写真は5月1日に撮影したものです。
藤の寺としては「葛井寺」よりはこちらの「子安寺」の方が有名です。和歌山県橋本市の山深い地にあるのですが、大阪と和歌山の県境である紀見峠を越えて来た道が京奈和道とバイパスでつながったことで非常にアクセスがよくなりました。
「子安寺」は紀州徳川家の安産祈願所という来歴を持つのですが、今はそんな事よりは「藤の寺」としての方がはるかに有名です。
関西には「関西花の寺二十五ヵ所」というのがあるのですが、この「子安寺」もその25カ所のうちの一つです。いわゆる西国33カ所や四国88カ所のような巡礼の一つという位置づけなのですが、形として出来上がったのは1993年という事なのでごく新しいものです。
しかし、そこに名を連ねているお寺は、昔から「ボタンの寺」とか「紫陽花寺」「コスモス寺」と言われてきたような「花の寺」が並んでいます。この「子安寺」もそんなお寺の一つで「藤の寺」と言われているわけです。
聞くところによると、昔のお寺はどこもかしこも貧しかったようです。
特に戦後の混乱期は名のある大寺でも日々の食べ物にも事欠く有様で、土塀は崩れ庭が荒れ果てても為すすべもなかったと聞いています。それがある程度持ち直したのは「観光」のおかげであることはよく知られた事実です。
ですから、「観光資源」のあるお寺とそうでないお寺との間での格差は非常に大きいようです。
この「関西花の寺二十五ヵ所」というのも、そう言う「観光資源」としての「花」を上手く活用しようとしたのでしょう。
しかし、「観光資源」として活用するために素晴らしい花がきちんと維持管理されて、結果として私も含めた多くの人が素晴らしい花を楽しめるのですから悪い話ではありません。
子安寺はこぢんまりとしたお寺ですが、藤の花をメインとして様々な花が植えられていて、この春の時期はお寺全体が花に埋もれたような風情になります。
考えようによっては、大きなお寺だとこういう雰囲気をつくり出すのは難しいでしょうから、小ささゆえの「強み」でもあります。
階段を上がっていって小さな門をくぐると大きな藤棚がむかえてくれます。
時期的にはやや早かったようで、長い房に花をつけているのは5分程度でした。しかし、藤の花は房の先まで花が開くと最初に花の咲いた根本の方は散ってしまいますので、いわゆる満開一歩手前の方が綺麗です。
この入り口からさらに小さな階段を上がっていくと、右手にもう一つ大きな藤棚があります。
何が違うのかは分かりませんが、こちらの藤はまさに満開一歩手前のほぼベストの状態でした。ゴールデンウィーク期間中の休日になるととんでもない人出になるのですが、平日だとゆっくりと藤の花を楽しむことが出来ます。
お地蔵さんもなんだかのんびりした風情に感じられます。(^^;
また、「葛井寺」ではかなり目についたインバウンドの観光客も、さすがにこんな辺鄙なところまでは進出していないようでした。
この大きな藤棚の反対側、階段を上がってきた左手に白い花をつけた大きな藤が植わっています。これは「葛井寺」でも咲いていた「白カピタン」という品種らしいのですが、さすがに「葛井寺」の白カピタンには及びません。
遊歩道はこの白カピタンの前を通って下の庭に続いているのですが、そこにも大きな藤棚があります。
また、おそらく「曙藤」といわれる品種だと思うのですが、赤みの掛かった紫色の藤が咲いていました。
さらに、八重咲きの花をつける珍しい「黒龍藤」という品種もほぼ満開のようでした。遠目で見るとなんだかブドウの実がなっているような雰囲気がする藤でした。
小さな池に長い房の影を映して咲く姿も美しく、小さな空間にギュッと凝縮されたような美しさが魅力のお寺です。
電車で行くと最寄り駅は南海高野線の「御幸辻駅」になります。そこから歩いていくと徒歩で30分程度掛かりますから、車で行くのが一般的です。藤の期間中は臨時の駐車場が準備されているのですが、「藤娘」の撮影会のある日などと重なるとかなりの人出になりますので要注意です。