アップサンプリングの論点整理(2)

CUEファイルが作れないという問題は解決しました

前回こんな事を書きました。
「それともう一つ、困った問題が、アップサンプリングしたファイルはうまくCUEファイルが作れないという困難にも直面しています。CUEファイルの作成は「RecursiveCueCreator」というJavaで書かれたソフトを使っているのですが、何故かアップサンプリングしたファイルは読み込んでくれないのです。
これもまた、今のシステム環境では何とか解決しないと「使えない方法」になってしまいます。」

これは全くのスカタンでした。
言葉で説明するとものすごく複雑になってしまうのですが、事は凄く簡単でした。でも、同じミステイクを犯す人もあるかと思いますので、そのスカタンの内容について報告しておきます。

変換に使ったファイルはカラヤン指揮 フィルハーモニア管による「ローマの松」です。この録音はステレオ初期のものですが、最弱音の精妙さからアッピア街道の松の大爆発まで、実に見事にとらえきった素晴らしいものです。

変換元のファイルは、
ルートフォルダ「Composer」直下に「Respighi」-「Orchestral_music」-「Respighi_Pini_di_Roma_Karajan_58」という3段構成にして収納しています。
「RecursiveCueCreator」はオプション設定でこの3つのフォルダ名を読み込んでCUEファイルを生成するように指定しています。
ですから、生成されるCUEファイルは「Respighi_Orchestral_music_Respighi_Pini_di_Roma_Karajan_58.cue」という名前になります。
詳しい説明はさけますが、「cMP2」を使うときは、この設定がもっとも便利です。

これに対して、アップサンプリングして生成したファイルを当初は以下のようなフォルダ構成で収納していました。
ルートフォルダ「Composer」直下に「Up_Sampling」-「Respighi_Pini_di_Roma_Karajan_58」

ところが、何故かCUEファイルが生成できなかったのです。
少し悩んだのですが、「もしや?」と思って以下のようにフォルダ構成を変えてみました。
ルートフォルダ「Composer」直下に「Up_Sampling」-「Respighi」-「Respighi_Pini_di_Roma_Karajan_58」

すると、何の問題もなく「Up_Sampling_Respighi_Respighi_Pini_di_Roma_Karajan_58.cue」というCUEファイルが生成されました。
つまり、「オプション設定で3つの親フォルダ名を読み込んでCUEファイルを生成するように指定」している場合は、きちんと3段構成にしてファイルを収納しないとCUEファイルが生成されない「仕様」になっているようなのです。

個人的にはもう少し融通が利いてもいいように思うのですが、まあ「仕様」と言うことで納得しておきましょう。

アップサンプリングしたファイルを生成した方が音質的にはグッドですね。

さて、これで無事にアップサンプリングしたファイルもCUEファイルが生成できるようになりました。
これで、「cMP2」を使って、ほぼ同じ条件でリアルタイムで変換したときと比較できるようになりました。

アップサンプリングしたファイルの生成には「SSRC」というソフトを使いました。
リアルタイム変換は「cPlay」の「SRC 145db」のモードを使いました。

ただし、「SSRC」の方は「SSRC-GUI」をいうソフトを使ったので、「48、96、192」しか選べませんでした。「cPlay」ではいつも「176.4」を使っているのですが、今回は仕方なくアップサンプリング周波数は「96Khz」に合わせて比較しました。

まずは、再生時のCPUへの負荷ですが、リアルタイムの変換では10%前後の負荷なのですが、アップサンプリング済みのファイルでは1?2%程度の負荷でおさまっています。つまり、44.1Khzの素のままのファイルでも、96Khzにアップサンプリングしたファイルでも、CPUへの負荷はほとんど変わらないと言うことです。
まあ、当然と言えば当然ですが、やはり精神衛生上、この違いは大きいです。

さて、肝腎の音の方ですが、前回は「はっきり分かる程のアドバンテージが感じられない」と述べたのですが、条件をそろえた今回の聞き比べでは明らかに違いを指摘できます。

アップサンプリングしたファイルでは重心の下がった野太い響きになっていることが私の駄耳でもはっきり確認できます。
それに対して、リアルタイムで変換した音は、一見すると小綺麗なのですがいささか細身になっているのが分かります。

私は再生において、演奏する人の気魄やガッツみたいなものを感じ取りたいと思うので、方向性としては明らかにアップサンプリングしたファイルを再生した方が好ましく思えます。44.1Khzの素の状態で再生したときの「良さ」を殺さずに、そこへアップサンプリングしたときのメリットである音場の広がりが加味した雰囲気です。
それに対して、リアルタイムで変換したときは、綺麗方向に化粧がされすぎている感じです。しかし、これをいいと感じる人もいるだろうなと思わせるクオリティは持っています。やはり、CPUのパワーが増してくると、この負荷の違いは無視できる範疇におさまってくるのではないかと思わせるだけのクオリティは感じ取れます。
「アプリケーションのマルチタスク処理が高速化され、驚異的なデジタルメディアの作成が可能になります。」とうたっている「Core i7」だとどうなんだろう?という興味はあります。

ただ、この違いがCPUへの負荷と変換のアルゴリズムの違いという「合わせ技」の結果なので、厳密に較べるためにはアルゴリズムを合わせる必要があることは言うまでもありません。「cPlay」をハックするだけの能力はないので、「SRC 145db」で変換できるソフトを探してみる必要があるようです。

とは言え、いろいろなアルゴリズムを試したり、細かいパラメーターをいじったりしてアップサンプリングする楽しさは、もう一台外付けのHDを導入しようかなと思わせるだけの「力」はもっています。

次回は、いよいよ、脇によけていた「アップサンプリングすることに本質的なメリットがあるのか?」という根本的な問題について考えてみたいと思います。