ベートーベン:ピアノソナタ第3番ハ長調作品2-3
- 作曲:1793年~795年
- 出版:1796年
- 献呈:フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
(P)クラウディオ・アラウ 1964年3月録音
Play
Stop
«Prev
作品番号2の3作品の中ではもっとも規模が大きく、明らかに聴衆に対してアピールすることが狙われています。
第1番のソナタが悲愴や熱情の劇的な性格へと拡大していく端緒だとすれば、この作品はワルトシュタインなどに代表される輝かしさの拡大へと結びついていく作品だと言えます。
- 第1楽章 Allegro con brio ハ長調
第1主題は室内楽風で、最初の動機がほぼすべての要素を半音高く移調した形で繰り返されます。
聞くところによるとこのフレーズは演奏するものにとっては結構難しいらしいです。それに続く第2主題のテーマも若い時代のピアノ四重奏曲からとられています。
そして、このあたりの音楽からは当時のアーティキュレーションを伴うスタイルから優美にレガートする音楽に変えようというベートーベンの努力が垣間見られます。そして、それらに続く展開部はまるで協奏曲のようなスタイルであり、最後にはオーケストラ曲をピアノ用に編曲版のように聞こえる音楽になっています。
- 第2楽章 Adagio ホ長調
このドラマティックな作品の中でももっとも素晴らしい創意があふれているのがこの楽章です。ここでのピアノにはオペラのアリアのように深い詩的な感情が込められています。ですから、ピアノには歌手がアリアを歌うような微妙なダイナミクスと繊細なテクスチャが求められます。
そして、ピアノはその幅広い音域ゆえに、時にはソプラノからバス声部まで一人の歌声であるかのように下降してみせたりもするのです。
おそらく、作品場号2の3作品の中では、もっとも素晴らしい音楽だと言っていいでしょう。 - 第3楽章 Schrzo. Allegro ハ長調
ここでも第2番に引き続いてスケルツォが用いられているのですが、こちらはそれよりもはるかにスケルツォ的です。
構成は定石通りの3部形式なのですが響きはオーケストラ的な効果が用いられている部分も多くて、そこにこの楽章の特徴があります。 - 第4楽章 Allegro assai ハ長調
規模の大きなロンドであり、まるでベートーベンの即興演奏を聞くかのような雰囲気の楽章です。
スタイルとしては第1楽章と同様に協奏曲的であり、カデンツァに相当する部分では三重トリルを用いるなどして、ピアニストのテクニックを大いに誇示できるような音楽になっています。
色々なピアニストで聞いてみよう