いやはや、この6枚セットが1757円とは・・・、もうボックス盤の投げ売り状態は留まるところを知らないようです。
クレンペラーのマーラーと言えば、同じ師弟関係でもワルターとはずいぶん趣が異なります。ワルターはどちらかと言えば、マーラーの作品を情感豊かに歌い上げて、とにかく師であったマーラーの作品をわかりやすく紹介することに心を砕いていました。その意味では、マーラーがしつこいほどに書き込んだ但し書きに対しては必ずしも忠実ではありませんでした。
それに対してクレンペラーの方は、基本的にマーラーの作品を交響曲らしく仕上げようとしています。ですから、とかく曲線路を取らせようとするマーラーの細かい指示は基本的に無視しています。
その徹底ぶりは気持ちがいいほどで、おそらくマーラーが聞けば「まったく最低だ!」と怒り出しそうな造形です。
そんなわけで、何よりも原典が尊重される昨今の風潮においてはあまり評判は芳しくないのですが、実際に聞いてみると、その割り切れた表現は決して悪くはありません。
CD一枚あたりに換算すると300円を切りますから、もしもクレンペラーのマーラーを聴いたことがない人ならば手元にワンセット置いておいても損はないと思います。
「2番」と「大地の歌」は持っているし、マーラーはそれほど好きではないしと迷いましたが、「7番」を聴いてみたくて購入しました。LPで売られていた頃から気にはなっていたものでした。とてつもなくゆったりした演奏で100分ほどかかっています。音をしぼって聴くか、ヘッドホンにするかという環境ですので、大音響で心行くまで聴いてみたいというのが素直な感想です。