クロック・ジェネレーター(TASCAM CG-1000)の導入

今年も早いもので、残りは今日を入れてもわずか4日という事になってしまいました。
PCオーディオの世界は長い間「ドッグイヤー」と言うことが言われてきたのですが、どうやら2014年はそう言う速い流れに急ブレーキがかかった年として記憶されそうです。

その一番の原因はやはり「MPD」という提案がダントツに優れていて、さらには、それをどういうシステムの上で走らせるかという二次的な提案に関しても「lightmpd」の登場で一段落したことです。

もちろん、「lightmpd」を「APU.1D4」(もしくは「APU1C」)で動作させるのがベターなのか、それとも「beagleboneblack」もしくは「cubox-i」がベターなのかはいろいろ意見はあるでしょうが、それでもそのあたりの開発競争も一段落したようです。
この一段落は、おそらくは「MPD」に変わる画期的な提案でも登場しない限り続くでしょう。
もちろん、小刻みな改善は提案され続けるでしょうし、「lightmpd」を動作させる上でより魅力的な「基盤」が登場するかもしれません。しかし、この数年のように「画期的」と思えた提案がわずか数ヶ月で「過去の遺物」になるようなことは起こらないように思います。

どこかの掲示板でこのサイトのことを「次々と最強が登場するドラゴンボールみたいなサイト」と書かれているようなのですが、それはPCオーディオという川の流れに身を浸したことのない人間の発言です。
この数年のPCオーディオの世界は速い流れの中を泳いでいく気概のない人間にとってはとてもじゃないが対応しきれない世界でした。しかし、来年あたりからは、たとえば「APU.1D4+lightmpd」というシステムあたりを構築すれば、そう言う速い流れに対応しきれなかった人でも安心してPCオーディオに取り組める時代になるのではないでしょうか。

これから必要なのは「細部の磨き上げ」

システムのポリシーが固まってくれば、次に必要なのは「細部の磨き上げ」だと思います。
個人的には、デジタル・イコライザの導入を是非ともお勧めしたいと思います。BEHRINGERの「DEQ2496」は実売価格がわずか20K円程度なので、あまりにもチャッちく見えてしまうのですが、「DDC→DEQ2496→DAC」のように挟み込んで、完全にデジタル領域だけで仕事をさせれば、某国内or国外メーカーの800K円の機種と比べても遜色はありません。

ただし、基本が業務用の機器なので「分かっている人」が使うことを前提としています。ですから、民生機のように、買ってきてケーブルを繋いでポンと置けばお仕舞い!・・・というような簡単さはありません。
しかし、そう言う使いこなしの面倒を「趣味」ととらえれる人ならば、「細部の磨き上げ」の第一歩としては一押しです。

もちろん、欠点はあります。
特に以下の2点に関しては、価格が5倍程度になっても良いのでヴァージョンアップした機種を登場させてほしいと思っています。

  1. デジタル領域で動作させているときは何故か外部からのクロック入力ができないので、入力できるように対応してほしい。
  2. 24bit/96kHzまでしか対応していないので、少なくとも24bit/192kHzまで対応してほしい。

そして、この次に来るのが電源まわりの見直しか、クロック・ジェネレーターの導入あたりが課題になってくるのではないかと考えています。さて、どちらに手を付けようかと夏頃までは悩んでいたのですが、10月から11月にかけて、じっくりとクロックの問題を考える機会があったので、この年末の「細部の磨き上げ」はクロックだろう!・・・と言うことで「TASCAM CG-1000」を導入することにしました。

導入する機種はエソテリックの「G-02」も考えたのですが、「OCXO(恒温槽付水晶発振器)」を搭載していて価格が半分以下と言うことを考えれば、多少の使い勝手の難しさはあっても選択肢としては「TASCAM CG-1000」しかありませんでした。

さて、これが「TASCAM CG-1000」の外観です。

CG-1000

いささかどぎついオレンジ色の面構えなので、ラックの中にしまい込んでいます。(^^;

真ん中に「MENU」ボタンがあって、ここを押すと細かい設定が可能です。最初は戸惑うのですが、なれてしまえば実に良くできた設定画面です。

主な設定項目は以下の通りです。

  1. クロックの周波数の設定(32kHz,44.1kHz,48kHz,88.2kHz.96kHz,176.4kHz,192kHzが選択可能)
  2. OUTPUTS WORD 11/12の倍率設定(x1/4,x1/2,x1,x2,x4,x256が設定可能)
  3. 終端処理の設定(75ohm,50ohm,OPENが設定可能)
  4. クロックの出力レベルの設定(1.0Vp-p,1.5Vp-p,2.0Vp-p,2.5Vp-p,3.0Vp-p,3.5Vp-Pが設定可能)

これ以外にも細かい設定があるのですが、基本的にはこの4点くらいを自分の環境に合わせて設定すれば大丈夫なようです。そして、その設定は右側にプリセットのボタンが4つあるので、環境に合わせた設定を4つまでは記憶させることができます。
ただし、「聞くだけ」の環境ならば「44.1kHz」と「48kHz」の2系統の設定を記憶させておけば十分でしょう。

さらには、これが後ろ側の様子です。

CG-1000_1

見れば分かるように、出力端子が12もあります。(そんなに使う場所がありませんが・・・)
このうちの11と12の出力端子に関しては設定画面で必要な設定をしておけば「2xFs、4xFs、256xFs」の出力が可能になっています。ですから、基本はここに接続して、どういうクロックを供給すれば音質的にはベターなのかを試してみるのが基本だと思います。

さらには、10MHz対応外部入力端子も搭載されています。

CG-1000_10m

暇とお金があれば、どこかで中古のルビジウムクロックでも買い込んできて繋げば面白いかもしれません。
こういう拡張性があるのは楽しいですね。

さて、結局はどのように使ったのか?

この2週間ほど、あれこれと設定を変えて試してみたのですが、取りあえずは以下のようなシステム構成で落ち着いています。

Clock_5

「lightmpd」で88.2kHzにアップサンプリングしていますので、「TASCAM CG-1000」の出力は「88.2kHz」に設定をして、DACの「D-07X」に接続しています。

その後、いろいろ聞いてきて、最終的にはアップサンプリングはしないことにしました。やはり、どこかに変な艶みたいなものが載るような気がします。それと比べれば、素の状態の「44.1kHz」は地味ではあるのですが、生成りのザラッとした感触が魅力的です。ただし、「BEHRINGER DEQ2496」を使っていますのでビット数だけは16bit→24bitに変換しています。
よって、「TASCAM CG-1000」の出力は「44.1kHz」に設定をして、DACの「D-07X」に接続しています。

DDCの「hiFace-Evo」に関しては、「TASCAM CG-1000」ではなく専用の「Evo Clock」からクロックを注入するようにしています。まあ、手もとに「Evo Clock」があるというのも大きな理由なのですが、「TASCAM CG-1000」から「hiFace-Evo」にクロックを注入すると上手くロックしてくれないのです。(おそらく、どこかで設定が間違っていると思うのですが、イマイチよく分かりません^^;)

なお、「D-07X」のマスタークロックの入力(クロック設定が「DMCK」)は512xFsに対応と書いてあるのですが、なぜか「TASCAM CG-1000」の256xFs出力でもロックします。ただし、そう言う使い方はメーカーとしては保障していませんので、クロック設定を「IN」に設定して素直に88.2lHzを入力した方が音質面では有利なような気がします。

それから、「TASCAM CG-1000」はワードクロックの出力レベルを1.0Vp-pから3.5Vp-pの範囲で0.5p-pV刻みで出力端子ごとに変更が可能です。
「D-07X」のクロッシング入力のレベルは「矩形波 TTLレベル相当」「サイン波 0.5~1.0Vms(75Ω負荷時」と書いてあります。この「1.0Vms」というのと「TASCAM CG-1000」の1.0Vp-pというのが同じものなのかどうか、あれこれ調べてみたのですがよく分かりません。おそらく、雰囲気としては違うような気がするのですが、それでは「TASCAM CG-1000」の出力レベルをいくらに設定するのがベストなのかがよく分かりません。

ちなみに、「TASCAM CG-1000」のデフォルトは2.5Vp-pなので、取りあえずは変更しないで使っています。
ちなみに、1.0Vp-pに設定しても問題なくロックしますが、音質面では微妙に変化するような気はします。

<追記>

Vp-p (peak to peak)
Vrms (root mean square)

と言うことらしいです。
そして、同じ電圧を示すときにVp-p表記ではVrms表記の2√2倍(約2.828倍)の数値になる・・・らしいです。
ということは、「0.5~1.0Vms(75Ω負荷時」ということはおおよそ「1.4Vp-p~2.8Vp-p」というように理解すればいいということなのでしょうか?
と言うことは、デフォルト設定の「2.5Vp-p」でいいということになります。

出力設定を「1.0Vp-p」にすると、「D-07X」との間で一瞬ロックが外れますので、やはり無理な設定値だと言えそうです。

ちなみに、「Evo Clock」の出力レベルは「3.3Vpp」と記されています。
『「TASCAM CG-1000」から「hiFace-Evo」にクロックを注入すると上手くロックしてくれない』と書いたのですが、フォルトの「2.5Vp-p」では「hiFace Evo」に対するクロック入力のレベルとしては出力不足だったのかもしれません・・・、と思って出力レベルを3.0Vp-pや3.5Vp-pに設定したのですが、やはりロックしません。
よく分かりませんが、何故か相性が悪いようです。と言うか、もしかしたら「D-07X」の懐が広過ぎーー!!なのかもしれません。

<追記終わり>

さて、結局音はどのように変わったのか?

結局、一番の関心はここでしょう。
ひとことで言えば、最初再生したときは実に「微妙」な変化でした。
まあ、多少は音がシャキッとしたかな?と言うくらいのレベルでした。
変わったと言えば変わったと言えるし、気のせいと言えば気のせいと言えそうなレベルの変化でした。

ただし、これは「想定の範囲内」ではありました。
何故ならば、「OCXO(恒温槽付水晶発振器)」を搭載したクロック・ジェネレーターは動作が安定するまでに時間がかかるからです。

実際、「TASCAM CG-1000」には電源スイッチがありません。ですから、電源ケーブルを繋げばすぐにオンになってしまいます。
つまりは、いったんケーブルを繋げば、後は電源を入れっぱなしの状態にしておくのが正しい使い方なのです。

と言うことで、様子見の日が続いたのですが、大きな変化が起こり始めたのが3日目くらいからでした。
このあたりから音の傾向がはっきりと変化してきました。そして、その後も日を追うにつれて音はどんどん変化していき本領を発揮し始めたのは1週間程度が経過してからでした。

これは、冬の極寒期と言うことも差し引かなければいけないのかもしれませんが、間違っても途中で電源ケーブルは引っこ抜いてはいけないようです。

では、電源オンにしてから1週間が経過して音はどのように変化したのでしょうか?
その変化は「生々しさが増した!!」・・・という一言に尽きます。

とりわけ、ヴァイオリン・ソナタみたいな小さな編成の室内楽だと、まるで目の前で実際に演奏してくれているような錯覚に陥るほどです。(もちろん、錯覚なんでしょうが・・・^^;)
この変化をもう少しオーディオ的に、かつ分析的に表現すれば以下のようになります。

  1. 音楽全体の静けさが増す。
  2. 一つ一つの楽器の輪郭線がシャープになる。
  3. 楽器の響きはふんわりとした柔らかさが増す。
  4. 高域・低域ともに豊かさが増す。

(2)と(3)は矛盾しているように見えるのですが、実際の演奏を聴けば納得してもらえると思います。そして、そういう楽器の響きが静けさの中からしっかり立ち上がるからこそ、目の前で実際に演奏しているかの如き錯覚を引き起こしてくれるのです。
特に、ふんわりとした響きは質の良い水晶発振器に特有のもののようで、ルビジウムなどだともっとキリッとした音になるそうです。

また、クロックを外部から注入して渇を入れると高域がきつめに聞こえる・・・という話も聞いたことがあるのですが、私の環境では今まで以上に高域がしっかり伸びきってくれているというプラス面として感じ取れています。
また、低域も今まで以上に伸びているようで、チェロに代表されるような低弦楽器の響きが太さを増して聞こえるような気がします。(ただし、この点に関してはいささか微妙!)

ただ、何が原因かは分からないのですが、最初の頃は時々ロックが外れるときがありました。そんな時には「TASCAM CG-1000」は自動的にリカバリをして再生を途切れさせない機能があるようなので音楽が止まってしまうことはないのですが、明らかに再生音はショボくなります。
何が原因でそう言う現象が起こるのかがよく分からないのですが、そう言うときは仕方がないので一度再生をストップしてもう一度「D-07X」の電源を入れ直すと元に戻りました。

ただ、今で2週間ほど使っているのですが、そう言う不安定さは最近は起こっていません。
雰囲気的には、これからずっと電源を入れっぱなしにしておけばさらに安定度が増すのではないかと期待しています。

DDCとDACの両方に別個のクロック・ジェネレーターをあてがうというかなり贅沢な使い方をしているのですが、やはりそれだけの値打ちは十分にあると言い切れそうです。

ただし、上で述べたことは「あくまでも個人の感想であり、いかなる環境においても同様の効果を保証するものではありません」(^^:・・・ので、導入されるときはあくまでも自己責任でお願いします。


2 comments for “クロック・ジェネレーター(TASCAM CG-1000)の導入

  1. redram
    2015年1月21日 at 8:58 PM

    tascamに問い合わせてみました。

    1)校正は有料でしてもらるのか?>します(怖くて料金は聞いてないですが。。。)

    2)電源スイッチが無いけど夏場のエアコン無で放置でも大丈夫?
    >40度までは大丈夫。ただし本体の上には何も置かずに1U分のスペースを空けて下さい。
    >可能な限り風通しの良い場所に設置し、直射日光の当たらないように。
    >望めるなら24時間エアコンで温度管理してもらうのがベター。

    1については一安心ですが、2については何とも微妙な回答が、、、、
    管理人さんはどのような環境に設置してるのでしょうか?
    夏場の対策とかは今から考えてますか?
    私はまだ購入を検討中ですが。

  2. 2015年1月22日 at 9:40 PM

    管理人さんはどのような環境に設置してるのでしょうか?
    夏場の対策とかは今から考えてますか?

    大阪の夏は暑いというのが通り相場なのですが、私の住まうところは山の中なのでかなり気温は低いです。(クーラーを入れることはあまりありません。)
    なんの対策もしていない24時間駆動のサーバー機が熱暴走を起こしたこともない環境なので、おそらくは大丈夫でしょう。

    ただし、「ただし本体の上には何も置かずに1U分のスペースを空けて下さい。」・・・は大切だと思います。
    まあ、常識的な設置をればだいじょうぶでしょう。

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