2012年の生誕100周年を記念し、EMI CLASSISからリリースされていたチェリビダッケ・エディション、計48枚分が全4巻のお買得ボックスで登場します。
- 第1集 交響曲集~ベートーヴェン、ブラームス、シューマン、ハイドン、モーツァルト、シューベルト(14CD限定盤)
- 第2集 ブルックナー:交響曲集、テ・デウム、ミサ曲第3番(12CD限定盤)
- 第3集 フランス、ロシア音楽集(11CD限定盤)
- 第4集 宗教音楽、オペラ序曲集(11CD限定盤)
マルチバイ特価でそれぞれ2000円台ですから、これもまた口さがない言い方をすれば「叩き売り」の範疇にはいるのでしょう。
このセットのキャッチコピーですが、実に言い得て妙なのです。
「通常のオーケストラ演奏では考えられないほどの響きの繊細な美しさを獲得し、ときには超スローテンポで大胆にデフォルメ、作品解釈の可能性について改めて考えさせてくれることでも有名だったチェリビダッケのユニークな芸術に手軽に親しめる嬉しいシリーズです。」
おそらく、チェリビダッケを評価する人は、「響きの繊細な美しさ」や「超スローテンポで大胆にデフォルメ」した造形を高く評価するのでしょう。そして、評価しない人はまさにそれ故に評価しないのです。
彼の長所は同時に短所でもあったのですが、それが実にチェリらしいです。
チェリという人は、どのオーケストラを指揮しても、必ずその音色を自分の色に染めてしまう人でした。その意味では、彼ほどの独裁的な指揮者はそういるものではありません。
これと比べれば、セルなどは優しいものです。彼の録音を聞いてみると、ヨーロッパのオケに客演したときは、例えばコンセルトヘボウなどが典型ですが、そのオケが持っている音色までは消し去ろうとはしていません。
ところが、このチェリという指揮者は、どのオケに客演しても白昼夢のような繊細でガラス細工のような音色に変えてしまいます。
私が彼の海賊盤を探し回って聞いていたときは、その独特な音色を美しいと思い褒め称えたものですが、いろいろ聞いているうちに、こういうやり方に対して少しずつ疑問を感じるようになっていきました。
事情は「超スローテンポで大胆にデフォルメ」する彼の造形に対しても当てはまります。
つまりは、彼の美点と持ち上げる部分が、逆に彼のを否定する根拠ともなるのです。
おおそらく、彼が変にへそなど曲げず、素直に録音活動を行っていれば、カラヤンの衰えと同時に「カリスマ候補」として名前が挙がったかもしれません。
しかし、あのチェリがレコード会社から「カリスマ」に祭り上げられて踊っている姿というのは「見たくなかった」という人が多いでしょうから、それはそれでよかったのかもしれません。
そして、金に困った(そう言う説が流れていますね)子どもたちが勝手に版権を売り渡した録音が、こういう形で「叩き売り」されるのを見て、皮肉な笑いを浮かべているのかもしれません。
「俺の芸術はそんなプラスチックの円盤から分かるものか!」
安いんだから4つ全部買えと言われそうですが、強いて言えばどのセットがオススメですか? 個人的にはリスボン・ライブの超名演!ブル8だけ持っておけばチェリのブルックナーはいらないと思っているので、なんだか買っても全然聴かずに死蔵してしまいそうなのです。
チェリのブル7(EMI1994)も期待はずれでしたし、ストックホルム・レコーディング(DG)もデュ・プレとのチェロ協奏曲以外は感心しなかったですし・・・
全くの個人的な好みですが「第3集 フランス、ロシア音楽集(11CD限定盤)」あたりが一番目を引きます。
ブルックナーはバラでほとんど持っているという事情もありますが・・・。
この第3集だけは注文しようかどうか、悩み中です・・・って、たったの2000円ちょっとなんだから「変えよ!」という声が聞こえそうですが・・・。
そうですね。単発盤で評判の良かった展覧会の絵、シェエラザード、チャイコの5番だけでも元が取れるのですから「第3集 フランス、ロシア音楽集(11CD限定盤)」で行こうと思います。ご助言ありがとうございました。
「レコード芸術」の記事で時々取っておけば良かったと思うものがありますがその一つにチェリビダッケがミュンヒェンpoと来日した折の取材記事があります。うろ覚えですがおもしろいなと思った発言が二つ。
「誰もがミュンヒェンに来られるわけではない。これはそのための土産のようなものだ(録画と発売を認めたことについて)」
「楽器だけのアップは止めてくれ。しかしそれ以外は君たちの普通のやり方でやってもらって良い(録画方法への質問について)」
何だ、意外に普通じゃないかと思いました。もう一つ、録音に対して録画にはそれほど抵抗を持っていないのではないかとも思ったものです。ひょっとすると視覚が入らないと音楽鑑賞としては完成しないと考える人だったのではないでしょうか。
例えば「展覧会の絵」の「大門」は他に例を見ないくらいの大伽藍を築き上げていますがそれはグランカッサをずらすのを典型にいろいろな手練手管を繰り出しているからだと思います。聴覚だけで冷静に鑑賞されるとそのネタがばれてしまうが視覚が入るとある意味注意が逸らされてマジックが完成する、それでなければ音楽ではない、そのように考えていたのではないでしょうか。
ところで彼の写真、結構写真写りを気にしているように見えませんか?なんだかカラヤンとは近親憎悪の関係だったような気もするのですが…(また暴走)。
「フランス&ロシア集11CD」買って来ました。税込2,890円也。@262円
聴き所だけサラっと聴いた限りでは、以下の楽曲は結構聴き応えありました。
①バルトーク:管弦楽のための協奏曲 – 5. Finale、
②ムソルグスキー:展覧会の絵 – 15.キエフの大門
③チャイコフスキー:交響曲 No.4 – 4. Finale
④ラヴェル:ボレロ
しかし、「シェエラザード」とチォイコの5番は期待はずれでした。
早晩 iTunesの肥やしになるものと思います。