園原(長野県 阿智村)の花桃

写真は5月9日に撮影したものです

「園原」の名はとあるテレビ番組で知りました。
ただし、そこで紹介されていたのは「花桃」ではなくて、つぶれかけたスキー場のリフト会社が星を見るためのナイトツアーで復活したという話でした。

まさに桃源郷!!

なるほど、こんなにも素晴らしい星空なのに、それが観光資源になるなどとは地元の人は夢にも思わなかったのです。今では、このナイトツアーは大人気で、私も「花桃」とこの「ナイトツアー」を目的に昼神温泉を訪ねました。

当日はあいにくの天気で、星は絶対に見えないこと確実だったのですが、それでも既に旅館とセットでチケットも購入しているので出かけていきました。
いくら有名なところでも星が見えないのではほとんど人はいないだろうと思ったのですが、何と花桃の里と変わらないか、それ以上の賑わいでした。聞くところによると、条件が良ければリフトで運べる上限である1500名を超えることもあるそうです。

昼神温泉の次は美ヶ原から八ヶ岳の方を回ったのですが、驚いたことにどのホテルでも星空観察会を行っていました。そして、それがまた人気のようなので、この「ヘブンスそのはら」が果たした役割はとても大きいようです。

橋の上から花桃を眺める

私が住んでいるところは大阪でも一番田舎の方なので、夏になって条件がよければうっすらと天の川が見えます。ちなみに、家のすぐ近くの草つきの斜面では5月の終わり頃から姫蛍が光ります。(^^;
そして、学生時代に1度だけ、和歌山県大塔村という山村で恐いくらいの「星空」を見たことがあります。
「ヘブンスそのはら」では、条件さえ揃えばあれと同じくらいの星空が見られるのでしょうから、一度経験した人は必死で口コミで広げるでしょう。

つまりは、それくらいの価値が「星空」にはあるのです。
そして、その価値を地元の人はなかなか気づかなかったのです。もちろん気づかなかったのは阿智村だけではありません。

しかし、星空は天気次第というのが辛いところです。
しかし、花は季節がめぐれば必ず咲きます。雨がふっても風が吹いても、季節がめぐれば必ず花を咲かせてくれます。
そんな花を村中に植えて咲かせれば地域振興になるだろうというのは「星空」が観光資源になると言うよりははるかに思いつきやすかったようです。

一本の木に三色の花をつけます

この地域の「花桃」は、福沢諭吉の孫に当たる福沢桃介と言う人物がミュンヘンから苗木を持ち帰ったことに始まるそうです。

赤一色の花桃。この赤が実に美しい

これが実に不思議な花で、一本の木に赤や白、さらにはピンクという三色の花が咲くのです。珍しくも美しい花なので、これを少しでも増やしたいと言うことで国道256号線沿いに苗木を植えて増やしていきました。
昭和23年の話で、今では「花桃街道」と呼ばれるようになっています。

赤一色でまとめているエリアもあります

さらに、平成に入ってから、阿智村の地域振興事業として月川温泉が開業するのですが、その時に旅館のまわりに1000本の花桃を植えました。そして、平成14年(2002年)から本格的に「桃源郷」作りが始まり、現在は5000本の花桃が村全体を埋めつくすようになっています。

川路に咲く花桃には風情があります

私が訪れたのはゴールデンウィークが終わった時期だったので、花桃街道の花桃は既に散っていましたが、月川温泉の方は山深い地なので満開を過ぎて散り始めた頃でした。

今回訪れて始めて気がついたのは、阿智村は長野県であるにもかかわらず、大阪からは驚くほど「近い」と言うことでした。途中でお昼ご飯を食べる時間を入れても4時間あまりでついてしまいました。
中央自動車道の園原インターで下りるのですが、降り口は「長ーーい恵那山トンネル」を出てすぐなので注意が必要です。

道沿いに花桃が延々と続きます

花桃の里はそこから5分ほどです。
インターを下りると看板があるので、その指示に従って右に曲がるとすぐに花桃の木がポチポチとあらわれてきます。そして、そこからしばらく行くと山の斜面が花桃に埋まっている光景が目に飛び込んできます。

白一色の花桃も清楚な感じです

この場面設定は非常に素晴らしいです。インパクトがあります。
私の前を走っていた名古屋ナンバーの車も急にスピードダウンして、そんな花桃の景色に見とれているようでした。
そして、その後は道の両側は切れ目なく花桃で埋めつくされているのです。

このグラデーションが花桃の魅力です

駐車場はその道沿いにいくつも用意されているので、ゴールデンウィークの真っ最中でもない限りは困ることはないようです。
また、有り難いのは駐車料金は500円なのですが、その日のうちなら別の駐車場に移動しても駐車チケットを提示すれば追加料金が発生しないことです。この花桃の里は全体ではかなりの距離がありますので、これは有り難いシステムです。

まさに印象派絵画

道沿いにも川沿いにも、花桃は途切れなく咲いていますし、あちらこちらの山肌も花桃で埋まっています。
そして、不思議なのは、ソメイヨシノなどとは違ってこれほど集団で空間を埋めつくしていてもイヤらしさをあまり感じないのです。

この色の重なりが花桃の魅力でしょう

年を重ねるにつれてソメイヨシノへの拒否感が増してきているので、これは実に不思議な心の動きなのですが、思い当たったのは一本の木に三色の花をつけるという「花桃」の特徴です。

もちろん、赤一色、白一色の花桃も多いのですが、一本の木に複数の色の花をつけるのが花桃の特徴です。
そして、一色の花桃であってもそれを混ぜて植えれば全体として複数の色が混ざります。

まるで印象派の絵画のような色使い

そう言う花桃を遠目に眺めれば、それはまるで筆触分割の技法を駆使した印象派の絵画のようになるのです。
そこが淡いピンク一色で空間を埋めつくしてしまうソメイヨシノとの違いなのでしょう。

鯉のぼりと花桃

こういう印象派風の景色が一番楽しめるのは、最初に花桃を植え始めた月川温泉の周りです。
いささかやりすぎの感もあるのですが、鯉のぼりをはためかせたり菜の花を植えたりして、見どころを増やしています。

鯉のぼりと菜の花も…

同じ「桃」と名が付いていても、食べるための「桃」の栽培用に育てられる果樹園の光景とは随分と違います。
食べる方の「桃」の花にはここまで複雑な色のコンビネーションはありません。やはり観賞用に品種改良された「花桃」とは根本的に違います。
それに何よりも、栽培用の「桃」は花が咲き始めると果実を大きくするために農家は総出で花を摘み始めます。
和歌山県の紀ノ川沿いは「フルーツロード」と言われるほどの果樹栽培が盛んな地域で、その花の時期には「桃源郷」といわれるのですが、その美しい光景は一瞬で終わってしまいます。

それにしても「花桃」とはいいところに目をつけたものです。
桜と較べれば圧倒的に花の時期は長いですし、好みもあるとは思いますが、私はソメイヨシノよりははるかに美しいと思いました。

出来れば、来年もこの花桃の里をおとずれたいと思いますし、星空にももう一度チャレンジしたいと思っています。

園原月川温泉へ

この温泉施設が花桃探索の拠点になりますので、ここにまずは車を止めるのがいいと思います。
園原インターを降りるとすぐに花桃があらわれるので駐車したくなるのですが、ここまで我慢してまずは車を走らせたほうがいいと思います。特に、この周辺の花桃は見事としか言いようがありません。

月川温泉周辺の花桃、この周辺が最も見ごたえがあります

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