大阪ハイエンドオーディオショーの印象など(3)

今月の7日(金)~9日(日)、心斎橋のハートンホテルで行われた大阪ハイエンドオーディオショーの印象についての続編です。

LINN 非常に練れたシステム

アキュフェーズとラックスマンの「日本的美」を確認した後にLINNのブースへ足を運びました。

LINNについては、この8月に河口無線の試聴室でそれなりに聞かせてもらいました。
その時の経験を元に「APU1Cに対応したlightmpdの実力チェック~LINNの尻尾がついに見えた!!」というページで以下のように報告をさせていただきました。

「PCオーディオに長く取り組む中で目指してきた音というのは、結局はLINNが提案してきた音の世界だった事に気づいたと言うことです。

改めて、ディスクレスの世界に道を切り開いたLINNの先進性と、その提案をとてつもなく高いレベルで現実のものとした彼らの力量には尊敬の念を禁じ得ません。
とりわけ、音の入り口から出口まで完璧に管理しきった「Exakt システム」は彼らの挑戦の到達点を示すもので、PCオーディオが目指すべき方向性を示してくれるものだと感じました。」

率直に言ってLINNが提案するコンセプトとそれを現実のものにする技術力を尊敬しています。そして、尊敬しているが故に、それは「超えてみたい」壁でもあるのです。
おそらく、もう少し年を重ねて、あれこれ弄る元気がなくなれば、今のシステムを全てどこかに押し込んで、あのシンプルきわまるLINNのシステムに入れ替える時がくるかもしれません。

誰かが、このシステムのことを「超高級カセットデッキ」みたいなものだと言っていました。私はもう少しおしゃれに「牢獄の平和」という言葉を奉りたいと思います。
しかし、口はばったい言い方になりますが、今はライバルです。

LINNのブースはビジネスホテルの普通の客室を使っていましたので、お世辞にもいい環境とは言えません。しかし、そんな環境でもキッチリとした良い音を聞かせていました。
ブ-スは二部屋で、片方には大型のスピーカー、もう片方には小型のブックシェルフ型のスピーカーが設置されていました。

他のメーカーだといろいろなアンプやプレイヤーが所狭しと並べられているのですが、LINNのブースはスピーカーとネットワークプレイヤーが並んでいるだけのシンプルきわまりない佇まいです。
特に、小型スピーカーのシステム(おそらく「AKURATEシステム」だったと思います)はトータルで200万円程度という事なので、「いい音で音楽は聴きたいが、オーディオ的なこだわりはない」という人ならば飛びつきたくなるようなシステムだと思いました。

AKURATE EXAKT
AKURATE_EXAKT

本当に、何の苦労もなくこの音が手にはいるのですから、非常に練れたシステムだとは言えます。

ELAC クオリティの高さを実感

最後に足を運んだのが、本館の方にブースを構えているELACのスピーカーでした。なんと言っても、次期スピーカーの最有力候補がこのELACなのですから、ここはじっくりと時間をかけて聞き込んできました。

鳴らしていたのは、(おそらく)「BS192 MEISTER EDITION」だと思います。

BS192 MEISTER EDITION

BS192_M

「BS192 ノーマルモデル」から260LINEに採用されている4ギャップJET Vに変更されたアップグレードモデルらしいのですが、ペアで定価17万円というのは、こういうオーディオショーの中では「激安」と思えるような機種でした。しかし、そのサイズからは想像もできないような堂々とした音で音楽を再生していました。
おそらく、ブラインドで聞かされて、このサイズのスピーカーを想像できる人はほとんどいないと思います。

おまけに、「CDプレーヤー+USB-DAC+プリアンプ」という機能が詰め込まれた「musicbook15」を「musicbook50」というパワーアンプに繋いで駆動しているのです。
アンプは大きけりゃいいと言うものではないのですが、パワーアンプの「musicbook50」はわずか3㎏あまりの超軽量級です。この超軽量級のアンプに36万円を出せる人はほとんどいないと思うのですが、それでも「BS192 MEISTER EDITION」を実に豊かに鳴らしていました。こう言うのを聞かされる、「D級アンプ」もかなりの線まできていることを実感させられます。

musicbook50

musicbook50

ちなみに、、「CDプレーヤー+USB-DAC+プリアンプ」という機能が詰め込まれた「musicbook15」の方は定価63万円です。(^^;

musicbook15

musicbook15

おそらく、こんな組み合わせでELACのスピーカー聞く人はいないだろうと思うので、それはいささか残念でした。
しかし、逆に考えれば「musicbook50」なんていうパワーアンプにそれほどの駆動力があるとは思えませんので、もしかしたらELACのポテンシャルはもっと高いと言うことも考えられます。やはり、ELACのスピーカーはかなりの有力候補といえそうです。
しかし、有力ではあるのですが、やはりあのメカメカしいデザインはどうしても好きになれません。

クオリティ面も考えてみれば、ELACの看板とも言うべき「BS314」あたりが有力候補かと思うのですが、デザイン面でどうしても踏み切れない私がいます。スピーカーというのは、音楽を聴くときにはどうしてもそれと向き合うのですから、あの面構えを見続けるのはちょっと辛いな・・・と思ってしまいます。

BS314

BS314

なお、今回の試聴では「BS314」も用意されていたのですが、残念ながら聞くことはできませんでした。
担当の方が、「BS192 MEISTER EDITION」を使って気持ちよく次々と音楽をかけ続けていたので、気の弱い私はスピーカーを変えてほしいとは言い出せませんでした。(^^;

最後にまとめとして・・・

駆け足でしたが、今回かなりまとまった数のスピーカーを聞くことができました。そして、いろいろ聞いてみて強く感じたことは、問題の多い環境でも破綻なく鳴るという小型スピーカーのメリットでした。

事前にはそれなりに準備はするのでしょうが、それでも大型スピーカーを問題なく鳴らすのは難しいようです。
最初に、ソナスの大型スピーカーのことをかなり否定的に書いたのですが、やはりああいう大型スピーカーを新しい環境でそれなりに鳴らすというのは非常に難しいのでしょう。あえて触れませんでしたが、JBLの大型スピーカなんかはもっと酷い音で鳴っていました。
ですから、大型スピーカーに関してはそのあたりの事情は割り引く必要はあるでしょう。

ですから、それと同じ事が、あまり恵まれていない我がリスニングルームにも言える事を認めざるを得ませんでした。
心のどこかに、もう少し大きいスピーカーを入れてみたいという思いもあったのですが、やはり現状のエレクタ・アマトールくらいのサイズが無難なようです。それに加えて高忠実な変換器というクオリティを持っていて、なおかつ部屋においても違和感を感じないデザインのスピーカーというあたりが譲れないラインになりそうです。

ただし、この要求にぴったりくるようなスピーカーは今回のオーディオショーの中では見つけることができませんでした。
サイズとクオリティに関しては満足できるスピーカーは多かったのですが、どうしてもデザインの面で我慢できないものばかりでした。逆に、サイズとデザインでは申し分ないのですが、音の方向性で泣く泣く断念しないといけないと自分に言い聞かせたアッコルドみたいなスピーカもありました。

サイズ・クオリティ・デザインの三つを満たすような事を要求するのは高望みとは思わないので、、メーカーの人たちにはもう少し頑張ってほしいものだと思いながら帰路につきました。
(この項、終わり!!)