Wilma Cozart(5)~レスピーギ:ローマの松

今週からはコザートの「落ち穂拾い」です。何とか「音圧ブースト化の魔手」から逃れている音源を「Mercury Living Presence」シリーズからレスキューしていきたいと思います。
まあ、我ながら酔狂な作業だとは思うのですが、思わぬ功徳もあります。

その功徳を受けた第1号がこれです。

レスピーギ:ローマの松 アンタル・ドラティ指揮 ミネアポリス交響楽団 1960年4月録音(Mercury Living Presence2 CD2)


この録音をアップしたときにこんな事。を書いていました

「オーディオが広く普及し、その「威力」を世に知らしめるためには、レスピーギの管弦楽曲は最適のアイテムでした。とりわけ、ローマの松は極限のピアニッシモから爆発するフォルティッシモまで含んでいますから、まさにオーディマニア御用達の音楽といえました。
ドラティもまた、モノラルの時代に一度、そしてステレオ録音になってからもう一度録音を行っています。
こういう事には聡いカラヤンも58年にはステレオでローマの松を録音しています。すべての楽器が力ずくではなく、しなやかに鳴りきって、その頂点で目も眩むような大爆発を演じて見せたフィルハーモニア管との演奏は実に見事なものでした。

ところが、ドラティの方は、その爆発する部分が意外と大人しいのです。
これを残念と見る向きも多く、そして私もその一人なのですが、どうやら、ドラティという人は最期の最後で「アホ」になることが出来ない人だったようです。当然、やろうと思えばやれたはずなのですが、それをやらないところにドラティという人の本質が潜んでいるように思います。」

うーん、かえすがえすも阿呆なことを書いてしまった。
この録音は不思議なことに極めて真っ当なデジタル化が為されているのです。波形を紹介しておくとこんな感じです。

第1部 ボルゲーゼ荘の松

第2部 カタコンバ付近の松

第3部 ジャニコロの松

第4部 アッピア街道の松

問題は最後のアッピア街道の松でしょう。

第3部のナイチンゲールさえずる静かな世界を引き継いで、はるか遠くからローマ正規軍団が最弱音で近づいてきます。やがてその軍団の足音が少しずつ大きくなってくると「ラッパの音がとどろき、太陽の光が射すとともに、執政官の軍隊が現われ、聖なる街道を行進して、首都へ凱旋していく。」というブッチャキサウンドへと盛り上がっていて音楽は締めくくられます。

厳しく見れば、この最強音の部分で2カ所ほど危ない部分があります。聞いてみれば、その危ない部分ではっきりとクリッピングしてるような気がします。おそらく、シンバルがパルス的に入っている部分ではないかと思うのですが、そこを除けば極めて真っ当に編集されています。
ですから、何故に私が「阿呆」な音を書いたのかは察していただけたと思います。

こういう真っ当に編集された音源はプリアンプのボリュームを通常よりは少し上げてやる必要があるのです。
しかし、こういう類の音楽でボリュームを上げるというのは勇気がいります。そして、その勇気がなかったがゆえに(^^;「爆発する部分が意外と大人しい」などと判断してしまい、その感想を素直に記してしまったのです。

何度も書いていますが、私のボリューム位置のデフォルトは12時です。さすがに2時まで上げるのは躊躇われますが、最低でも1時まで上げないとこの演奏の真の姿は見えてきません。もしも「ローマの松田から」などと考えて控えめに11時なんかにしていると、ドラティがやろうとした音楽の姿は全く伝わってきません。そして、私のように「阿呆」な事を書いてしまう仕儀となるのです。

今回、「功徳」と書いたのは、あらためて音楽を聞くときのボリューム設定の大切さを教えてもらえたからです。
しかし、制作サイドからしてみれば、音圧を上げてみたくなる背景がまさにここにこそあるのです。

優秀な編集というのは受け取る側にをそれを受け取るだけの志とクオリティが必要なのです。

何でもないことのように思われますが、音楽を聞くときにプリアンプのボリュームをどの位置に持ってくるのかというのは一筋縄ではいかない難しい問題をはらんでいるようです。
逆に言えば、そのボリューム設定がびしっと決まる人は、それだけでなかなかの達人だと言えるのかもしれません。

それから、この録音の聞き所は、第3部の「ジャニコロの松」から第4部「アッピア街道の松」の最弱音の部分でしょう。
第3部の月に照らされた静寂の世界がどれほど表現できているのか、そこで囀るナイチンゲールのリアリティはどうなのか、そして何よりも、最弱音でありながら尋常ならざる緊張感に満ちたアッピア街道の松の冒頭の部分がどのように再生できているのかは、システムのクオリティを容赦なく暴き立ててくれる部分だと言えます。

ただ、どうしてこういう真っ当な編集と言語道断の編集が同じシリーズの中でどう今日しているのかが本当に謎です。


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