著作権に関する懸念について

リパッティのショパンのコンチェルトに関して概ね以下のような丁寧なメールをいただきました。

yung様がアップされた音源のLPはseraphimの60007と言うことでした。

現在このLPの本当のピアニストはハリーナ・チェルニー=ステファンスカということになっています。どうやらこの説は確定のようです。

で気になるのは、yung様がアップされたデータのタイミングを見ますと、第1楽章が17分30秒ほどです。
一方、現在真正のものとして知られている(売られている)リパッティのCDでも、第1楽章は17分30秒です。
両者を聞き比べてみると、確かに同一のように聞こえます。

さて、手元にはseraphimのLPは無いのですが、toshibaの最初期のLP(AB8112、実はステファンスカのピアノのもの)のライナーノートによりますと、
第1楽章の所要時間は19分13秒となっています。

真正のリパッティ演奏のショパンの協奏曲が発売されたのは70年代以降と記憶しています。

つまり、yung様はどうやら著作権切れのリパッティの演奏として、70年代に初めて発売されたものをパブリックドメインとしてアップされたのではないかと思われますが、
もしそうなら、著作権法はクリアされているかどうかちょっと心配になリましたのでメールを差し上げました。

そう言えば、このことが話題になったことがあったのを思い出しました。

リパッティの演奏として出回ったのはこの録音だったようですね。

(P)Halina Czerny-Stefanska (Con)Vaclav Smetacek The Czech Philharmonic Orchestra

当然の事ながら、サイトの方にアップしているのはその後発見された、出所もはっきりした放送音源の方です。
ただし、「元リパッティ盤、実はステファンスカ盤だった」よりは音質的には劣るそうです。

さて、御懸念の著作権の問題なのですが、確かに隣接権の起算点は2001年の法改訂によって「録音」から「発売」に変更されています。
ですから、70年代にはじめてリリースされた音源であれば50年以上が経過していないので隣接権をクリアしていないように思われます。

ただし、著作権に関しては法改訂に伴う「経過措置」というものが存在します。
特に、ネット上を通して様々なコンテンツが広く流通するようになると、この「経過措置」を導入しないと大変なことになります。

それはどういう事かというと、法の改訂に伴ってすでにパブリック・ドメインになっているコンテンツに権利が回復してしまうと、それらをすべて回収することが不可能になってしまっているからです。
そして、それが不可能だと言うことで放置してしまうと、今度は「違法状態」が蔓延してしまうことになって、法の安定性が維持できなくなってしまのです。

そこで、この違法状態の蔓延を防ぐために、法の改訂に伴ってすでにパブリックドメインとして流通しているコンテンツに関しては権利が復活することがないように条文が書き加えられるのです。
これを「経過措置」と言います。

経過措置がある・・・ニャン!!

リパッティの件を具体例として解説しますと、この放送音源は「1950年2月7日録音」とされていますから、50年が経過した翌年である2001年のお正月(より法的に正確に表現すれば2000年の24時)に権利が消滅します。
ですから、それは隣接権の起算点が「録音」から「発行」の変更された法の施行前なのですでにパブリックドメインとなっています。

そして、2001年の法改訂では上記のような趣旨で「経過措置」が盛り込まれていますので、この法改訂によって権利が復活することはありません。
ですから、この音源に関しては初発の年(はじめてリリースされた年をこのように表現します)にかかわらず2001年以降はパブリックドメインのままだと言うことになります。

この「経過措置」はこういうサイトを運営しているものにとっては非常に重要な「概念」でして、TPP交渉に伴う著作権の延長論議の時に一番気になったのはこの「経過措置」がとられるか否かでした。

なぜならば、過去に一度だけ法改訂に伴って経過措置がとられないことがあったのですが、それがアメリカの横やりが原因だったからです。
その時は、すでに権利が消滅したコンテンツがゾンビのように復活したので、このTPP交渉でもそう言うゾンビ復活の悪夢がよぎったのです。
しかし、さすがに今のネット時代に広く流通しいているパブリックドメインのコンテンツを回収することは不可能ですから、国内の法整備では「経過措置」がとられることになりました。

その後、まさに土壇場でTPP協定は漂流し、アメリカ抜きの協定でも著作権関連の規定は凍結されることで合意されました。
やれやれと思っていると、今度は12月に入ってから「実は4ヶ月前にEPA交渉が妥結してました」という何とも間の抜けた発表がありました。

まあ、どちらにしても、これもいつ発効するか先行きは全く見えませんし、発効しても「経過措置」はとられるでしょうから、サイト運営には大きな影響はないと考えています。
年が明ければ、1967年までに発行された音源はすべてパブリックドメインになります。ちなみに、1952年までに録音された音源に関しては初出年にかかわらずすべてパブリックドメインです。
この先、あれやこれやの協定が発効して著作権の延長が現実のものになるときは概ね60年代までに録音された音源の大部分はパブリックドメインになっているはずです。

クラシック音楽の演奏史を考えれば、もうそれだけで十分だという気がします。
黄金の50年代、銀の60年代だからです。

50~60年代の録音を系統的に整理して公開するだけでも膨大な時間と手間がかかりそうです。
逆に、そのあたりで一度ストップをかけてもらった方が有り難いのかもしれません。(まあ、有り難くはないですがね^^;)

4件のコメント

  1. いつも参考になっております。
    最近はお体も調子が戻ったようでなによりでございます。
    これからもyung様の活動を見守りたいと思います。

    1. 最近、ギュンター・ヴァントのザ・グレイトレコーディングスを聴いています。
      徹底的に締め上げた演奏で、ケルン放送響や北ドイツ放送響の真価が発揮されています。
      演奏は1970年代から1990年代ぐらいですがブルックナーは言うまでもなく、
      ベートーヴェンやブラームスの演奏の凄さがようやくわかってきたような気がします。
      1980年代の演奏でオーディオシステムも徹底的に締め上げ、
      聴いているとヴァントの実直さというものが伝わってきました。
      いかにもドイツの中のドイツといった演奏でした。

      1. ですがやはりこの録音の原点となった、1974年の
        ブルックナーの交響曲第5番は格別です。

        1. ギュンター・ヴァントで言いますと、ヴァントが1946年から1974年まで音楽監督を務めていたケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団のマーラー交響曲第9番が気に入りました。
          指揮者はマルクス・シュテンツです。
          ヴァントが鍛え上げた伝統の音が聞こえるような演奏でした。

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