PCオーディオの可能性

ずいぶんと古い話になりますが、こんな文章を書いたことがあります。
この中で、「音楽を聴くためにまず最初にパソコンを立ち上げる日が来るのかもしれません。」と書いたのですが、音楽を聞く機器としてパソコンがトップに躍り出たという最近の調査を信じるならば、これは現実のものとなりつつあるようです。しかし、「パソコンとオーディオの世界は限りなくボーダーレスになっていくことで・・・再び違った形でオーディオの復興もあり得るかもしれません。」と書いた部分は情けないまでの大外れとなってしまいました。
PCオーディオをめぐる状況は極端な2極分化に陥っています。
まず、圧倒的大多数はチープとしか言いようのないパソコンの音で満足しているように見えます。音質に多少は気を遣っている人でもスピーカーを少し はまともなものに変える程度です。趣味としてのオーディオが衰退していく中で音楽を聞くための環境は貧弱になる一方でしたが、その貧弱化の流れが行き着く ところまで行き着いた形がこの一方の極にある「パソコンで音楽を聞く」というスタイルです。
しかし、他方では、極めて少数ではありますが、パソコンをハイエンドオーディオの世界に組み込もうとして躍起になっている人たちがいます。彼ら はPCケースだけで20?30万円などと言うとんでもないパソコンを自作して、それをハイエンドオーディオの機器に組み込んでは様々なトライを繰り返して います。

定価、215000円也のPCケース・・・サン ハイッ!(ノ^-^)ノ ̄ w(°0°)w オォー w(°0°)w オォー

例えば、Googleで「PCオーディオ」と検索してみると、商品紹介以外のページで真っ先に引っかかってくるのは「PCが最高級オーディオと肩を並べて高音質再生を行った! – デノンPCM-S1(1)」み たいな「ハイエンドオーディオ」+「パソコン」の情報ばかりです。現時点でオーディオとパソコンを結びつけることにもっとも熱心なのが「ハイエンドオー ディオ」という特異な世界に住む人たちですから、ネットの世界における情報もハイエンドオーディオの世界のものが中心とならざるを得ないようです。彼ら は、パソコンを音楽再生機器としてとらえたときの「問題点とメリット」をとことん追求して、ファナティック(失礼!!)なまでのトライを繰り返していま す。
しかし、「彼らの世界」はあまりにも「特異な世界」だと言わざるを得ません。ですから、ネット上などで彼らが熱心に発信している情報に接しても 圧倒的多数の人たちにとっては情報としての「実用性」を失っています。それどころか、彼らが熱心に突き詰めていけばいくほど、パソコンとオーディオを積極 的に結びつけるのは特殊な世界の話であって、普通の一般ユーザーにとっては関係のないものだと思わせてしまう危険性すら感じてしまいます。
ただし、物事というのはとことんまでやらないと本質は見えてきませんから、パソコンを音楽再生機器として使っていく上での問題点とメリットを明らかにしていく上で彼らが果たしてきた役割はとても貴重なものだったと言うことは付けくわえておきます。

「PCオーディオ」をめぐる状況はあまりにも過小か、あまりにも過剰かの両極端しか存在しないように見えます。
しかし、「PCオーディオ」の世界を楽しむためには『「ハイエンド」ではない「そこそこのオーディオシステム」』と『「特別仕様のパソコン」では ない「普通のパソコン」』を組み合わせるだけでも十分です。この「真ん中の世界」がすっぽりと抜け落ちているというのはとても不幸なことです。

オーディオシステムの入力系にパソコンを使うメリットは基本的に2つです。
まず第1は、音楽ソフトにおさめられているデジタル情報を完全な形で拾い出す能力はいかなるCDプレーヤーよりもすぐれていると言うこと。
第2は、そうして拾い出したデジタル情報を自由に操作できると言うことです。
もちろん他にもあれこれのメリットをあげることはできますが、本質的に重要なメリットはこの2点に尽きます。

CDからデジタルデータをリッピングすることのメリットへ続く