宇陀(奈良 宇陀市)の一本桜(4)~仏隆寺の千年桜

写真は4月19日に撮影したものです。

ページの更新と時の流れが全く一致していないのですが(^^;、それだけ桜の花にせかされるように4月はあちこち飛び回ったと言うことです。しかし、まあ桜の開花情報を伝えたいという事が目的ではなくて、基本的には自分自身の覚え書きみたいなもので、結果として情報が蓄積されていけばいいというスタンスですので、まあ、そう言う細かいことは気にせずに更新を続けていこうかと思います。

宇陀というのは立派な一本桜の多い地方ですが、その中で一つを選べと言われれば迷うことなく「仏隆寺の千年桜」を選択します。

仏隆寺の千年桜

すでに多くの人が紹介していることなのですが、この桜はある時はエドヒガン、また別の時はヤマザクラと思われていたのですが、現在はエドヒガンとヤマザクラの自然交雑種である「モチヅキザクラ」と言うことになっています。そして、樹齢はおそらく900年という事なのですが、一般的にはきりのよい「千年桜」で通用しています
確かに「本郷の瀧桜(又兵衛桜)」も立派ですが、あまりにも世に知られすぎて観光地化してしまいました。

花見にと群れつつ人の来るのみぞあたら桜の科にはありける

私自身も、そうやって「花見にと群れつつ来る一人」なのですから偉そうなことは言えませんが、それでもそんな西行法師の歌を思い出してしまうような状況なのです。

近くの人と比べると大きさがよくわかります

それと比べれば、仏隆寺の千年桜はアクセスの悪さと満開時期になる時期が他の桜と較べて1週間ほどずれると言うことで、未だに昔ながらの風情を残しています。しかし、その貴重な風情ゆえに最近はテレビなどで紹介されることも多く、結果として、平日でも多くの人が押し寄せるようになってしまいました。

そして、そうなってみると、今度は「本郷の瀧桜」と違って受け入れる側の準備がそれほど整っていないので、桜に近づくには大変な苦労を強いられることになります。
しかし、そうやって訪ねた仏隆寺はまさに「桜」しかない昔の風情がそのまま残っていますから、やはり宇陀で一つ選べと言われれば誰もがこの「千年桜」を選ぶのではないでしょうか。

仏隆寺は室生寺の四方に配置された大門の一つです。

室生寺は東は田口の長楽寺、西は大野の弥勒寺(大野寺)、南は赤植の仏隆寺、北は名張の常勒寺(丈六寺)を四方の大門としたと言われていますので、仏隆寺は南の大門とされたお寺です。
そして、本山の室生寺を含めてこの仏隆寺以外は直接観光バスが入りますが、この仏隆寺だけは観光バスは入りません。

仏隆寺へは一般的に、伊勢本街道と呼ばれる古い道を辿ります。
桜井から伊勢の方へ抜ける現在の幹線道路を榛原のところで分かれて国道369号線に入って南に向かいます。道は次第に山深くなってくるのですが、その両側には満開の山桜がむかえてくれるようになります。

この日は青空をバックにひときわ美しさが際立っていました

既に宇陀の桜は満開を過ぎて散り果てているのですが、山中に向かうと気候がそれだけ冷涼なのか、仏隆寺への入り口になる高井の集落ではまさに桜が満開の時期を迎えていました。
仏隆寺の千年桜は本郷の瀧桜が散ってから満開をむかえると言われるのですが、それは千年桜が気難しいのではなくて、千年桜があるこの山深い地がそれだけ冷涼な気候なので満開の時期がずれるというのが正解のようです。

少し違う表情の千年桜、主幹の太さとたくましさがよくわかります

仏隆寺へは伊勢本街道を高井の集落で分かれてさらに山深い地へと進んでいきます。先にも書いたように道は狭くて急なので観光バスは入れません。
また、仏隆寺の駐車場は狭くて、この時期に準備される臨時の駐車場もそれほど広くはないので、千年桜が満開をむかえるときは大変な渋滞を招きます。聞くところによると、昔はそれほどの人出ではなかったようなのですが、最近の千年桜の人気は非常に高くて、平日でも9時を過ぎると車を駐車するスペースが見つからずに往生することになります。

やはり、こういう人気スポットは早出の早帰りが原則のようです。
そう言う私も高をくくっていて出発が遅れ、仏隆寺からかなり離れた下の方で何とか駐車スペースを見つけることができました。しかし、そこから緩やかな上り道を仏隆寺の方に向かっていくと、やがて千年桜がその姿を見せてくれるのですが、まさに息を呑む思いでした。

仏隆寺への道は駐車スペースが空くのを待つ車の列が延々と続いているので情緒にかけることは致し方ないのですが、それでも遠くに姿を現した千年桜は見るものに強烈なインパクを与えます。

これを飛び立つ鳥にたとえた人もいるのですが・・

ある人はそれを飛び立つ鳥にたとえましたが、その圧倒的な姿はいかなる比喩をも拒否する存在感があります。
全くの野育ちで1000年近い年を耐え抜き、未だに衰えの欠片も見せずに咲き誇るこの姿をいったい何にたとえることができるというのでしょう。

巨大にして異形の主幹

そして、その1000年を経た時間の流れは7メートルを超える主幹の異形にあらわれています。
数えてみれば根本から11に枝が分かれているようで、その枝に支えが必要なのは数えるほどです。その意味でも、これぞ見事なまでの一本桜です。

殆ど支えを必要としていない見事さ!!

そして、この桜の魅力なのはこの一本桜を様々な方からかなり自由に眺めることができることです。その見る方向によって、この千年桜は全く違った姿を見せてくれます。

周囲の桜を圧倒する存在感

同じ事を何度も繰り返しますが、群れて咲くソメイヨシノは喧噪を招きますが、大いなる一本桜は人を沈黙させます。そして、この千年桜も驚くほど多くの人を引きつけながら、桜のまわりは驚くほど静謐です。
そう言えば、彼の樹齢が900年とすれば、あの西行法師とほぼ同じ年です。

もしかしたら、あの西行法師から「花見にと群れつつ人の来るのみぞあたら桜の科にはありける」と詰られても、「でもボクは来る人みんなを静かにさせてるからね」と言っているかのかもしれません。

千年桜の根元に咲く小さな菫

仏隆寺の千年桜

とにかく高井からは道が狭いので注意が必要です。また、駐車場はないに等しいので早出早帰りが鉄則です。
なお、室生寺から「城之山桜」が咲く西光寺の前を通って仏隆寺に行くこともできるそうです。「Googke Map」ではこの道は途中で途切れているように見えるのですが、通行可能なようで、地元の人は普通に利用しているそうです。
ただし、途中にシカやイノシシをふせぐための柵があるので、それを空けて通行した後はもう一度元通りにしておいてほしいと言うことでした。

ただし、室生の桜や西光寺の桜が満開の時は仏隆寺の桜は咲き始めたばかりなので、両方同時に見ると言うことはできないようです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です