少し間が開きました。
しかし、その間に何人かの方から「cPlayとcMP の音質の良さに驚かされました。」と言うようなメールを頂きました。よかった、自分の独りよがりでなくて・・・と、胸をなで下ろしています。
PCオーディオを始めた頃は、何の疑問もなくゲイツ君のプレーヤーやアップル君のプレーヤーを使っていました。その後、この世の中には、「foobar」とか「Lilith」なんて言うソフトが存在して、そう言うのを使うとゲイツ君のプレーヤーなどとは「隔絶」した音がすることを知らされて大喜びしたものです。そして、「Frieve audio」に出会って、世の中、上には上があるものだと驚かされたものです。
しかし、ここまでくると、これからはOSそのものを音楽再生に特化したものにしないかぎり、小さな前進はあっても、かつてのようなゲイツ君のプレーヤーから 「foobar」や「Lilith」、「Frieve audio」に切り替えたときのような大きな前進はないだろうと思っていました。
それだけに、「cMP2」に出会ったときは、「やられた!」と思いました。
だって、少しでもいい音を目指してみんなが「使いこなし」として実践していたことを、ほとんど全てソフト的に実現しただけなのです。
PCは徹底的にチューニングして音楽再生に不要なプロセスは動かさない、ファイルはHDから読み込むのではなくてメモリをディスク化してそこへコピーしてから再生する、そして最後は「explorer.exe」をキルする。
面倒くさいなと思いつつも、それでもそう言う「おまじない」をすると確実に音質はアップするので、みんなやっていたことなのです。
ですから、「cMP2」のコンセプトは、そういうPCオーディオ派が積み重ねてきたノウハウを結晶化させたものなのです。一つ一つの内容を見ていくと、人を驚かすような新しい技術が投入されているわけではありません。しかし、「やるべき事」、いや、「やらなければいけない事」は一切の手抜きなく愚直なまでに実行しています。
そして、そう言う「愚直」さを積み重ねていくと、単純な「使いこなし」の積み重ねだけでは到達できないところにまで音質を向上させせられることを事実で示したのです。
人は壁にぶつかったと思うと、往々にしてコンセプトを見直して事態を一気に打開しようとします。しかし、不幸な事に、そう言うコンセプトの切り替えは事態をより一層悪くする事が多いです。なぜなら、「壁」と見えたものの大部分が、「やるべき事」「やらなければいけない事」を曖昧にしているがゆえに引き起こされている事が多いからです。そして、「やるべき事」を「やりきる事」もできないような姿勢の中で思いついた「新しいコンセプト」などと言うものが正しい方向性を指し示すはずがないからです。
おそらく、「cMP2」がやろうとしている方向性で、新しいチャレンジが次々登場すると思われます。とくに、使い勝手の部分ではあまりほめられたものではないので、そのあたりの改善はされてくるでしょう。そして、現行のWindowsOSの範囲でやれる限界までしゃぶりつくした向こうに、音楽再生に特化した新しいOSの姿が見えてくるでしょう。
さて、愚にもつかない前置きが長くなりました、本題に入りましょう。
この1週間ほど、あれこれと使い込んでみて気づいた点を報告して、「cMP2」のシリーズをひとまず終わりたいと思います。
1.アップサンプリングの功罪
「cPlay」には「SRC」と「SoX」という2種類のリサンプラー(って、言うのかな?)が入っています。
「Frieve audio」を使っていたときは、インターフェイスとの相性が悪いのか、96Khzまでしかアップサンプリングできませんでしたが、「cPlay」では何の問題もなく196Khzまでアップサンプリングできます。
ただ、このアップサンプリングというのは「功罪」相半ばしますね。
最初は面白いのであれこれ試してみるのですが、結果的には音が薄くなるような傾向があって、それよりは44.1Khzのゴリゴリ感の方が好ましく思えて、最後は使わなくなってしまうと言う人が多いようです。私もそうでした。
しかし、「SRC」の「145db」にチェックを入れた状態で、「88.2」もしくは「176.4」を選択すると、悪くないのです。アップサンプリングしたときの最大の不満は音が薄くなる事でしたが、この選択だとその様な不満はほとんど感じません。そして、アップサンプリングしたときの利点、天井が高くなったような音場の広がりや背景の静けさなどはしっかりと確保されています。
そして、このアップサンプリングによる恩恵を最も多く享受したのがセル&クリーブランドのコンビによる録音でした。
このコンビの音楽が素晴らしい事は言うまでもないのですが、録音に関しては不満なしとは言えませんでした。とりわけ問題だったのは、ファーストヴァイオリンの音のきつさでした。
とくに酷いのが、67年に録音されたモーツァルトのト短調シンフォニー、演奏そのものは本当に素晴らしいのに、あの音のきつさは何とかならないのか、と言われ続けてきました。
完璧主義者と言われたセルがどうしてこんな音にOKを出したのか実に不思議だったのですが、おそらくは指揮台からオケの音を聞けばこんな風に聞こえたのだろう、等と言われたものでした。
ところが、「SRC」の「145db」で176.4Khzにアップサンプリングした音からは、その様な「きつさ」は綺麗に消えてしまいました。それは喩えてみれば、天井が低くて窮屈そうに頭をかがめていたのが、すっと背筋が伸びたような風情です。きついと思われていたファーストヴァイオリンは強弓を渾身の力で引き絞ったような緊張感をみなぎらせながらどこまでも伸びていきます。
なるほど、セルがプレイバックで聞いたであろう音はきっとこういう音だったんだろう、と納得できるような世界が展開します。
ここからは、私の妄想です。
きっと、セルがOKを出した音に録音技師は顔をしかめたはずです。なぜなら、今そこで鳴っている音は素晴らしくても、それが家庭用の再生機器で鳴らされたときには、ファーストヴァイオリンの音がきつすぎる事が彼には分かっていたからです。
おそらく彼はここで鳴っている音と、それが一般の家庭で再生されたときの音とでは大きな違いがある事を説明したでしょう。
しかし、あの完璧主義者のセルにしてみれば、今ここで完璧に鳴り響いているクリーブランド管の音に手を加えて「聞きやすく」するなどという事は言語道断だったはずです。
よって、録音技師の必死の説得も実を結ばす、このコンビの録音は「あのような音」でリリースされる事になったのです。
もちろん、以上は全くの妄想です。しかし、その様な妄想を抱かせるほどの変化なのです。
しかし、全てが全て、アップサンプリングした音が素晴らしいわけではありません。
たとえば、モノラルの古い録音などは下手にアップサンプリングすると古さを際だたせる方向にはたらくようで、そういうものは素の44.1Khzがよろしいようです。
それに、そもそもどちらが優れている、と言うような話ではなくて、煎じ詰めれば「好み」みたいなもので決まる部分もありますから、素の44.1Khzで再生した方が「いいな!」と思えるものもたくさんあります。
とくに、私が使っているインターフェイスの「Fireface 400」との相性で言えば、バッファを最小の48サンプリングにすると、アップサンプリングできなくなります。ところが、48サンプリングの44.1Khzで再生した生成りのような肌合いがする音はとても魅力的なのです。
こうなると、アップサンプリングすべきか否かは、個々のソースとの相性で吟味熟考する必要があります。
しかし、考えてみれば、アナログの時代には、ソースによってカートリッジを変更していたもので、それがまた趣味としてのオーディオの醍醐味でした。そう考えれば、アップサンプリングの選択もその様な趣味性の一つであり、「面倒くささ」も楽しみのうちだと考えれば、これもまた実に楽しい「お遊び」です。
ただし、「SRC」の「145db」というのは、CPUのパワーをかなり使います。
基本的に「2Ghz以上のCore2 duo」でないと動きません。かなり贅沢な奴ですが、それに見あう働きはしてくれます。
2.「cicsMemoryPlayer.pth」からの細かい設定が可能
「cMP」がインストールされているフォルダをのぞくと、「cicsMemoryPlayer.pth」というファイルがあります。適当なテキストエディタで開くと、こんな風になっています。
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RIPPER #M “c:program filesexact audio copyEAC.exe”
CUE_PLAYER #N “c:program filescics PlaycicsPlay.exe” %C
LIBRARY_MANAGER “c:windowsexplorer.exe”
OSK “C:Program Filescics Memory Playerahkosk.exe”
PROCESS_EXPLORER “c:program filesprocess explorerprocexp.exe” /p:n
EXPLORER_KILL “c:windowssystem32taskkill.exe” /F /IM explorer.exe
TOUCH_SCREEN “c:program filestouchkittouchkit.exe”
・・・・・・・(続く)
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このファイルを編集する事で、「cMP2」の使い勝手をもう少し細かく設定する事ができます。
まず1行目はリッパーに関する設定で、リッパーはデフォルトで「exact audio copy」を使うようになっているので、
RIPPER #M “c:program filesexact audio copyEAC.exe”
となっています。
違うものを使いたいときは、ここを編集すればいいです。
また、再生ソフトには当然のことながら「cPlay」がデフォルトになっているのですが、どうしても「foobar」を使いたいという人もいるでしょう。
そう言うときは、2行目をこんな風に編集します。
CUE_PLAYER #N “c:program filescics PlaycicsPlay.exe” %C
↓
CUE_PLAYER #m “c:program filesfoobar2000foobar2000.exe” %C
ただし、「Frieve audio」はCUEファイルを読み込めませんので、使いたいと思っても指定してはいけません。
これ以外にも、
OSK “C:Program Filescics Memory Playerahkosk.exe”
と言うのは、リッパーを起動したときに同時に起ち上がってくるソフトキイボードに関する指定です。PCで使っているときはキイボードから直接入力するでしょうから、これは邪魔なだけですので削除しておいた方がいいでしょう。それでも、起動してくるときは「ahkosk.exe」を「aahkosk.exe」とでもリネイムしておきましょう。
それ以外にも、このファイルからソフトの挙動を変更できますので、あれこれ確かめてください。
3.「Timer」のチェックは外そう
最後はホントに「小ネタ」ですが、意外なほどに効きます。
それは、「cPlay」の設定画面にある「Timer」のチェックを外す事です。
これを外すと、再生中に表示されるランニングタイムが「00:00」のまま動かなくなりますが、意外なほどに音質は向上します。音楽再生中は不要な仕事はさせないという原則がここにも適用されます。
残り時間を気にしながら音楽を聞く奴なんていないはずなのに、なぜかこれが「オフ」にできるソフトってありませんでした。
こんなところにもこのソフトの「愚直」なまでのまじめさを感じます。
私も、cissplayを知って更にPCオーディオに夢中になっていますが、
cMPでライブラリーのフォルダの設定でデスクトップしか設定フィルダが
でてきません。どうすればほかのドライブが設定フォルダにでてくるのか教えてください。お願いします。
岩本
私の場合は、cMPのSettings画面から「Library」の「Add」をクリックすれば、そこから問題なくCUEファイルを格納したフォルダを指定できています。
また、この画面からはいくつでもフォルダが指定できます。
作者のサイトでこのSettings画面について記述してあるのは以下のサイトです。
http://cplay.sourceforge.net/pmwiki.php?n=CMP.11CMPShell
また、あれこれの不都合についての議論をする場としてForumも設けられていて、活発に論議されています。ためしに「Library」という用語で検索をかけたのですが、残念ながらデスクトップしか読みこないというような不都合は報告されていないようです。
どなたか、同じような症状が起こっている方はおられるでしょうか?