トスカニーニ―大指揮者の生涯とその時代

“トスカニーニ―大指揮者の生涯とその時代 (叢書・20世紀の芸術と文学) (叢書:20世紀の芸術と文学)”

トスカニーニ―大指揮者の生涯とその時代 (叢書・20世紀の芸術と文学) (叢書:20世紀の芸術と文学)
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図書館でこの本を発見、早速借りてきてよんでみたのですが、実に面白かったです。
まず、一番いいのが、著者が日本人であること!!
此の手の評伝は翻訳物がほとんどで、さらにこういう言い方をすると翻訳をされた方には失礼なのですが、その大部分が日本語としては全く練れていなくて、読みみにくいことこのうえなしのものが多いです。
それと比べると、この著者の文章は実に平易で分かりやすい言葉で書かれていて実に好感が持てます。もちろん、文章が平易だからと言って、中味が薄っぺらなんてことはありません。
世間では、一読しただけでは意味が取れないようなへんてこりんな日本語で書かれている方が難しげで偉そうに見えると誤解している人が多いのですが、本当に素晴らしいのは分かりやすい文章で書くと言うことです。
実際、随分と難しげな日本語を必死で解読してみると、中味は全く陳腐で通俗的というものが少なくありません。
どうも、分かりにくい文章の方が格調が高いと誤解している人が多いようで困ったものです。
さて、内容面ですが、これはもう、みんなが知りたいフルトヴェングラーとの関係や(^^;、あの有名なラストコンサートの真実など興味深いエピソードも満載です。でも、この本の一番の功績は「劇場の改革者」としてのトスカニーニの功績をクッキリと跡づけた事でしょう。
そして、その事を優先したからでしょうが、資料ぎっちりという感じで、シーズンごとにトスカニーニが指揮した作品名がこれでもか、これでもかとズラズラと並びます。
個人的には、そう言う資料的な部分は巻末に整理して、本文では煩わしくないほどに整理してくれていれば嬉しかったです。
とは言え、ちょっとお高い本ですが、久々に手元に置いておきたいと思った一冊でした。

1 comment for “トスカニーニ―大指揮者の生涯とその時代

  1. シューベルティアン
    2010年2月27日 at 4:30 PM

     うおう、すばらしい本を紹介してくださって有難う!
     トスカニーニについていい本をちょうど探していたので、吉報です。さっそく近所の図書館で探してみます。
     ぼくにとってトスカニーニの魅力といえば、なんといってもあの「わかりやすさ」です。録音史上・最もわかりやすい音楽家だと思っています。難しい内容を簡明な形式で伝えてくれるのが真の芸術だ! といいたいです。
     ユングさんならとっくに読んでおられるかもしれないですが、河島みどりという女性の「リヒテルと私」は面白い伝記でしたよ。巨匠といっしょに旅を楽しんでいる、気楽な旅行記みたいなもので。

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