“作曲者が歿した1951年から翌52年にかけて収録されたシェーンベルクをふくむ、ジュリアード四重奏団による新ウィーン楽派の弦楽四重奏曲集。作曲者から高い評価と厚い信頼を獲得したオリジナル・メンバーによる不滅の録音が、ユナイテッド・アーカイヴスより完全初CD化となります。完璧をきわめた合奏精度、緻密で明快なアプローチ、そして多彩な表現は、以降、現代モノにめっぽう強いとの呼び声を決定的なものにしたのも当然というべき圧倒的な内容です。 初出時の衝撃がきわめつけの復刻によって鮮烈によみがえります。190分収録。”
シェーンベルク弦楽四重奏曲全集、他 ジュリアード四重奏団(3CD)
「United Archives」は歴史的録音の復刻を手がけるレーベルとしては最も楽しみなところですが、今回は何と新ウィーン楽派の作品を手がけてくれました。
特に、今回興味深かったのは、このメンバーが晩年のシェーンベルクを訪ねて演奏を披露したときのエピソードが紹介されていたことです。
「「シェーンベルクの予想した以上に、私たちの解釈はワイルドでした。そして、私たちが彼のために最初のカルテットを演奏すると、彼はそれが自分の予想もしていなかった解釈であると明かしました。わたしたちはショックを受けましたが、シェーンベルクは笑い出し、加えてこう云いました。『でも、そのように演奏してください、それでいいのです!』」
やはり、シェーンベルクもまた骨の髄までヨーロッパの人間だったのでしょう。
『でも、そのように演奏してください、それでいいのです!』というシェーンベルクの言葉がどれほど真意だったのか、今となっては確かめる術はありませんが、少なくとも彼自身がイメージした作品の姿はもっとたおやかなものだったのではないでしょうか。
もちろん、だからといってこの録音の価値が損なわれるものではありません。作品は創作者の手から離れてしまえば、歴史の中でいかようにも解釈される「宿命」を負うものです。これもまた、その様な宿命を負った録音だと言うことなのでしょう。
<収録された作品>
CD1
①シェーンベルク:弦楽四重奏曲第1番ニ短調Op.7
②シェーンベルク:弦楽四重奏曲第2番嬰ヘ短調Op.10
CD2
①シェーンベルク:弦楽四重奏曲第3番Op.30
②シェーンベルク:弦楽四重奏曲第4番Op.37
CD3
①ベルク:抒情組曲
②ウェーベルン:弦楽四重奏のための5つの楽章Op.5
③ベルク:弦楽四重奏曲Op.3
ジュリアード四重奏団
ロバート・マン(Vn)
ロバート・コフ(Vn)
ラファエル・ヒリアー(Va)
アーサー・ウィノグラード(Vc)
※CD1② ウタ・グラーフ(S)
録音:1950?1952年(モノラル)