メモリ再生(12)~様々な再生の形(HDDオーディオプレーヤーの作り方)

気がつけば「メモリ再生」に関わるシリーズが10回をこえてしまいました。書かなければいけないことはまだまだたくさんありますので、どうやらこの課題で当分遊べそうです。(^^v

CDからNASへ

気がつけば「PCオーディオ」と言う言葉はいつの間にか「ネットワークオーディオ」という言葉に取って代わられ、今やこの二つはほぼ同義語として使われるようになっています。
しかし、考えてみれば、「PCオーディ」と言う概念は「ネットワークオーディオ」を包含します。何故ならば、ネットワークを持たないクローズな環境でも「PCオーディオ」は可能だからです。と言うよりは、経験の長い人ならば今さらという話ですが、「PCオーディオ」は単体のPCに「サウンドカード」や「オーディオインターフェース」(懐かしい言葉だ!!)を組み込み、それを既存のオーディオシステムに繋ぐことによって始まりましたから、もともとは「ネットワーク」とは無縁の形でスタートしました。

そこに、ネットワークオーディオという形を始めて持ち込んだのはどこかのヨーロッパの新興オーディオメーカーだったような記憶があります。そのメーカーの名前はすっかり忘れてしまいましたが、それを受け継いでさらに洗練させて立派な商売にしてしまったのがLINNでした。
アナログプレーヤーの老舗メーカーが、デジタルでは「CDプレーヤー」という常識を捨てて「ネットワークプレーヤー」という得体の知れないものに全面的にシフトしたときは殆どの人は「気が狂った」と思いました。しかし、その後の展開は今さら言うまでもないことであり、LINNの先見性には今さらながら脱帽せざるを得ません。

ネットワークオーディオがここまで普及し、おそらく遠くない将来においてCDプレーヤーを駆逐してしまうであろう理由は幾つかありますが、もっとも大きなものは以下の2点です。

  1. CDプレーヤーで再生するよりも音がいい(高音質)
  2. 膨大なコレクションから聞きたい音楽を素早く選ぶことができる。(利便性)

(1)の高音質に関しては異論があるかもしれませんが、「APU」などの一枚基盤に「lightmpd」や「Tiny Core」を組み込んだシステムにCDプレーヤーで対抗しようと思えばいくらかかるか分かりません。そして、あちこちのオーディオショーでいろいろなハイエンドプレーヤーを聞いた結果からすれば、それでも「APU+lightmpd」などには及ばない雰囲気があるのですから、これではまともな金銭感覚を持った人に対しては勝負になりません。

(2)の利便性に関しては、これは最初から勝負にもなりません。

しかしながら、その音質的な優位性と利便性は認めながらもLINNは高価に過ぎました。そして、それ以外のメーカーはあまりにも腰が重くていつまでもCDプレーヤーを作り続けていました。
そんな時に登場したのが「Voygae MPD」であり、さらにはそれを一枚基盤の「ALIX」の上で走らせて、自前のネットワークオーディオを作るという発想でした。この発想は有り体に言えば、高価に過ぎてLINNが買えないのならば、それと同等品を自前で作ってしまえというものでした。
そして、この試みはアマチュアベースで徹底に追求されて、ついにはLINNの尻尾を捕まえてしまったのです。

私がこの「LINNの尻尾を捕まえた」と表現したときには、少なくないオーディオショップ(と思われる)関係者やLINNユーザー(と思われる)の方々から批判をいただきました。
しかし、その時も申し上げたように、この「LINNの尻尾を捕まえた」と言う表現は決してLINNを貶めるためのものではなくて、リスペクトとしての表現でした。

そして、状況がそこにいたって、漸くにして腰の重かったオーディオメーカーもネットワークプレーヤーを作り出すようになり、ついには30年以上も続いたCDプレーヤーでの再生という形は主役の座を譲る時が来るようになったのです。
もちろん、CDの登場でアナログが消えなかったように、ネットワークオーディオの登場でCDが消えてなくなることはないでしょう。しかし、再生の主役が「CD」から「NAS」に保存された「ファイル」へと移行しつつあることは否定しようのない事実です。いや、「ファイル」は目に見えませんので、目に見える形で表現すれば再生の主役は「CD」から「NAS」に移行したと言った方が分かりやすいのかもしれません。

そして、この事実に気づいた幾つかのメーカーが「オーディオ用NAS」を発売するようになったのは、この流れから見れば当然のことだったと言えます。

しかし、その様な事実に気づいて「オーディオ用NAS」を開発し販売を始めたメーカーの方には申し訳ないのですが、「それでは、NASをマウントさせて音楽を再生させるというスタイルは、ネットワークオーディオにおける再生の形として本当にベストなのか?」と言う疑問が登場しつつあるのが、「今」という時代なのです。

NASからの再生は本当にベターなのか?

なんだかNASからの再生音は、今ひとつ良くないよね・・・と言う声が少しずつ聞こえるようになってきました。
そこで、USBなどの外部メモリに音楽ファイルを収納して、そこから再生させるという手段が提案されました。
さらには、この際「一枚基盤」のシンプルなスタイルは捨てて、HDDを積み込んだ普通のPCにMPDをインストールして、音楽ファイルはそのHDD上に保持して再生しようという人も現れました。

ただし、内蔵HDDやUSBメモリを使おうと思うと、当然の事ながら「lightmpd」は使えません。
おそらくは、「NAS」を使うことのデメリットが(あったとしても)、「lightmpd」を使えることのメリットによって帳消しになるか、それ以上のメリットがあったので、この動きが広まることはありませんでした。

しかし、導入の敷居が非常に高いのが困りものなのですが、「lightmp」と同じように完全にメモリ上で動作しながら、HDDもUSBメモリも使える「Tiny Core」が登場してくると、事情が少しばかり変わってくるかもしれないのです。
特に、ピーマンさんの提供していただいたRTカーネルを積み込んだ64bitOSの「Tiny Core」ならば、音質面で「lightmpd」にひけをとるところは全くありません。それでいながら、張性という点では「ネットワークオーディオ」に徹した「lightmpd」とは全く異なる懐の深さを持っているのです。

こうなってくると、NASからの再生を核としたネットワークオーディオは本当にベストなのか、ベターなのかという問いかけは検証に値すると言わざるを得ません。

私が提案した「メモリ再生」はOSが完全にメモリ上で動作するというメリットを最大限に活用した再生方法だと思っていたのですが、kのような文脈上に置いてみると、「NAS」を拒否してHDDやUSBメモリからの再生を模索した動きの延長線上にある試みだったことに気づきました。
そう言えば、SONYが「ネットワークオーディオプレーヤー」ではなくて「HDDオーディオプレーヤー(HAP-Z1ES)」なるものを発表しました。

LAN端子を備えているので普通に「ネットワークオーディオプレーヤー」としても使えると思うのですが、メーカーは内蔵されたHDDにファイルを置いて再生することを推奨しています。そのために、PCやNASからプレーヤーに内蔵したHDDにP音源ファイルを自動でコピーできるシステムも備えているようです。
これらの発想の根底にあるのは「NAS」は音が悪いという思いです。

そして、これまたSONYさんには申し訳ないのですが、手元に不要となったPCが転がっていれば、それに「」をインストールすることで、ほぼ同じ機能が実現できうることにも気づきました。

「HDDオーディオプレーヤー」を作る(Tiny Coreのインストール)

パソコン机の片隅に「VortexBox」をインストールしたままほったらかしになっているPCが一台あります。
今回はこれを「Tiny Core」をインストールすることで「HDDオーディオプレーヤー」に変身させてみようと思います。

使ったPCはこれです。

今は販売終了になっているのですが、スペックは以下の通りです。

  • CPU インテルR Dual-Core Atom プロセッサ D2700 (2.13 GHz)
  • メモリー 標準 4GB  DDR3
  • HDD 500GB HDD (増設不可)
  • 光学ドライブ スリムラインBlu-rayコンボドライブ,スロットインローディング式
  • 有線LAN 10BASE-T,100BASE-TX,1000BASE-T LAN
  • 前面 I/O USB 2.0 2
  • 背面 I/O USB 2.0 4
  • USB 3.0 2

ケースにはかなり肉厚のアルミが使われていますし、しっかりとしたインシュレーターも使われていて設置した感じは悪くはありません。
ただし、中国製と言うことなので、細かく見れば仕上げの安っぽさは否めませんが、4万円を切る価格を考えれば立派なものです。
唯一残念な点は「D2700」は64bi対応のCPUなのに、64bit命令の実行が不可能なように制限が掛けられていることです。ですから、64bit版の「Tiny Core」は使えません。

このPCに「Tiny Core」をインストールするのですが、手順は「USBメモリ」にインストールする時と全く同じです。
違うのは、HDDにインストールをするので、「USB-ZIP」ではなくて「Frugal」を選ぶことと、インストール先にはHDDを選択(おそらくは「/dev/sda1」)を選択することです。
それから、インストールする「Tiny Core」も最新版の「7」や「6」を選ぶと、MPDを組み込む時に現状ではエラーが出るので、古い「Index of /5.x/x86/archive/」から「CorePlus-5.4.iso」を選ばれることをお勧めします。

もちろん、腕に覚えのある方は最新版を選択しても「MPD」を組み込むことは可能ですが、難易度は一気に上がります。
インストールが完了すれば、インストール用のUSBメモリは抜いて再起動します。

後は何度も繰り返した内容ですが、必要な手順をコマンドだけで紹介しておきます。

tcユーザーにパスワードを設定

c@box:~$ sudo passwd tc

「openssh」をインストール

tc@box:~$tce

「s」→「ssh」→「5」→「q」→「i」

tc@box:~sudo /usr/local/etc/init.d/openssh start //SSH起動

これ以降はWindowsPCからSSH接続で作業した方が楽です。

「/opt/.filetool.lst」の編集

tc@box:~$ less /opt/.filetool.lst

//以下を追記

etc/shadow
etc/passwd
usr/local/etc/ssh/sshd_config
usr/local/etc/
etc/fstab
etc/securetty
etc/inittab
sbin/autologin
/opt/bootlocal.sh

「/opt/bootlocal.sh」の編集

tc@box:~$ vi /opt/bootlocal.sh

//以下を自分の環境に合わせて追記

/usr/local/etc/init.d/openssh start
#pkill udhcpc
#ifconfig eth0 192.168.0.25 netmask 255.255.255.0 broadcast 192.168.0.255 up
#route add default gw 192.168.0.1
#echo nameserver 192.168.0.1 > /etc/resolv.conf

sleep 1
mpd /home/tc/mpd.conf

固定アドレスを当てない時はこのまま、当てる時は環境に合わせてコメントアウトを外して編集。

tc@box:~$ filetool.sh -b //この辺で一度バックアップ!!

alsaのインストール

tc@box:~$ tce-load -wi alsa-config.tcz alsa-plugins-dev.tcz alsaconf.tcz alsa-dev.tcz //15分ほどかかります。

mpdのインストール

tc@box:~$ tce-load -wi mpd-minimal //「7」「6」のバージョンでこのコマンドを使うとMPDが起動しませんので注意!!

「mpd.conf」を編集する。

tc@box:~$ cp /usr/local/etc/mpd.conf.sample ./mpd.conf
tc@box:~$ vi /home/tc/mpd.conf
# An example configuration file for MPD.
# Read the user manual for documentation: http://www.musicpd.org/doc/user/

//以下を追記


music_directory "/home/tc/.mpd/music"
playlist_directory "/home/tc/.mpd/music/playlists"
db_file "/home/tc/.mpd/database"
log_file "/home/tc/.mpd/log"
pid_file "/home/tc/.mpd/pid"
state_file "/home/tc/.mpd/state"
sticker_file "/home/tc/.mpd/sticker.sql"
port "6600"
follow_outside_symlinks "yes"
follow_inside_symlinks "yes"
zeroconf_enabled "yes"
audio_output {
type "alsa"
name "My ALSA Device"
device "hw:0,0" # optional
format "*:24:2"
}
audio_buffer_size "4096"
buffer_before_play "50%"
filesystem_charset "UTF-8"
samplerate_converter "Best Sinc interpolato"

 

tc@box:~$ mkdir .mpd //「.mpd」を作成
tc@box:~$ filetool.sh -b //この辺で一度バックアップ!!

これでほぼ仕上がりなのですが、ここからは「sftpソフト」を使うことで、「Tiny Core」の仕組みを概観しながら「HDDオーディオプレーヤー」に仕上げていきます。

「HDDオーディオプレーヤー」に仕上げる

「sftpソフト」は幾つか使ったのですが、「HDDオーディオプレーヤー」に仕上げる上では「WinSCP」が最も使い勝手がいいと思います。
ダウンロードしてきてインストールをして、基本的な設定が済めば接続します。この時に、「表示」→「環境設定l→「概観」を選んで「エクスプローラー」にチェックを入れます。

チェックを入れてから再起動して、左側の画面で「/<ルート>を選べば、右側に「Tiny Core」の全貌(^^;が表示されます。

さて、問題は、500GbのHDDがどこあるのか?なのですが、正解は「/mnt/sda1」です。

ここで上の画像のように右クリックをすれば、WindowsPCと同じような感覚でディレクトリやファイルの操作ができそうなのですが、残念ながらルート権限が必要なのでエラーが出てしまいます。
もう一頑張りでコマンド操作を行います。

例えばここにファイルの置き場としての「/media」を作りたければ、

tc@box:~$ sudo mkdir /mnt/sda1/media //「/media」
tc@box:~$ sudo chown tc:staff /mnt/sda1/media //「/media」を「tc」ユーザーの持ち物にする

こうしてできた「/media」の中味は、ほぼWindosPCを操作するのと同じ感覚で扱えます。つまりは、SONYが「HDDオーディオプレーヤー(HAP-Z1ES)」で実現していたPCからプレーヤーに内蔵したHDDにP音源ファイルを自動でコピーできるシステムとほぼ等価です。

例えば、こんな感じで「MP3」と「WAVE」に分けておいていいかもしれません。

そして、転送するときは「ドラッグ&ドロップ」でOKです。ローカルのフォルダから右側の画面に「つまんで落とす」だけです。

そして、これこそ最後です。
この「/mnt/sda1/media」をMPDの「music_directory」である「/home/tc/.mpd/music」にシンボリックリンクを張っておきます。

tc@box:~$ sudo ln -s /mnt/sda1/media /home/tc/.mpd/music

そして、最後の最後に

tc@box:~$ filetool.sh -b //バックアップ!!
tc@box:~$ sudo reboot再起動

これで、無駄に転がっていたPCも立派な「HDDオーディオプレーヤー」に変身です。
現在、私はこれをサブシステムの再生用に使うことにしました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です