とっても古い文章が出てきました。これこそ、捨てるに忍びないものなので、ここにしっかりアーカイブしてきます。
我が家の最長老だったラッキー君は捨てられていたところを保護したワンコなので年齢は不詳です。しかし、獣医さんに見てもらったところでは、保護した当時ですでにおじいちゃんらしい・・・?ということでした。
どのような前半生をおくってきたのかは分かりませんが、保護したときには後ろ足は脱臼をしている上に、フィラリアにも感染しているというボロボロの状態でした。ガリガリに痩せていて体重は12キロしかありませんでした。その様子を見るかぎりでは、どうみても数年しか持たないだろうという状態だったので、とにかく少しでも気持ちよく余生が過ごせればいいと言う感じで世話をすることにしました。
<出会い>
私たちがラッキー君と初めてであったのは11月の終わり頃でした。(追記:記憶が曖昧なのですがおそらくは1999年ではないかと思います。)
いつものようにユングとボニーをつれて散歩をしていると、突然にユングが足を止めて草むらの中を気にします。
おかしいな?と思ってその先に目をやると、その草むらの中に一匹のワンコがうずくまっていました。それがラッキー君でした。
首輪はしていなかったので捨てられたのか、迷子になったのか、とも思いましたが、けっこう家を抜け出して自由散歩をするワンコも多いので、その日は声だけかけて別れました。しかし、そのワンコは何日経ってもその草むらを住みかとして動く気配がないので、どうやら何かの理由で捨てられてその場所を自分の居場所と思い定めて頑張っているようでした。
かなり痩せていて、食べるものの十分にない様子だったので、散歩のたびにその草むらに食事と水をおいていくようにしました。そのうちに、他にもその存在に気づく人がいたのか私たちがおいていった食事以外にも別の食べ物がおかれるようになりました。
ユングとボニーは最初は不思議そうにそのワンコを見やっていたのですが、そのうちになじんでしまったのか、嫌がるそぶりもなく、かといって仲良くするわけでなく、いってみればいい意味での無視状態で距離感をとっていました。そのうちに、そのワンコは私たちを見つけると、つかず離れずで散歩の後についてくるようになりました。そして、家の前まできて、「もう帰りなさい」と声をかけると、とぼとぼと元きた道を帰っていきました。
最初はかなり弱っていたようなのですが、その草むらに住み着いてから食事だけはいろいろなところから差し入れられるためか、日を追うにつれて少しずつ元気になっているようでした。年の暮れの12月の中頃には通勤時に住宅地の中を歩いている姿をよく見かけるようになりました。こうなると、その姿を見かけた犬嫌いの人が保健所に通報して捕獲されてしまうのではないかという心配がでてきました。
そのころには、必ず私たちの後をついてきて、家の前まできては引き返していくという、二人(私と妻)と二匹(ユング&ボニー)と一匹(後のラッキー君)による不思議な散歩が毎日続くようになっていました。
そのワンコは本当におとなしいワンコで、他の犬や人にほえているところは一度も聞いたことがありませんでした。様子を見ているかぎりでは、ユングやボニーとも何とか折り合いをつけて一緒に暮らしていけそうな雰囲気です。それに、ボニー君自身も赤ちゃんの時に捨てられていたのを保護したワンコですし、2匹が3匹になっても何とかなるだろうということで、1月の下旬に腹を決めることにしました。
何よりも保健所に捕獲されてしまうことも心配でした。
その日もいつものようにユングとボニーをつれて散歩に出かけると、いつもの草むらのところからそのワンコが姿を現して後をついてきました。そして、家の前まできたときに、「さあ、おいで。」といって門の中に呼び込みました。その時に、ラッキー君がどのような表情をしたのかはなぜか思い出せません。ただ、いわれたとおりに庭の中に入ってきたので、「さあ、こっちだよ」と今は全く使っていない犬小屋の方へつれていくと素直にその中にはいって丸くなりました。
忘れもしない、12月22日の夜のことでした。
翌日、あまりにも汚かったのでシャンプーをしたのですが、嫌がることもなくされるがままにしていました。バスタオルでゴシゴシと拭いてあげると、そのまま犬小屋の方にいって丸くなって眠ってしまいました。本当に、おとなしくて、ひっそりとしたワンコでした。
ところが、今となっては保護してから何日後ぐらいだったのかは思い出せないのですが、そのワンコが突然行方不明になるという事件が起こりました。「まさか?」と思ってそのワンコが住みかにしていた草むらのところに走っていって見ると、そこでうずくまっているのを発見して、いささか胸がつぶれるような思いにさせられました。同じ事が、その後にもう一度ありました。
おそらく、捨てられた過去を持つワンコにとっては、私たちの気持ちを信じたいと思いながらも、100%信じ切ることが出来なかったのでしょう。あの草むらはそのワンコにしてみれば、自分の力で獲得した自分のものだけのよりどころだったはずです。その、最後の頼みの綱となる草むらを放棄する決心はつかなかったのでしょう。その後、完全に我が家の一員となってからでも、散歩のたびにその場所をチェックする習慣は長く続きました。
ここにきて、私たち二人は本当に腹を決めました。
二回目の脱走をはかったワンコを家に連れ戻ってきたときに、玄関のドアを開けて「さあ、中に入りなさい」と家の中に呼び入れました。
その時のラッキー君の表情だけは今も鮮明に覚えています。何度声をかけても、「本当に入っていいんですか?」という表情で何度も私たちの顔を見上げていました。
やがて、おそるおそるという感じで家の中に入ってきました。
さあ、そこで大変だったのがユングとボニーです。
家の片隅にある犬小屋の中でいるうちは無視を決め込んでいたのですが、家の中で一緒に暮らすとなると態度を一変させて、執拗に後をつけてそのワンコの匂いをかぎまわりました。
実はこの行動はボニー君が初めて我が家にきたときにも同様で、ユングは一晩中ボニーの後をつけまわして匂いをかぎまわりました。おかげでボニーは一睡も出来ずにヘロヘロ状態になったのですが、今度はその対象が新参者のワンコとなりました。ただし、以前はユング一匹だったのが今度はユングとボニーの二匹がかりだったので彼も大変だったと思います。
ただし、この通過儀礼をクリアしないと仲間としては認めてもらえないようなので、ユングとボニーには制止はしないで好きなようにさせておきました。ワンコが少しでも動くとその後をつけ回していたようで、結局そのワンコもかつてのボニーのように一睡もできなかったようです。でも、それで、ユングとボニーは大歓迎というわけではなかったのでしょうが、渋々ながらもその新参者を群のメンバーとして受け入れたようです。
そのワンコには「ラッキー」と名前をつけました。
我が家にやってきたのが年末だったために、「年末ジャンボ宝くじ」があたらないかなと言う、いささか志の低い理由でつけられました。
残念ながら、その年も、さらにその後もずっと宝くじには当たらずじまいなのですが、それでも、その年は新しいメンバーをつけ加えて賑やかな年の暮れと新年を迎えることになったわけです。(続く)