著作権に関する問い合わせについて

ご存知のように、著作権の保護期間が50年から70年に延長されました。
改訂された著作権法が発効したのは2018年12月30日でした。そのために、2019年のお正月からは新しくパブリック・ドメインとして追加される音源はなくなってしまいました。この状態は2039年まで続きます。

さて、最近多いお問い合わせは、この改訂に伴って録音から70年が経過していない音源は「大丈夫なのか」というものです。
例えば、最近いただいた問い合わせは「(P)ハンス・リヒター=ハーザー:カラヤン指揮 ベルリンフィル 1958年11月録音」による「ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 Op.83」は録音から70年が経過していないので大丈夫なのか、と言うような内容でした。

結論から言いますと、その音源は今もパブリック・ドメインであり、日本国内においては自由に利用すること可能です。

何故ならば、著作権法の改訂には一回の例外を除き「経過措置」が明記されているからです。
例えば、2018年12月30日に改訂された著作権法が発効した時点では、上記音源はすでにパブリック・ドメインになっていました。詳しく言えば、隣接権の起算点は録音ではなくて発行なのですが、そう言うややこしい話は脇においておきましょう。
シンプルに言えば、1967年までに発行された音源は法の改訂時にはすでにパブリック・ドメインになっていました。もしも、法の改定によって全ての音源に対して保護期間を70年に延長すると、すでに膨大な数が流通しているパブリック・ドメインが全て違法な音源と言うことになってしまいます。
もちろん、それを適性に取り締まることが可能であればいいのですが、このネット社会においてそれは到底不可能です。と言うことは、結果として「無法状態」が放置され「法的安定性」が損なわれてしまいます。
そこで、著作権法は改定されるたびに、すでにパブリック・ドメインとなっている音源に関しては著作権や隣接権は復活しないで、そのままパブリック・ドメインとして流通することを認める「経過措置」を適用するのです。

ゾンビのように生き返ることはないよ


おそらく、このやり方はネット社会においては不可欠な措置であり、今後ともに変わることはないでしょう。
簡潔に言えば、一度パブリック・ドメインとなった音源はいかなる法改訂があっても、ゾンビのように生き返ることはないと言うことです。

なお、ここの音源がパブリック・ドメインかどうか調べる手段はないかという問い合わせもありますが、残念ながらそう言う便利なシステムは存在しません。
作品の著作権に関してはJASRACの検索サイトで調べることは一定可能ですが、音源の隣接権に関しては自力で調査するしかありません。

なお、調査するときに便利なサイトとして「Discogs」があります。しかし、ここは誤りも少ないので100%信じ込むのは危険です。

なお、上記で述べた内容はあくまでも日本国内において通用する話であって、外国で使用するときはその国の法律が適用されますので、創作活動を行っている人で海外での使用があり得る人は自力でそれぞれの国の法律に関しては調べてください。

1 comment for “著作権に関する問い合わせについて

  1. 角 英司
    2021年11月13日 at 11:07 AM

    1938年録音のモーツァルト:ディヴェルティメント 第15番 変ロ長調 K.287(ヨーゼフシゲティ/マックス・ゴバーマン指揮 )をYouTubeで聞いていましたら、第四楽章がAdahioとなっていました。気が付きましたので老婆心まで。

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