ベートーベンのピアノソナタ全32曲を聞いてみる(19)

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第19番 ト短調 Op.49-1

  • 作曲:1795年~1979年
  • 出版:1805年
  • 献呈:なし

(P)クラウディオ・アラウ 1966年4月録音

ソナチネ・・・ですね

出版は1805年ですが、作品そのものはごく初期に作られた物だと言われています。おそらくは作品2の最初のソナタと同じような時期に作品ではないかと思われます。

ベートーベンはこの作品を出版するつもりなどは全くなかったものと思われるのですが、おそらくは彼の弟が勝手に印刷所に送ったのではないかと考えられています。そして、この作品はベートーベンの友人達の間で、おそらくは子供用の練習曲として出回っていたと思われるのです。
実際今ではこの作品は「ソナチネ」と言った方が通りが言いようで、ピアノを学ぶ人にとっては必修と言って作品となっています。
そんなわけで、この作品にあまりいい思い出を持っていない人も少なくないと思います。(^^;

ただし、純粋に一つの音楽作品として聞いたときには、とりわけ第19番のト短調ソナタの方には十分すぎるほどの芸術的な魅力があります。アンダンテの冒頭の沈み込んだような表情は十分魅力的ですし、その音楽はどこかベートーベンよりはモーツァルトのソナタを思い出せます。
続く軽やかなロンド楽章は、十分にコケティッシュな魅力をもっているのですが、その中間部の構造はかなり複雑であるとローゼン先生は述べています。
おそらく、ピアノを学ぶ人は指がまわるだけでなく、そう言う構造も含めて理解する能力が必要だと言うことなのでしょう。

それと比べると第20番のト長調ソナタはいささか魅力に欠けると言わざるを得ません。
実際、強弱記号はほとんど書き込まれていないので、ベートーベンがこの作品に多くの時間をかけなかったことは明らかです。

作品の構造もウィーンの伝統的なスタイルをそのまま適用しているだけなのですが、それでも凡百の作曲家であればその手際の良さは十分称賛に値するものとも言えます。
なお、第2楽章のメヌエットの主題は、ベートーベンを有名にした七重奏曲の第3楽章の主題と同じものです。

ピアノ・ソナタ第19番 ト短調 Op.49-1

  1. 第1楽章:アンダンテ ト短調 (ソナタ形式)
  2. 第2楽章:アレグロ ト長調 (ロンド)

色々なピアニストで聞いてみよう

  1. (P)アルトゥル・シュナーベル 1932年11月19日録音
  2. (P)ヴァルター・ギーゼキング 1949年6月24日録音
  3. (P)ヴィルヘルム・ケンプ 1951年9月25日&12月22日録音
  4. (P)ヴィルヘルム・バックハウス 1952年11月録音
  5. (P)イヴ・ナット 1954年9月21日録音