寒いお正月でした。

年が改まって日本橋のオーディオショップもお店が開き始めたので、久しぶりに顔を出してきました。
どこもかしこもお客さんはまばらで、なかなかに厳しそうな新春風景でした。

そんな中で、少しばかり吃驚の出来事があったので報告しておきます。

メーカーの責任ではないので具体的な製品名を挙げても問題はないでしょう。
アキュフェーズのDIGITAL VOICING EQUALIZER「DG-58」です。

dg-58

すでに、何度も述べているように、これからのPCオーディオを考えていく上では、いらぬピューリタニズムは捨ててイコライザをシステムの中に導入することはとても大切です。
オーディオで最終的に突き当たる壁は部屋の音響特性です。部屋そのものを調音パネルなどで整えればいいと言う人もいますが、あれはどう考えても「気休め」の域を出ません。本質的には、音響特性に配慮して部屋を一から作り直さないと問題は本質的に解決しません。
しかし、そんなことができる人はほんの一握りの中のさらに一握りの人だけです。よほど入れ込んでいるマニアでもそこまで踏み切れる人は滅多にいません。

そうであるならば、我らが如き「並のマニア」ならば、イコライザを使って部屋の問題と折り合いを付けるのが一番賢い選択肢なのです。そして、アナログ領域でイコライジングすると確かに音質は劣化したのですが、デジタル領域で信号を受け取ってデジタル領域でイコライジングし、そしてイコライジングした信号をデジタルで送り出せば、音質の変化は限りなく小さくできることが分かってきたのです。

さて、そう言うことを前提にして、私が吃驚したとあるショップの話をお聞きください。
そのショップの試聴室はどう見ても恵まれたものとは言えず、システムの構成を見てみると、なるほどしっかりと「DG-58」が組み込まれていました。なるほど、これはなかなかに見識のある構成だと思って音を聞かせてもらったのですが、なんだか「寝たような」音がします。
ざっと見た感じ、5000~6000K円程度のシステムと見たのですが、それにしてはどうにもショボイ音です。
システムに「DG-58」を組み込んでいるので、部屋のマイナス面からはかなり逃げることができていると思えるので、そのショボサはかなり意外でした。

不思議に思って、じっくりとシステムの構成を確認してみて驚きました。
そのお店は、以下のようにして「DG-58」を使っていたのです。

Equalizer_1

つまりは、わざわざアナログ信号に変換してから「DG-58」に入力して、そこでもう一度AD変換してデジタル領域でイコライジングし、そのイコライジングしたデジタル信号を「DG-58」の中で再度DA変換してプリアンプに送り出していたのです。
なんという無駄、なんという馬鹿馬鹿しさ!!
これで音がショボくならなければ嘘です。
そこでお店の人に、普通はこういう構成でしょう・・・と以下のつなぎ方を提案しました。

Equalizer_2

私の中ではこれが常識です。
しかし、お店の人は胸を張ってこう答えてくれました。
「これがメーカー推奨の使い方です!!」

そんなバカな!・・・と思いました。
たとえば、音源の主役の一つがアナログレコードで、そういう多様な入力ソースに対応すると言うことで、以下のようなつなぎ方をするのならば理解できます。

Equalizer_3

と言うか、「DG-58」の800K円という価格設定はこのような使い方をしても音質の劣化を最小に留めるために必要なコストなのです。

しかし、CDトランスポートから取り出したデジタル信号をわざわざ1000K円もするようなDAコンバーターでアナログ信号に変換し、それをすぐに「DG-58」の方でAD変換しなければいけない理由が分からないと言ったのですが、彼は「これがメーカー推奨の使い方です!!」の一点張りでした。
これでは、1000K円もするようなDAコンバーターは音質を劣化させるためだけに存在しているように見えるのですが・・・とも言ったのですが、「これがメーカー推奨の使い方です!!」と胸を張るばかりです。

そこで、もしや、まさかとは思うのですが、天下のアキュフェーズがこのショップの人が主張するような使い方を推奨しているのだろうかと思って、帰宅してからメーカーのサイトを確認しました。
「DG-58」のカタログには接続例がいくつか紹介されています。
それを見ると、プリとパワーの間に挟み込んで、いろいろな入力ソースに対応できるような接続例は示されていますが、そのお店のような接続例は何処にも推奨はされてませんでした。さらに付け加えれば、「ディジタルでの接続例」もきちんと示されています。

あー、彼は今も「メーカー推奨の使い方」という嘘を広めているのでしょうか・・・。
そんなこんなで、ホントに寒いお正月でした。


1 comment for “寒いお正月でした。

  1. Fuji
    2015年1月12日 at 2:47 PM

    ユングさん、Fujiです。

    >普通はこういう構成でしょう・・・と以下のつなぎ方を提案しました。
    私の中ではこれが常識です。

    私もこの構成が常識だと思っております。で、私もアキュフェーズのカタログを見てみました。
    ”アナログでの接続例”では、アナログレコード、チューナー、CDプレーヤーなど全てのソースに対応させる場合はこの様な接続にするしかないと思います。(私自身この様な接続はしたく有りませんが。)
    次に、”ディジタルでの接続例”の中で”DP-720とDG-58を直接ディジタルで接続”これに関しては特に常識の範囲内と思いますが、”DG-58とDF-55接続したマルチアンプ.システム”の場合、両機種共デジタル機器ですのでプリアンプとメインアンプの間に接続するしかないのかなと思いますが、お店の人はこれを見てメーカー推奨だと胸を張って答えたんですかね。ただ、もし私でしたらこの様なつなぎ方はせず、DG-58はあくまでもデジタル領域で使用し、チャンデバはアナログで仕立てた方が良い結果が得られる様に思うのですが。(私自身チャンデバを導入する予定はありませんが。)

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