リッピング再考(2)

まず始めに断っておきますが、バイナリ的に一致するにもかかわらず最後の出口である「音質」という面において歴然たる差が出るというのが「リッピング」の不思議です。これを論理的に説明するのは現時点では難しいようなので、結論から言えば、どのようなことに配慮してリッピングを行えばより音質のいいファイルを抜き出せるのかは「分からない」と言うのが本当のところです。

以下、前置きとして述べる事は、色々な情報を寄せていただいた方にとっては「嫌み」に聞こえるかもしれないのですがご容赦ください。

取り組めば取り組むほど感じるのは「デジタルの世界」の奥深さであり、その奥深さゆえに、当初の通り一遍の理解では到底考えられないようなことが次々と引き起こされてきたのがPCオーディオの世界でした。そして、その様な事が引き起こされるたびに、色々な切り口でその現象を説明しようとする人が登場してきたのもまたPCオーディオの世界でした。

しかしながら、そう言う熱心な方々中には、その熱心さが過ぎて、その自論が理解されないと「違法とまでは言えないが不適切な言動(古いか・・・^^;)」で場の空気を悪くされる方が少なからずおられたのも事実です。
私もこのようなサイトを長年にわたって管理していますので、そう言う困った事態に陥ったことが何度かありました。

その経験のためか、そう言う場において「デジタルとは煎じ詰めれば高周波のアナログ信号である」とか「デジタルの根底には全てシッターに絡む問題が潜んでいる」みたいな主張に出会うと、本能的にスルーする習慣が身についてしまいました。
そして、個人的には、こういう「分からない事態」に出会ったときには「サスペンデッド」というスタンスを取ることにしています。

  1. 人間の聴感上、違いが感じ取れる(感じ取れる人が一定数いる)が理論的には説明しきれないことに関してはサスペンデッドにしておく。
  2. 現時点では「分からない部分がある」という度量を持つ。
  3. その事に関する「改善を訴える商品」に関しては排除する。

この結論に至る過程については「測定することの重要性と限界」というページで、地動説と天動説をめぐる「年周視差」をひとつの具体例として考えたことがあります。そして、結論として「理論的には説明しきれないことに関してはサスペンデッドにしておく。」としたのですが、それでもこの「サスペンデッド」と言う表現が自説の否定と映ったのか、「天文学に対する懇切丁寧な解説ありがとうございました」との捨て台詞を残して去っていかれた方もおられました。
おそらく、自分にとっては自明に過ぎるほどに自明な理論が他者には理解されない事へのもどかしさがあったのでしょうが、逆に言えば、「理解されない現実」に学ぶ謙虚さも必要ではないかと思わずにはおられませんでした。

と言うことで、以下述べることは、私という狭い範囲の中で有効だと思われた「一つの事例」の報告くらいのレベルで受け取っていただけたら有り難いです。
そして、「私はこういう事に気をつけていて成果があったよ」みたいな報告がいただけたら有り難いです。
現時点でのデジタルの世界に対する理解度を前提にすれば、最も必要なのは最前線からの「野戦部隊の司令官」からの戦況報告であり、間違っても中央司令部の参謀を気取っているようなご高説でないことだけは確かです。

光学ドライは何でも同じ・・・とは言えない。

まず最初に確認しておきたいのは、光学ドライブをどうするかという問題です。安物のPCに付属している光学ドライブでも、それなりに高価な光学ドライブでも、リッピングしたファイルを較べてみれば基本的にはバイナリ的には一致します。
随分昔(2009年)のことですが実際に実験を行って「リッピングについて」というページで報告したことがあります。

その時は、聞き比べてみても違いはそれほど大きいとは感じられなかったので、そのページでは「CDからのリッピングに関しては、よほど酷いPCやドライブを使わない限りは問題は起きないようです。」と結論づけていました。
しかし、2009年のWindowsPCの時代ではその違いはほとんど気にならなかったのですが、それ以後デジタルにおける再生環境が「Linux(OSの変更)→Voyage MPD(一枚基盤の上でMPDを走らせる)→lightmpd(システム全体をメモリ上で動作させる)→Tiny Core+メモリ再生(再生ファイルも含めてメモリ上で全てを完結させる)」と言うように研ぎ澄まされていくにつれて、その違いは次第に無視できなくなっていきました。

つまりは、デジタル環境における再生の精度が上がるにつれて、リッピングの過程で発生する些細な問題も見過ごされなくなったのです。そして、この最上流部で発生した問題は、その川下でどのような対策を施してもクリアできない性質のものなのです。

私は、長年にわたってPLEXTORの「Premium2」という光学ドライブを使ってきました。
この「Premium2」はネット上で「Premium2は最高のリッピングドライブであるという話は「都市伝説」だったかもしれないが、今となっては多くのユーザーが認めているので都市伝説から実話に格上げになっている。」と言われているドライブです。

Premium2

Premium2

ただし、「Premium2」は内蔵型、外付け形ともにかなり以前に販売が終了されていますので現在は基本的には入手不可です。
調べてみればネットオークションなどで出品されていることがあるようなのですが、落札価格は当時の「実売価格」を上回ることもあるようです。それだけ、未だに根強い支持があると言うことです。

しかしながら、こういう回転系の機構を持った機器を中古で入手することはお勧めしません。何故ならば、こういう高速で機械的に回転する機械というのはどれほど丁寧に使っていてもいつかは必ず必ず壊れるものだからです。そして、中古品の場合は新品と較べれば壊れる確率が非常に高いと言わざるを得ないからです。

現時点で、世間的にはパイオニアの「BDR-S09J-X」あたりの評価が高いようです。これをRATOCから発売されている「CDリッピング用 制振強化ケース」と銘打たれた「RP-EC5-U3AI」に入れて使うのがベストかなとも思っています。
ただし、「BDR-S09J-X」を「RP-EC5-U3AIに入れて使うとなると5万円近くになりますので、安い買い物とは言えなくなります。

内蔵型か外付け形か

次の問題として、光学ドライブは内蔵型か外付け形か、と言う問題があります。

元々は内蔵型の「Premium2」を使っていたのですが、その後USB接続による外付け形の「Premium2U」が発売されたので即購入しました。さらに、その後この外付け形は販売終了となり、さらには内蔵型の「Premium2」も販売終了というアナウンスがあったのでストックとしてもう一台購入しました。
この内蔵型(Premium2)と外付け形(Premium2U)に関しては、聞き比べを慎重に繰り返した結果「外付け形(Premium2U)」の方が音質的にメリットが大きいと判断して、長きにわたってそちらをメインで使っています。
とは言え、この内蔵型と外付け形による音質面での差異はかなり微妙です。

しかし、その違いの少なくない部分が「振動対策」に関わる問題ではないかと判断しています。
ですから、人造大理石のボードの上にインシュレーター(オーディオテクニカの安物です)をはかせ、さらには上から布でグルグル巻きにした鉛のインゴット(5Kg)で押さえ込んでいます。

ただし、この対策はかなり場当たり的なものなので、本当はフローティングボードのようなものをはかせた方がいいかもしれないとは思っています。
さらには、外付け形の「Premium2U」をそのまま使うよりは、内蔵型の「Premium2」ををRATOCの「RP-EC5-U3AI」に入れて使うのもいいかもしれない・・・等とも思案を巡らせていたりします。

USBケーブルをどうるか?

さて、内蔵型ではなくて外付け形を選ぶとなると、次はPC本体と接続するUSBケーブルをどうするか?と言う問題が発生します。

いろいろ試した結果、どんなケーブルでも同じ・・・とは言いきれないような気がしていますので、現在はエルサウンドの「データ専用USBケーブル汎用版」を使っています。もちろん、これがベストなのかどうかは分かりませんし、そもそもこんな部分に拘る必要があるかどうかに関しても確たる自信はありません。

しかしながら、外付けの光学ドライブとPC本体を接続するという「必要悪」が発生する以上は、できればノイズが乗りやすい電源ラインは断ち切っておきたいという思いがあります。
少なくとも、通常のUSBケーブルでは不可避な電源ラインに重畳してくるノイズは遮断できているという精神面での安心感はあります。

電源部分も無視できない?

次に気になるのは、光学ドライブを動作させる「電源」環境です。
世間には、「Premium2U」専用の「電源」という機器が存在します。
SAECから「PLEXWRITER Premium2U/JPB用 高性能DC電源装置」と銘打たれた「SDP-0512」です。

驚くのは、肝心の「Premium2」は販売終了になっているのに、この「SDP-0512」の方は今も販売が続いているのです。ただし、この「SDP-0512」には定価18万円という、何かの間違いではないか?と思うような価格が設定されていますので、さすがに試してみようという気は未だに起こっていません。

ただし、電源アダプターとコンセントを結ぶ電源ケーブルを付属の安物のメガネケーブルからaudio-technicaの「AT-PC500」には変えてみました。
もちろん、USBケーブルにせよ、電源面にせよ、それ一つの対策で大きく音が変わるわけではないと思うのですが、こういう細かい対策を積み重ねていくと、最後にはトータルでかなり音質の改善が見込まれるのがPCオーディオの怖いところです。
ですから、気になる部分についてはそれなりに対策を施しておいた方がいいでしょう。

読み取り速度をどうするか

最後に、光学ドライブをめぐる問題として「読み取り速度」に関わる問題があります。
これは一般的にはリッピングソフトの方で設定することになるので、話題としてはそちらの方に回した方がいいかもしれないのですが、実際に読み取っているのは光学ドライブの方なので、こちらの方で取り上げておきます。

この読み取り速度は一般邸には最高速(一般的には40倍速)から4倍速の間で設定できるのが一般的です。
雰囲気的にはできる限り低速で読み取った方が音質面では有利なように思えます。最高速の40倍速よりはできる限りの低速で丁寧に読み取った方が、より正確にデータが拾い出せるような気がするからです。

しかし、私の狭い経験上では、この読み取り速度に関してはそれほど大きな違いは感じたことがありません。それどころか、どちらかと言えば高速で読み取れるならば高速で読み取った方が音質的には好ましく思えるような気もします。

普通に考えれば、物体は高速で運動している方が慣性の法則によって安定します。
光学ドライブのような回転系の機構では、低速で回転しているよりは高速で回転している方が安定しています。それは、独楽などを思い出せば簡単に了解できるはずです。

高速で回転する独楽はまるで停止しているかのように安定して回り続けますが、速度が落ちてくるにつれて次軸がぶれてきておかしな動きに変わっていき、最後は回転が維持できなくなって倒れてしまいます。つまりは、回転の安定性を高める上ではできる限り高速で回転させた方が有利なのです。
問題は、そうやって高速で回転させたときに、その高速に対応してCDに刻まれた穴(ビット)をピックアップが正確に追随してデータを読み取れるか否かです。

結論から言えば、昨今の光学ドライブの性能からいって、そう言う高速で回転させることでデータの読み取りに支障をきたすような事は考えにくい、と言うのが正解でしょう。
ただし、ときにはCDの表面に傷があったり指紋の跡(経験上、これは傷よりも始末が悪い)がついていたりして読み取りに支障が発生することがありますが、そう言うときにはソフトの側で対応してくれると助かります。ですから、基本的には読み取り速度は最高速をデフォルトにしておくのが正解ではないかと考えています。

光学ドライブに関わるまとめ

と言うことで、リッピングに関わる光学ドライブの問題は以下のようになると言うのが、現時点での私の考えです。

  1. 光学ドライブは読み取り能力に定評のある「外付けタイプ」を選ぶ。
  2. 常識的な範囲で適切なUSBケーブルを選択する
  3. 常識的な範囲で振動対策を行う。
  4. 常識的な範囲で電源対策を行う。
  5. 読み取り速度はいたずらに低速設定にはしない。

次回は、リッピングソフトに関わる問題を取り上げます。


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