流は興味をひく動きとしてうつっているようなのです。そして、やれるところからでも「PCオーディオ」に取り組んでみたいと思っている人も少なくないのですが、思い切って踏みこんでみるには今ひとつ敷居が高いと感じているようなのです。そう言う人々にとって、「PCオ-ディオfan」に掲載された基礎知識の内容では、敷居は依然として高いままと感じるのです。
つまり、「リッピングって何?」という層に最後の一歩を踏み出してみようと思わせるようなページが欲しかったのに、それが「再掲載」でとどまったのは実に残念でした。
さらに、経験者向きの内容も的外れになっているように思えます。
おそらく、この世界で今一番旬なのは「ジッター」の問題と「電源」に関わるトライでしょう。しかし、この旬の話題に切り込んだページは皆無でした。
個人的にはこの点が一番ガッカリでした。
たしかに、Mac、Windows、Linuxという3つのOSによる音質の違いを取り上げたページや、MSの技術者を招いてのWindows7の音声システムに関わるインタビューなどは興味深いものでしたが、内容的にはどちらも消化不十分な思いが残りました。
「PCと英語にとことん弱い筆者がMAJIC DSの初期競って挑む」というページなんかは、すったもんだの末に「日本語のマニュアルがありました!」では笑うしかありません。
とまあ、かなり辛口な感想になりましたが、「PCオーディオ」普及に果たしたこの版元の役割には敬意をはらっています。今回は、いささか残念な内容だったと思うのですが、この世界を牽引していく役割を果たせるだけの蓄積はあると思います。
次回を期待したいと思います。
<追記>
今回「PCオ-ディオfan」と「PCオ-ディオfan2」を較べてみて、紹介されている機器が大幅に増えていることに驚かされました。また、そのポリシーも百花繚乱で、そう言う機器のカタログとしては結構魅力的でした。
それから、付属のハイレゾ音源は音質チェックのためにはかなり有効だと思いました。クラシック絡みではバッハの無伴奏チェロ組曲からの数曲がおさめられています。教会に広がるチェロの音色は魅力的ですが、演奏そのものは「お粗末」・・・とまでは言わないものの、あまり好きな演奏ではありませんでした。

6 comments for “読後報告?PCオ-ディオfan2

  1. 題名のない子守唄
    2010年5月3日 at 1:03 AM

    >全体の40%程度が「リッピングって何?」でした。
    お年寄りや若い女の子で、リッピングという単語は知らないけど、リッピング自体は日常やってるって人は多いです。そういう人達の間ではリッピングのことを単に「iTunesに保存する」とか「iTunesに曲を入れる」と言います。ですからパソコン持っててリッピングという行為をやってる人はおそらく90%以上はいると思います。

  2. 2010年5月3日 at 11:32 AM

    はじめまして、hamondと申します。
    知人から「PCオーディオ実験室」を教えていただき、
    興味深く読ませていただきました。
    現在私はWindowsXPにCubase studio4を使用しています。
    インターフェイスはfireface800からPRISM SOUNDのOrpheusへ移行いたしました。再生音のブレークスルーを目指してLinuxへの乗り換えも視野にいれてはいますが、なにぶんPC音痴のため日和見状態です。
    今後のユング様の記事を楽しみにしております。
    突然のコメントで失礼いたしました。

  3. ユング君
    2010年5月3日 at 11:13 PM

    あれ?hamondさんって、どこかでお聞きしたことがあるハンドルネーム・・・と思って、サイトをクリックしたら、「ファイティングオーディオ」・・・Googleリーダーに登録させていただいて、いつも、更新をチェックさせて頂いております。
    前号の「PCオ-ディオfan」に登場されていたのもしっかり確認させてもらっています。
    そう言えば、今日は妻の誕生日だったのでスイスホテルに食事に行って、その後解散して2時間の自由行動で日本橋をうろついておりました。その時、お店の前を通ったような・・・気がします。(ヾ(゚ロ゚ )オィッ・・・それが、どうした・・・影の声)
    ただ、うろついていたのは目的があってのことで、昨日、Linuxでオンキョーのインターフェイスが簡単に認識されたので、最近巷で評判のいい「ND-S1」を入手しようと思ったのです。なかなか現物を置いてあるお店がないので、ネットで注文するしかないかなと思ったのですが、やっとこさ上新の片隅で見つけて1万3500円で買いこんできました。(ちょっと高かったかな?)
    さて、夕方帰ってきて専用PCの方に早速接続したのですが、やはり想像通り、いとも簡単に認識してくれました。
    音の方は、これまた想像通り、Windowsで再生したときとは全くテイストの異なる音色ですね。
    それと、巷の評判通り、「ND-S1」は1万円ちょっとのインターフェイスとしては「驚愕」のクオリティを持っていることも確認できました。
    ただ、残念ながら、Firewire接続のインターフェイスは敷居が高いようですね。
    これは、メーカー側がドライバーを提供する気になるか、もしくはLinuxのコミュニティの方がドライバーを開発するか、そのどちらかを「待つ」のが正解のようです。
    ああ、Linuxでfireface400を認識させて再生させれば、どんな世界を見せてくれるのでしょう。
    ただし、Windowsとはホントに雰囲気の違う世界を描いてくれるので、これは「遊び」としては結構面白そうです。「ND-S1」とLinuxで当分遊べそうです。
    とはいえ、世間一般の人からすると、あまり興味はひかないのかな?と思っていたのですが、hamondさんのような方からこういうコメントを頂くと、Linuxでの音楽再生について詳しく報告しようかな、と言う気になりますね。
    コメント、ありがとうございました。

  4. hamond
    2010年5月4日 at 12:33 AM

    ユングさん(ユングさんとお呼びすることをお許しください)こんにちは。
    まさか昨日、私がユングさんの指南書を片手にパソコンをいじっていたまさにそのとき、ユングさんが表を歩いていらっしゃったとはなんたる奇縁でありましょうか。ちょっと覗いていただければご本尊様から直接指導していただけたのに・・・と残念な思いですが、次回もし近辺にお寄りの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。
    fireface400UCならLinuxでの音楽再生は楽にできるのかもしれませんが、いまさら購入もできません。
    ただ、杞憂かもしれませんが今後IEEE 1394の規格自体が存続するのかどうかも心配です。
    fireface800を使用していたときは1394b接続で安定していたのに、Orpheusでは1394bも使えなくなり、それも残念なことです。
    まあなにはともあれ、私は電源やケーブルいじりしかできませんので、ユングさんの今後のご活躍に期待しております。
    よろしくお願いいたします。

  5. hamond
    2010年5月4日 at 12:44 AM

    あ、すみません。
    あとさきになりましたが、拙ブログを閲覧していただきまことにありがとうございます。
    最近はネタ切れ息切れ・・・とお恥ずかしい状況ではありますが、今後ともよろしくお願いいたします。
    ではお騒がせいたしました、失礼いたします。

  6. ユング君
    2010年5月5日 at 7:41 PM

    >次回もし近辺にお寄りの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。
    はい、今度日本橋にいったときには是非ともお邪魔したいと思います。そのこころは・・・電源強化した「Orpheus」の音を聞いてみたい・・・です。
    >ただ、杞憂かもしれませんが今後IEEE 1394の規格自体が存続するのかどうかも心配です。
    いやぁ、これは「杞憂」ではないかもしれませんね。世は「USB DAC」の方向に雪崩をうっていますからね。
    上新の一番館では片隅ですが「PCオーディオ」のコーナーができていましたが、主役は「USB DAC」でしたね。
    半年もすると一気にこのコーナーも広がっていると思いますね。お店の人もそんなことを言っていました。

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