少しばかりの愚痴みたいなものも混ざるのですが、こういうサイトを運営していると「この作品や演奏ってもう少し聞かれてもいいのにな」と思うことが良くあります。
こういう個人的なサイトですが一応はアクセス解析の機能はそなえているので、どの作品がどの程度聞かれたのかはある程度は分かります。
言うまでもないことですが、ベートーベンの交響曲のような超メジャーな作品は古い録音であっても良く聞かれています。しかし、ヴァイオリン・ソナタのような室内楽になるとと聞かれる機会は一気に減ります。これが、マイナーな作曲家のマイナーな作品となるとその傾向はより一層際だちます。
ただし、それは仕方のないことで、そうやって多くの人に良く聞かれるが故に「メジャー作品」なのであって、それに関しては何も愚痴る気持ちはありません。「メジャー作品 > マイナー作品」は覆しようはありません。
しかし、ある特定の作曲家、もしくはある特定の演奏家の中には「もっと聞かれてもいいのにな」と思うことが良くあります。
まず、その代表として名前を挙げたいのがヘンデルです。
小学校の音楽の授業で「バッハは音楽の父、ヘンデルは音楽の母」と二人並び称されて覚えさせられたような記憶があるのですが、こういうサイトをやっているとこの二人に対するアクセス数には大きな違いがあります。
そして、その音楽の評価にも大きな差があるように思われます。
確かに、ヘンデルの音楽にバッハのような精緻さは欠けます。例えば、人間技とは思えないようなバッハのフーガを聴いた後にヘンデルのフーガを聴けばあまりにも甘いと思わざるを得ません。
ですから「バッハ > ヘンデル」は仕方のないことなのですが、現実には「バッハ > ヘンデル」どころではなく「バッハ >>>>> ヘンデル」くらいの差があります。個人的には「バッハ >>>>> ヘンデル」はあまりにも酷いと愚痴りたくもなりますが、なんだか最近は少しばかり意地のようにヘンデルの作品を取り上げていて、何とか「バッハ >> ヘンデル」くらいにはならんものかと願っているのですが、現実はなかなか厳しいです。
しかし、例えば今日でもって全12曲の紹介が終わった「ヘンデル:合奏協奏曲, Op.6 アレクサンダー・シュナイダー指揮 アレクサンダー・シュナイダー室内管弦楽団 1966年1月録音」を聞いてもらえれば、ヘンデルの音楽がバッハとは全く違う世界を描き出した音楽家であったことが実感できるのではないでしょうか。
ヘンデルは多様性を持った12曲の音楽をわずか1ヶ月程度で(1739年9月29日~10月30日)書き上げているのです。ヘンデルの速筆は夙に有名なのですが、この12曲をこんな短期間で書き上げたエネルギーと才能には驚かされます。
同じバロックの時代にこの作品群と対峙できるのはバッハのブランデンブルグ協奏曲くらいでしょう。そして、この二つを較べれば、バッハとヘンデルの気質の違いがはっきりと見えてきます。
ヘンデルの合奏協奏曲は7声部のためとなっているのですが、幾つかの楽器が同じ声部を演奏するのでそれよりも少ないラインで音楽が構成されていることが少なくありません。それでも、ヘンデルもまたバロックの音楽家なのでそれらの声部をポリフォニックに扱っているのですが、その扱いはバッハと較べればはるかに自由で簡素です。
実際に音楽を聴けばホモフォニックに響く場面も少なくありません。
この辺りが骨の髄までポリフォニックな音楽家だったバッハとの最大の違いと言えるでしょうし、この違いが両者に対する評価の違いに結びついています。
また、フーガにしてもバッハのような厳格さよりは音楽の勢いを重視して自由さが特徴です。
バッハが厳格で構成的だとすれば、ヘンデルの音楽は明らかに色彩豊かで流動的です。
基本的にポリフォニックな音楽は聞き手に努力を要求しますが、ホモフォニックの音楽にはそう言う厄介な労力を求めません。ですから、音楽の需要層が教養のある貴族層から市民階級に移行するにつれてポリフォニックな音楽は衰退していき、それにあわせてバッハも一事は忘却の片隅に追いやられました。
つまりは、ヘンデルの音楽は難しい顔をして聞く必要はなく、逆に彼の音楽の方から聞き手に寄りそって心を楽しませてくれるのです。
しかし、クラシック音楽というのは難しい顔をして聞くものだという「教養主義」は未だに生き残っているのでしょうか、そう言うヘンデルの音楽はあまり評価されません。
ということで、「もっと聞かれてもいいのかな」シリーズの第1弾としてヘンデルを取り上げてみました。
管理人の愚痴なんて読みたくもないという人多いでしょうが、このシリーズ少しばかり続けてみたいと思います。
それから、昨日ガーシュインの著作権に関しての情報をいただきました。
私もこの件は友人から聞いていて承知はしていたのですが、「全く仕事中にさぼって何をやってんだか。」とぼやきながらも情報をいただいたことには深く感謝しています。
それにしても、ガーシュインが亡くなってから80年以上もたってから、急に弟が「その作品の創作にはオレも関わっていた」と急に言い出して、それをJASRACが認めて著作権を復活させるとは信じがたい話です。
ただし、対象となる作品は「ポーギーとベス」に関する幾つかの楽曲だけのようなのでこのサイトへの影響はありません。
しかし、このネットの時代にすでにパブリック・ドメインとして広く流通している音源をどうして管理するつもりなのでしょうか、と言うより、そんな事が出来るとでも思っているのでしょうか。
結果としては無法置状態を放置することに繋がるとすれば、裁判と言うことになるのかもしれませんが、おそらくは反撃の来ないような「弱いところ」をねらい打ちにして「見せしめ」にでもして管理するつもりなのでしょうか。
音楽教室における楽曲の利用に課金しようとしているJASRACの姿勢を見ればそれもありうる話かもしれません。(この問題は現時点では高裁でJASRACが敗訴、現在は最高裁で争われています)
私がこのサイトを楽しみにしているのは、あまり聴かれていない佳曲・佳演に出会ったときです。このサイトの利点は、そのような隠れた演奏にまでしっかりと目配りされていることです。しかも、それらが無料で楽しめるのですから、私にとってかけがえのないものとなっております。これからのますますご清栄をお祈りいたしております。
私がこのサイトをはじめたのは1998年のことで、音源の配信を始めたのは2001年です。考えてみれば20年にもわたって良く続けてこられたものだと思います。
当初の目標は1000曲でした。それは私としては途轍もない目標だったのですが、その設定の理由は1000曲もアップすればクラシック音楽の世界は概観できるだろうと考えたからでした。
しかし、2010年頃にその目標には到達したのですが、とてもじゃないですが「概観」など出来る規模ではありませんでした。
そして、この20年で思い知らされたのは、どれほどの音源を追加しても到底クラシック音楽というものは概観しきれるものではないと言うことでした。つまりは、それほどにこの世界は広大なのです。
その広大さの理由も最近になって分かってきました。
まずは、作品数が途轍もなく多いと言うことです。つまりは、根っこに広大な二次元空間を持っているのです。
さらに、そこに「演奏」という営みが加わると、同一作品にも様々な「同曲異演」が存在して、作品という2次元空間の上に演奏という高さが加わり三次元空間になってしまいます。
それに加えて、そこに「演奏の歴史」という時間軸が加わります。
つまりは「作品」と「演奏」という三次元空間に「演奏史」という時間軸が追加されて四次元空間を形成するのです。そして、そこまで目配せしなければ「概観」したなどとは言えないのです。
おそらく、少なくない人が「もっと聞かれてもいいのに」もあるけれども「もっと取り上げてもいいんじゃない」という声もおありでしょう。
まあ、そんなわけでいつまで続けられるかは分かりませんが、キーボードが打てる間は続けていきたいとは思っています。
そして、その原動力になっているのは、こんな無愛想な管理人であるにもかかわらず常に応援のコメントやメールをいただけることです。
そう言う励ましをいただくたびに、もう少しは、愛想よくした方がいいのかもしれないな・・・等と思う今日この頃です。(^^;
こんにちは、いつもYUNGさんには、お世話になっています。今回のお話によると、私は、マイナー族のようです。ベートーベンに関しては、弦楽四重奏しか、いただいたことがありません。メンデルスゾーンは、よくいただきます。サンサーンスもいただきました。ヘンデルは、ハレルヤが聞きたいのですが、見つけることができませんでした。ヘンデルではありませんが、パパゲーノとパパゲーナ、魔笛、魔王も見つけることができませんでした。
さて、ここからは、オーディオの話です。この間、東京で割と大きな地震があり、自分は、スピーカーをスタンドで46cm持ち上げているので、スピーカーの地震対策で、スタンドに荷造りバンド(伸びない布素材にものBcabo製荷締めベルト6本セット1600円)で、スピーカーを固定しました。このバンド何回も使えて、スピーカーが壊れるほど締まります。音を聞いてびっくり、バンドがスピーカーをダンプするので、ややデッドになりますが、音の安定感、定位、解像感が、大きく改善しました。ブラインドで分るのレベルではなく、まるでスピーカーを変えたようです。この状態で聞いていいのか迷いますが、安全と悪くない変化なので、とりあえずこれで行こうと思います。以上報告でした。
末尾になりましたが、YUNG様のご健勝を祈念いたします。
メサイアでしたら、Flacファイルでも以下の二つの音源をアップしています。
ヘンデル:オラトリオ「メサイア(グーセンス編曲版)」HWV.56とヘンデル:オラトリオ「メサイア」HWV.56
魔笛に関してはクレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団の音源(第1幕・第2幕)をアップしています。
シューベルトの魔王はキルステン・フラグスタートの歌唱を上げてあります。
参考になれば幸いです。
早速のご回答、ありがとうございます。
ぜひ聞いてみます。