緊迫の一手

“3月21日、コンピュータとプロ棋士の公開対局がついに実現した。対戦するのは将棋界の最高峰のひとり、渡辺 明竜王と「第16回世界コンピュータ将棋選手権」に優勝した“ボナンザ”。30年前に始まった将棋のプログラムは年々、改良され、プロ棋士と互角の勝負ができるほどになったのだ。対局のポイントは渡辺竜王の「ひらめき」や「直感力」にコンピュータが対抗できるかどうか。緊迫の一手を徹底解析してゆきます。”

大和証券杯特別対局ボナンザ戦。その2(当日編)
今日、再放送の方を見ました。
感動しました。
渡辺の精神力の強さにも感動しましたが、ボナンザの凄さにも心底感動させられました。勝負は、ギリギリの終盤でボナンザが間違えることで渡辺がかろうじて振り切った展開でした。
今まで、使えるソフト、感心させられるソフトはいくつもありましたが、心底感動を覚えたのはこのボナンザがはじめてです・・・って、将棋に全く関心のない人には何の事やら分からないですよね。
詳しいことは上記のリンクからたどってほしいのですが、長らくコンピューター将棋の力量はアマチュアの高段者止まりだと言われていました。実際、ユング君程度の棋力でも、少し前までだったらパソコンに負けることはほとんどありませんでした。
ところが、数年前に突然登場したボナンザというソフトには全く歯が立たないことに驚かされました。
とにかく攻めっ気120%でバンバン攻めてくるのが印象的でした。桂馬がどんどん飛んできて、ちょっと油断しているとあっという間に攻め潰されてしまいます。これは強いなぁ!と気を引き締めてその攻めをかわしていい勝負に持ち込んだと思うと、今度は一転して受けに回ります。この、一転して受けに回るというのは今までのパソコンソフトにはあまりなかったことで、その受けのしぶとさには驚嘆させられました。
そして、その受けに手こずっていると、今度は突然に反撃に転じてきて寄り切られるというパターンが続きました。
正直言って、アマチュア高段者の棋力では中盤をイーブンで通過したのでは絶対に勝てないと思いました。
それでも、プロの高段者と勝負形になるのにはまだまだ時間がかかるだろうと思われていました。今回のボナンザと渡辺の対戦もおそらくはあっという間に渡辺が寄り切ってしまうだろうと言われていました。しかし、現実は、ボナンザの力はほとんどの将棋関係者の想像を超えるものでした。
渡辺自身がブログの中で
「51手目▲6六角は見たことがない類の手ですがなかなかの手。僕らでは浮かばない手で、コンピュータが将棋の技術向上に一役買ったと言えると思います。それによって新手法、新手筋が増えていく可能性もあるのではないでしょうか。」と述べているほどです。
チェスの世界ではすでにスーパーコンピューターが人間を打ち破っています。しかし、取られた駒が再利用できないチェスでは手数が進むにつれて局面が簡略化していくのに対して、将棋の場合は駒の再利用というルールがあるためにそれほど簡単ではないだろうと言われていました。
しかし、今回のボナンザは局面をしらみつぶしにして最善手を探すのではなくて、その中から有力と思える手をチョイスしてより深く探索するという今までにないプログラミングを試みたとのことです。そのために、渡辺をして「一連の手順を見て今までのボナンザとは別人のように強いということが分かりました。」と言わしめるまでに成長していたのですね。
しかし、その選択的に手を選んでいくという手法が最後の最後でミスを犯すという「人間的」な面を見せてしまったのが実に印象的でした。
また、ボナンザは1秒間に400万の局面を探査する能力があるそうですが、よく訓練された人間の脳はそれを上回ると言うことも驚きでした。
プロ棋士にとっては避けたい対戦ではあるでしょうが、おそらくは避けて通れない対戦であることを強く印象づけた対局でした。