“ジュリーニ引退後、唯一の演奏
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
伊オルケストラ・ジョヴァニレ・イタリアーナ自主制作盤”
こういうCDが突然飛び出してくるんですね。
ジュリーニという人は本当に自己批判力が強かったようで、自分が納得できない指揮しかできなくなったらキッパリと引退してしまいました。
指揮者というのは肉体的制約が少ないので、年をとってよれよれになっても「老大家の枯れた芸」などともてはやされると、ズルズルと「老醜」をさらしてしまうことが多い人種です。ですから、ジュリーニのような潔い態度は希有です。
そして、かくまでに自己批判力が強い人物ですから、引退した後も「甘い誘い」などには一切のらず、断固として指揮台には立たなかったのがジュリーニという男です。
ところが、今回突然飛び出したこのCDは、そんなジュリーニが己に課した禁をたった一度だけ破って指揮台に立ったときの記録です。
では、何故にジュリーニは禁を破ったのか?それは、指揮をしたオケを見れば分かります。
ご存知の方も多いと思うのですが、イタリアというのは「オペラの国」「歌の国」ですから、いわゆるコンサートオーケストラは極端に少ない国です。しかし、クラシック音楽を享受していく上ではそれはいささか都合が悪い話であって、最近になって行政が中心となってその是正に乗り出してきています。
今回、ジュリーニが唯一禁を破って指揮台に立った相手である「オルケストラ・ジョヴァニレ・イタリアーナ」というオケは、コンサートオーケストラ養成のためにトスカーナ州が資金提供をして結成したオーケストラなのです。このオーケストラにはその様な趣旨に賛同してアバド、ムーティ、シノーポリ、ガッティというイタリア出身の錚々たるメンバーが指揮台に立っています。そして、ジュリーニ自身もそう言う若者たちへの教育目的ということもあって、引退後にたった一度だけこの指揮台に立ったのです。
この時の記録は、演奏会の後にプライベート盤という形でほんの少しだけ頒布されました。演奏そのものは指揮を終えたジュリーニが「ブラヴォ」という声を漏らしたのがハッキリと拾われているという優れものらしいです。
はたして買うべきか否か?
アリアCDの店主は
「おそらく10年後には幻の名盤としてファンの間で語り継がれることになるであろう。ゴリ押しは嫌いだが、これはおそらく持っておいたほうがよい。 」
と断言しています。
やはり買いか・・・?