クリフォード・カーゾン デッカ録音全集

カーゾン/コンプリート・デッカ・レコーディングズ(23CD+1DVD)

内的な心に響く音楽を作り出したピアニスト

イギリスのピアニスト、クリフォード・カーゾン。シュナーベルのもとで研鑽を積み、1939年のアメリカ・デビューで大成功を収めて以来、欧米での評価が格段に上がり、生涯、神のごとく尊敬を集めました。録音嫌いだったために、残された数少ない録音は一枚一枚が貴重な宝物といえます。

師匠シュナーベルと同様、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスなどドイツ=オーストリア系の作品を得意とし、その透明な音色と品格ある音楽性で圧倒的な支持を得ました。ブラームス、シューベルト他のアルバムでも、作品の隅々までを知り尽くし、最高の理想を追い求めるアーティストのみが実現できる、心に深く響く音楽を聴かせてくれます。

カーゾン/コンプリート・デッカ・レコーディングズ(23CD+1DVD)
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カーゾンと言っても、今となっては知る人ぞ知るピアニストになってしまいました。バックハウス、ケンプ、ゼルキン、ルービンシュタイン、ホロヴィッツなどは今でもビッグネームですが、カーゾンの認知度は彼らと比べるとかなり落ちてしまいます。
しかし、それは、カーゾンが彼らと比べると一段も二段も格が落ちると言うことを意味していません。
この認知度の低さは、ひとえにカーゾンの「録音嫌い」に起因しています。

もしも、カーゾンがデッカの名プロデューサーであったジョン・カルショーと友人でなければ、そして、カルショーがいやがるカーゾンを強引に録音スタジオに拉致してこなければ、おそらくはこの偉大なピアニストの名前は永遠に記憶から消え去っていたことでしょう。
カーゾンの特徴は、何よりも絶妙なタッチから紡ぎ出される音色の美しさでした。カルショーは、その美しいピアノの音色を録音ですくい取ることは、「空を飛ぶ小鳥を素手で捕まえようとするようなものだ」と語っていました。
さらに、カルショーはカーゾンのことを「大惨事を鞄に入れて持ち歩いているようなピアニスト」だともぼやいています。
とにかく、彼はどこか浮世離れしたようなノーブルなジェントルマンであり、同時に「持っている」人でもあったようです。

例えば、彼が密やかに、最高の美しさでピアニシモで演奏していると突然ホールの照明が落下したり、無事に録音が終わった後にプレイバックしようと思うと担当が間違って録音ボタンを押してしまって全てを消去してしまうとか・・・です。
はては、彼が乗った客車だけが鉄道会社のミスで切り離されて行方不明になったこともあるそうです。

今回、そのような「大惨事」を乗り越えて(^^;残された、カーゾンのデッカ録音が一気にボックス盤という形でリリースされるようです。リリースされるCDの一覧を眺めてみると、当然のことながらかなりのダブりがあります。ざっと見た感じ、ダブり率50%程度でしょうか。
ということで、これは躊躇いなく発注すべきボックス盤ですね。

それよりも、こうして一覧を見てみると、あの録音嫌いのカーゾンを使って、よくぞこれだけの録音が残ったものだと感心させられます。
カルショーに感謝あるのみです

<収録作品>
CD1
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.73『皇帝』
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
 ジョージ・セル(指揮)
 録音:1949年9月(モノラル)

・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23
 ロンドン新交響楽団
 ジョージ・セル(指揮)
 録音:1950年9月(モノラル)

CD2
・シューベルト:4つの即興曲 D.935, Op.142
 録音:1952年12月(モノラル)

・シューベルト:ピアノ・ソナタ第17番ニ長調 D.850, Op.53
 録音:1963年6月(ステレオ)

CD3
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ジョージ・セル(指揮)
 録音:1964年12月(ステレオ)

CD4
・フランク:交響的変奏曲
・アンリ・リトルフ:交響的協奏曲第4番ニ短調 Op.102
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
 エイドリアン・ボールト(指揮)
 録音:1955年、1958年(ステレオ)

・ファリャ:スペインの庭の夜
 ロンドン新交響楽団
 エンリケ・ホルダ(指揮)
 録音:1951年7月(モノラル)

・アラン・ロースソーン:ピアノ協奏曲第2番
 ロンドン交響楽団
 マルコム・サージェント(指揮)
 録音:1951年10月(モノラル)

CD5
・シューベルト:幻想曲ハ長調『さすらい人』(リスト編曲版)
 クイーンズ・ホール管弦楽団
 ヘンリー・ウッド(指揮)
 録音:1937年4月(モノラル)

・モーツァルト:ピアノ四重奏曲第1番ト短調 K.478
・モーツァルト:ピアノ四重奏曲第2番変ホ長調 K.493
 アマデウス四重奏団メンバー
 録音:1952年9月(モノラル)

CD6
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
 ナショナル交響楽団
 ボイド・ニール(指揮)
 録音:1945年12月(モノラル)

・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
 ナショナル交響楽団
 エンリケ・ホルダ(指揮)
 録音:1946年1月

CD7
・チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番変ロ短調 Op.23
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ゲオルク・ショルティ(指揮)
 録音:1958年10月(ステレオ)

・ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 Op.18
 ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
 エイドリアン・ボールト(指揮)
 録音:1955年6月(モノラル)

CD8
・グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 Op.16
 ロンドン交響楽団
 エイヴィン・フィエルスタート(指揮)
 録音:1959年6月(ステレオ)

・ブラームス:ピアノ協奏曲第2番変ロ長調 Op.83
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
 録音:1955年7月(モノラル)

CD9
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番ト長調 Op.58
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
 録音:1954年4月(モノラル)

・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調 Op.73『皇帝』
 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)
 録音:1957年6月(ステレオ)

CD10
・シューベルト:4つの即興曲 D.899, Op.90
 録音:1954年6月(モノラル)

・モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
・モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491
 ロンドン交響楽団
 ヨーゼフ・クリップス(指揮)
 録音:1953年10月(モノラル)

CD11
シューマン:
・幻想曲ハ長調 Op.17
・子供の情景 Op.15
 録音:1954年3月(モノラル)

・シューベルト:幻想曲ハ長調『さすらい人』 D.760, Op.15
 録音:1949年7月(モノラル)

CD12
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム(指揮)
 録音:1953年5月(モノラル)

・グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 Op.16
 ロンドン交響楽団
 アナトール・フィストゥラーリ(指揮)
 録音:1951年10月(モノラル)

CD13
リスト:
・ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
・『愛の夢』第3番変イ長調 S.541-3
・忘れられたワルツ第1番嬰ヘ長調 S.215-1
・演奏会用練習曲第2番嬰ヘ短調『小人の踊り』 S.145-2
・子守歌 S.174
 録音:1963年9月(ステレオ)

CD14
・ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番イ長調 Op.81
・フランク:ピアノ五重奏曲ヘ短調
 ウィーン・フィルハーモニー弦楽四重奏団
 録音:1962年、1960年(ステレオ)

CD15
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第23番イ長調 K.488
・ピアノ協奏曲第24番ハ短調 K.491
 ロンドン交響楽団
 イシュトヴァン・ケルテス(指揮)
 録音:1967年10月(ステレオ)

CD16
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第26番ニ長調 K.537『戴冠式』
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
 ロンドン交響楽団
 イシュトヴァン・ケルテス(指揮)
 録音:1967年12月、10月(ステレオ)

CD17
・ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調 Op.15
 ロンドン交響楽団
 ジョージ・セル(指揮)
 録音:1962年6月(ステレオ)

・ブラームス:愛の歌(18のワルツ、4声と4手ピアノのための) Op.52
・ブラームス:新しい愛の歌 Op.65~『さて、ミューズよ』
 イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)
 キャスリーン・フェリアー(アルト)
 ユリウス・パツァーク(テノール)
 ホルスト・ギュンター(バリトン)
 ハンス・ガルピアーノ(ピアノ)
 録音:1952年9月(モノラル)

CD18
・シューベルト:ピアノ五重奏曲イ長調 D.667, Op.114『ます』
 ウィーン八重奏団員
 録音:1957年10月(ステレオ)

・ブリテン:序奏とブルレスク風ロンド Op.23-1
・ブリテン:マズルカ・エレジアカ Op.23-2
 ベンジャミン・ブリテン
 録音:1944年1月(モノラル)

・ウィレム・ペイペル:交響曲第3番
 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
 エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム(指揮)
 録音:1953年5月(モノラル)

CD19
・シューベルト:即興曲 D.899, Op.90-3&4
 録音:1963年6月(ステレオ)

・シューベルト:即興曲変イ長調 D.935-2
・シューベルト:楽興の時 D.780, Op.94
・ベートーヴェン:『エロイカ』の主題による15の変奏曲とフーガ変ホ長調 Op.35
 録音:1971年2月、4月(ステレオ)

CD20
・ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番ヘ短調 Op.5
・ブラームス:間奏曲変ホ長調 Op.117-1
・ブラームス:間奏曲ハ長調 Op.119-3
 録音:1963年12月(ステレオ)

・シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960
 録音:1972年11月(ステレオ)

CD21
モーツァルト:
・ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
・ピアノ協奏曲第27番変ロ長調 K.595
 イギリス室内管弦楽団
 ベンジャミン・ブリテン(指揮)
 録音:1970年9月(ステレオ)

CD22
・ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ ト長調 Op.129
・メトネル:4つの抒情的断片 Op.23-3
・リスト:ペトラルカのソネット第104番
・ブラームス:カプリッチョ ロ短調 Op.76-2
・ブラームス:間奏曲ハ長調 Op.119-3
・ブラームス:間奏曲変ホ短調 Op.118-6
・ブラームス:ラプソディ第2番ト短調 Op.79-2
・ブラームス:間奏曲変ホ長調 Op.117-1
・リスト:メフィスト・ワルツ第1番 S.514
・リスト:『愛の夢』第3番変イ長調 S.541-3
・ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調
 録音:1942~1949年(モノラル)

・ファリャ:スペインの庭の夜
 ロンドン新交響楽団
 エンリケ・ホルダ(指揮)
 録音:1945年9月(モノラル)

CD23
・『BBCインタビュー』(「師シュナーベル、ランドフスカの思い出」「無人島への一枚」について語る)
 録音:1973年、1978年

DVD【BBCリサイタル】
・シューマン:子供の情景 Op.15
・ブラームス:カプリッチョ ニ短調 op.116-1
 収録:1959年(モノクロ)

・シューベルト:『楽興の時』第3番 D.780
・シューベルト:即興曲第2番変イ長調
・シューベルト:ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D.960
 収録:1968年(カラー)

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