アップサンプリングの論点整理(4) ?アップサンプリングすることに本質的なメリットはあるのか?

さて、新しい年度が始まって仕事の方がヒート状態で、帰ってきてから30分?1時間ほど音楽を聞くのが精一杯の状態でした。そのピーク状態もようやくにして一段落しましたので、続きを書いてみたいと思います。

まず、アップサンプリングに関する世間の動向(?)ですが、懐疑派が半分、有効派が半分と言うところでしょうか。高域補完に関しては、現状では有効性が感じられないという人が多数派のようです。私も、高域補完に関しては面白い技術だとは思うのですが、かんじんのアルゴリズムがまだまだ未熟だと言わざるをえないようです。実験的にあれこれ遊ぶのににはいいでしょうが、本丸にでんと座るようなレベルにまでは達していないと判断していいと思います。
ということで、「アップサンプリングすることに本質的なメリットがあるのか?」ということについてのみ、私見をまとめてみたいと思います。いわゆるノウハウではないので、ほとんどの人にとっては何の役にも立たない戯言ですので、それはご承知おきください。

アップサンプリングの可否

まず、アップサンプリングに懐疑的な人は圧倒的に「理論派」の人が多いようです。それに対して、有効性を感じている人は「感覚派」の人が多いように見受けられます。

まず、懐疑派ですが、これはkkさんからのコメントで紹介していただいて某メーカーの技術者のお言葉にすべてが集約されていると思います。

  • A/D変換された信号はどんなに頑張ってD/A変換しても元には戻らない。
  • 忠実にD/A変換したアナログ波形であっても元波形とは違うのに 変換の過程であれこれ弄っても「音が良くなる訳ではではない。」
  • でき得る限り忠実にD/A変換されたアナログ波形には「かなりの情報量」があるので、それを「如何に変質させず出力できるか?」、というアナログ段の設計思想・製品企画力が大きな違いになる。

全くその通りだなと思いました。
理論的にはこれで尽きていると思います。

しかし、最近になって、「いや、アップサンプリングすることには積極的な意味がある。」と言う声もあがってきました。
まあ、ご存知の方には旧聞に属する話なのですが、知らない人は知らないわけですから紹介しておきます。

それは、「非同期でサンプルレート変換することでジッタを抑圧できる」という主張です。「ASRC」とかいう仕組みらしいです。
たとえばこちらのページなどご覧ください。→ASRC ICを搭載したDAC基板を作りたい!
出てきました、「ジッタ」です。ぁん?…(`∀´?)
おそらく、このサイトを訪れてくれる方の多くは「PCオーディオ実験室」なんてタイトルを掲げながら、ジッタやクロックの話が全く出てこないではないか、と突っ込みが入っているのではないでしょうか。ついでに、今一番ホットな「電源」に関する話もないねぇ、と思われていることでしょう。

正直に申し上げますと、ジッタやクロック、電源絡みのこともあれこれとやっているんですが(^^;、結論として未だに「よく分からない」のです。
そして、分からないことは書かない、というスタンスをとっていますので、「PCオーディオ実験室」なんてタイトルを掲げながら、ジッタやクロックの話が全く出てこないと言うことになるのです。
ところが、アップサンプリングについていろいろ調べていると、またもや「ジッタ」の問題に突き当たってしまったわけです。

困ったな・・・と思っております。
「非同期でサンプルレート変換することでジッタを抑圧できる」・・・具体的に言うと、本来は44.1KHzのCDデータを非整数倍の96KHzや192KHZにアップサンプリングすると、ジッタの抑圧ができて音質の向上に寄与するというのです。・・・うん?、いや違うぞ、オーバーサンプリングするとジッタの抑圧が出来ると書いてあるぞ。
アップサンプリングとオーバーサンプリングってどこが違うんだ?

早速、「アップサンプリング オーバーサンプリング」とでもしてGoogleさんに聞いてみたところ、こんなページがヒットした。
アップサンプリング、アップコンバート、オーバーサンプリング
おい、読めば読むほど、よけいに分からないぞ!!議論しているのは技術畑の人みたいだけど、それでもこんな論議にになるのか・・・。

なんてことになるので、一般的にはそんな理論的なことは脇において、要は現実に出てくる音を聞き比べて有効性を確認しましょうという「感覚派」が登場するのです。

ただし、理論派の人たちにとって、現状ではアップサンプリングする事による有効性は全く認められないというのが取りあえずの結論だとは言えそうです。

感覚派の言い分

感覚派の人たちは、アップサンプリングについて、技術的なことはよく分からないけれど、現実として出てくる音が素の44.1KHzよりは「魅力」を感じる、と主張します。と言うか、感覚的に有効性を感じるのでアップサンプリングに取り組むのであって、感じなければこんなところに参戦などしてこないのです。

そう言う感覚派の人たちは、アップサンプリングしたからと言って、DA変換したあとのアナログ波形が滑らかになることはない・・・と言うことは理解しています。ましてや、アップサンプリングすることで失われた20Khz以上の情報がよみがえる・・・などとは思ってもいません。
正直言って、理論派の方々のサイトで勉強させてもらって、「変換の過程であれこれ弄っても音が良くなる訳ではではない。」と言うことも納得できる気がします。さらに、「非同期でサンプルレート変換することでジッタを抑圧できる」と言われても、そのメリットはピントはこないので、それに「すがる」気持ちもないようです。
しかし、アップサンプリングした音は、素の44.1KHzと較べてみると、とても魅力的に響くことが多いのです。細身のヘタレタ感じになってしまうときもありますが、割合から言うと魅力が増すことが多いように感じるので、その「感覚」をどうしても捨てる気になれないのです。

私の場合を例に挙げますと、かつては高く評価していた「Frieve Audo」に搭載されているアップサンプリングのアルゴリズムなどでは、最初は音の変化に「面白い」と思ったのですが、長く聞いているうちに「やっぱり違うな」と言うことになって素の44.1KHzに舞い戻ってしまいました。
しかし、cPlayの「SRC 145db」というモードを使ってアップサンプリングした音はなかなかに魅力的で、このモードで聞き始めてから一ヶ月ほどがたつのですが未だに「やっぱり違うな」という感覚にはなっていません。

ただし、これにはいくつかの前提がつきます。
たとえば、普通に仕事用に使っているPCでアップサンプリングしても音はヘタルだけです。
しかし、デュアルコアの専用PCを導入してギリギリまでチューニングして、さらには「cMP2」を使用して、という前提をつけると、これが結構魅力的な音に変化するのです。つまり、PCのスペックをあげ、同時にPCの負荷を極限まで下げた状態でcPlayの「SRC 145db」というモードでアップサンプリングしたときに有効性を感じられるという極めてストライクゾーンの狭い話なのです。
そして、この狭いストライクゾーンを通って出てくる音が実に魅力的に感じられるので、理論的に根拠がないからと言ってこの感覚を切って捨てる気にはなれないのです。

理論を無視する気はないが、同時にこういう「感覚」も大切にしたい、それが「感覚派」の言い分なのです。

でも、残念なことに、あちこちのサイトをうかがってみると、「理論派」の方々は基本的に「感覚派」の人たちを馬鹿にしている雰囲気がありありですね。(>_<) いてっ!

でも、思い出してください。はじめてCDが登場したときにメーカーの技術者達は、これで再生機器による音の違いはなくなると言ったのです。アナログよりは圧倒的にスペックがすぐれているCDの音に対して冷たいだの固いだのと言うのは原始人の戯言だと言ったのです。
しかし、その後の推移は「原始人の戯言」の方が正しかったことを証明しました。

デジタルの世界は、多くの技術者達が考えたほど単純なものではなかったのであり、その事は今も本質的に事情は変わっていないように見えます。確かに、CDというデジタルの世界が離陸してから30年ほどの時間が経過し、随分と多くのことが技術的に明らかになっていきました。しかし、それでもなお、デジタルの世界はより深い謎に満ちているように見えます。

たとえば、PCオーディオが一般化することで多くのユーザーが「あれこれ」と関与できる部分が簡単に広がり、おかげで、その「あれこれ」によって音質が大きく変化することを誰しもが経験出来るようになりました。しかし、その「あれこれ」によって何故に「音質の変化」が起こるのかを技術的に説明できる部分は決して多くはないはずです。
アップサンプリングという技術においても、多くの技術者達は現状では理論的な有効性は認められないと断言します。だからと言って、アップサンプリングに有効性を感じるというユーザーの感覚を「原始人の戯言」と切って捨てられるのでしょうか?

私は、理論的に説明しきれないからと言って、それらを簡単にオカルト扱いしたり、プラシーボ効果に結びつけたりするのは正しい態度とは言えないと思います。技術者達の能力(専門職の専門性・・・と一般化してもいいです)には敬意を払うべきであると考えますが、同じように技術者達もユーザーサイドの「感覚」に対して謙虚であってほしいと思います。

しかし、この「感覚」というものはなかなか一般化できない部分を含んでいます。それ故に、技術者達にとっては避けたい領域ではあるのでしょうが、しかし、この両者に橋を渡すような動きが出てこないと、せっかく「PCオーディオ元年」というかけ声によって、瀕死のオーディオ業界に幽かにさしこんだ日の光もすぐに翳ってしまうのではないでしょうか。

取りあえずの結論

アップサンプリングする事による理論的な有効性は現時点では認められていない。
これは確認しておくべき事でしょう。
しかし、ある限られた条件の下でアップサンプリング処理をほどこすと、結構魅力的に音が変化するという報告が多々あり、私もそれを感覚的に確認しています。
これが、いわゆるアナログ時代における「音作り」に該当するようなものなのか、それとも、未だに解明されていない理論的な有効性がある条件下において発動するのか、それは分かりません。なにしろ、PCオーディオの場合は設定ポイントが多すぎます。PCのスペック・PCのOS・OSのチューニング・再生ソフト・リッピングの仕方・ファイルの置き場・接続ケーブルの長さや品質等々。
それらの違いをすべて吸収して一つの理論で組み伏せてダメ出しが出来るものなのか・・・と言う疑問も払拭できません。

しかし、現時点で理論的に有効性が確認されていない技術に対して、一定の資金を投下して外部機器を導入するのは見送りましょう。
しかし、PCサイドでアップサンプリングして、その有効性を検証していくことは趣味としては結構面白そうな気がします。実際、この一ヶ月ほどはアップサンプリングした状態で音楽を聞いています。それほどに、、cPlayの「SRC 145db」というモードでアップサンプリングした音は魅力的です。
ですから、この音を一つの基準として、いろいろなアップサンプリングツールを使ってその有効性を検証していくのは結構遊びとしては面白そうです。1TB程度の外付けHDを買えば結構遊べそうです。

ということで、結論としては、面白くおかしくもない話になってしまいましたが、まあ、アップサンプリングという技術に対してあまり過大な期待を抱いてはいけないということなのでしょう。

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6 comments

  • mituo

    アップサンプリングは有効かは、人それぞれ実行した人が、自分の環境で体験したことで決まると思います。
    ユング様はその有効性をご自分の環境の中で、確認されたのでしょう。
    理屈はどうあれ、その人にとっては事実だと思います。
    私はアップサンプリングはしないのですが、間違いを恐れず書かせていただければ、
    効果はディザリングを掛けた様な効果かな....と考えています。
    リクロックにしても非同期のものは信号に一種のノイズを乗せるという感じかと思います。
    その信号をDA変換して結果がどうかだろうと思います。
    普通では、測定手段を持たないジッターの大小が音質に与える影響を言っても結論は出ないと思います。
    ジッターの影響を少なくする、有効な手段で一番コストがかからないのはfsを低く(そのまま)使うことだと思います。
    アップサンプリングやオーバーサンプリングは理屈でのジッター許容値をシビアにします。(あくまで理屈の上で、本人は未確認です)
    オーディオCDでのインターポーレーションはイメージノイズ対策で始まったことだと、解釈していましたし、SRCは複数の信号のfsをまとめるためにあるものだと、思っていました。
    機械は色々な使い方があるものだな....と思いました。
    色々見てみるとNOSDACでも普通に音が出ている様です。

  • 長期に渡る特集?、有難うございました。

    この問題は、フォーマットという器と、デジタルの品質?という中身、に分けると考えやすいと思っています。

    44.1kHz 16bit stereo という器に盛られた料理を、更に高次元のフォーマットという器に盛りなおす時、仮に、そのまま同等の品質?で盛りなおすことができれば、器の良さを堪能できると思います。ノイズを可聴帯域から追い出せたりすることです。

    ただし、料理と異なり、そのままでは盛りなおせないので、なんらかの処理を加える必要があります。この処理によって、多かれ少なかれ、デジタルとしての品質が変化すると思います。

    個人的には、器の良さより、処理してまずくなるほうが気になるので、今のところパソコンでの処理はしない方向です(パソコンでの再生もですが 笑)。

  • 遠藤

    記事読ませて頂いていました。

    理論的にはやはり有効性は認められないようですが、
    個人的にアップサンプリングした音は魅力的に感じることが多いです。

    また、PCでのアップサンプリングには否定的でしたが、
    環境次第では使える方法なのだな、と認識を改めました。

    またこのような実験の記事を楽しみにしています。
    ジッタやクロックの記事も機会があれば宜しくお願いします。

    それにしてもPCオーディオは奥が深く、まだまだ開拓の余地が
    あると改めて感じました。

  • ユング君

    >また、PCでのアップサンプリングには否定的でしたが、環境次第では使える方法なのだな、と認識を改めました。

    基本的にはPCに多大な負荷がかかるので、どう考えてもいいことはないのでしょうが、実用面での便利さという点では無視できないと思います。
    今年はあちこちで「PCオーディオ元年」という声が聞かれますが、そうなるとコアな部分だけでなくごく「普通の方」がごく「普通に使える」方法として「PCでのアップサンプリング」することの手軽さは無視できないだろうと思います。

    おそらく、問題は二つだろうと思います。
    一つはPCをチューニングしてどこまでデフォルトの状態を軽くできるか。もう一つはCPUのパワーがどこまで上げられるか。
    オンキョーあたりが、「これは!」と思えるような専用PCをリリースしてくれると、いろいろと面白い展開が期待できるのですが・・・。

  • misuzukaru

    どの様な結果に至るのか、興味深く拝見させて頂きました。
    お骨折り頂きました、cMP、cPlayダウンロードしcPlayのみ立ち上げて(cMPはエラーが出ました。XPでは問題なかったのですが)バックのプロセスは「システムの構成ユーティリティ」で刈り込み24まで落としました。   ユング様と同じように145dbの176.4Khzにアップサンプリングをして聴きましたがしばらく聴いているうちにonkyo-musicの中の24?96にアップコンバートされた音調に少し似ているなと気がつきました。
    もちろん、元の音源がマスタファイル(コピー?)に対して専門家がコンバートしている物と16bit44.1KhzのCDがソースからアップしたものでは別物ですが、低音の柔らかさや、音の広がりや声がアナログっぽく聴こえました。
    これはなかなか魅力的でした。

    別の話になりますが、巷ではDAコンバータ、フェーズテックのHD-7Aの評判が高いようです。ビクターの開発したK2を搭載しておりK2のモードの音が評判がよいようです。K2の波形を見ると、ノーマルモードが22Khzで終わっているのに対して、K2モードは50Khz以上まで出力があり、高域補間(?)しています。このような物も今後手軽に入手出来ればよいと思っています。(フェーズテックの音は聴いたことが無く想像ですが)
    また機会がありましたら、再度の取り組みをお願い出来ればと思います。

  • Gonzaemon

    こんにちは。アップサンプリングについて、当方もいろいろとチャレンジしております。

    当方の試行錯誤を繰り返しながらの現在のところ結論ですが、

    「音楽として好ましい方向に変化する」

    と考えております。 アナログ音源との比較を行いますと、その想いが一層強まります。アナログがデジタルより良い、とは単純に考えている訳ではありませんが、音楽の持つ心地よさ、ハートに訴えかけてくる部分などアナログにも価値を見出しております。

    アップサンプリングした音は、音の肌触り、実在感という部分でやはり16bit44.1KHzのままより、好ましくなると感じています。また、デジタル音源であっても、この領域には、いろいろと「工夫する、チャレンジする」という部分が数多く残されており、オーディオファンとしては楽しみもあって良いですね。

    なお、アップサンプリングをPCにてソフトウエア的に行うことと、DDコンバータチップをベースにハードウエア的に行うことのどちらに軍配が上がるのか、いろいろと実験を進めています。CDメディアをお手軽にアップサンプリング再生するには、DDコンバータ方式とせざるを得ませんが、PCからの再生については、あらかじめアップサンプリングしたファイルを作っておく方法が本来ベストかとも思います。再生時のCPUパワーはそれほど必要にはなりませんが、ファイルの作成と保存、管理がファイルサイズが大きくなる分、どうしても手間となり、現在このやり方はCDからのリッピングには採用しない方針としています(アナログの取り込みにはこちらを採用していますが)。また、再生時にアップサンプリングする場合は、PC環境をちゃんと整備しないと、効果が得られない場合もありますね。44.1KHzをリサンプリングだけして送り出し、DDコンバータでアップサンプリングするというやり方もあります。こちらはCD再生環境と同じとなりますので、装置全体の環境設定と管理が楽という面があります。

    アップサンプリングの環境全体を、どうバランスを取りつつ、使い分けるかが課題でもあり、楽しみでもある分野ですね。

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