以下の内容は、「FLACファイル」って何?と言う方のための解説ページです。PCオーディオにある程度取り組まれている方にとっては「今さら」という内容ですのでパスしてください。
はじめに
音楽ファイルの基本は「WAVEファイル」です。市販されているCDから音楽ファイルをリッピングするとこの「WAVEファイル」という形式で保存されます。ですから、音質的にはこの「WAVEファイル」がもっとも優れています。
しかし、難点はファイルサイズがとても大きいことです。
一般的に「1分間=10Mb」ですから、5分程度の小品でも「50Mb」、1時間の大作シンフォニーだと「600Mb」にもなってしまいます。
インターネット黎明期のか細い回線でこんな巨大ファイルをダウンロードしようとすると何時間(何日?)かかっても終了しません。(「600Mb」のファイルだと今でも大変です^^;)
それでも、インターネットを通して広く音楽を共有したいという願いが、「MP3ファイル」という圧縮技術を生み出しました。
難しい説明は省きますが、この「MP3ファイル」が偉かったのは「音質の劣化を出来る限り小さく」して「ファイルサイズを小さく」したことです。今ではファイルサイズが10分の1になっても感覚的にはCDと大差のない音質で音楽が楽しめるまでになりました。
つまり、5分程度の小品だと「5Mb」、1時間の大作シンフォニーでも「60Mb」までファイルサイズを小さくしても、CDと大差のない音質で音楽が楽しめるようになったのです。
実に偉いものです。
とは言え、シビアに聞き比べれば音質面での違いは存在します。
昨今のPCオーディオへの関心が高まるなかで、そう言う音質面にこだわりを持たれる方が増えてきています。そう言う方は、「MP3ファイル」ではなく「WAVEファイル」で音楽を再生するのは「当然」の事とされています。実際、PCオーディオの興隆によってWAVEファイルしか再生できないソフトが次々と登場しています。「cMP2 = cMP + cPlay」や「Wave File Player」などが代表格で、今までの再生ソフトとは一線を画すほどの高音質再生が売りです。
えっ、私はそんなことは気にしないですって・・・。そう言う方は、こんなページはパスしてください。(^^;
MP3ファイルの弱点→不可逆性
MP3ファイルというのは実に良くできた技術です。ファイルサイズを10分の1にまで圧縮しておきながら、ぼんやり聞いていれば元の「WAVEファイル」との違いに気づかないほどにすぐれた音質を維持しています。ですから、上で少し冗談めかしてふれたように、「音質的にはそれで十分だ!」、と言う方がおられても全く不思議ではありません。
それほどに良くできた技術だと言うことです。
しかし、そのような「MP3ファイル」にも致命的な弱点があります。
それが「不可逆」性です。
「不可逆」なんて言うと難しげですが、要は、一度「WAVEファイル」から「MP3ファイル」に圧縮して変換してしまうと、もとの「WAVEファイル」には戻すことができくなくなるという性質のことです。
この、「二度ともとに戻らない」性質を「不可逆」と呼んでいて、そう言う性質を持った圧縮のことを「不可逆圧縮」と呼んでいます。
でも、「MP3ファイルをデコードすればWAVEファイルに戻るよ!」と言われるかもしれません。
一般的に、元ファイルを圧縮ファイルに変換することを「エンコード」、逆に圧縮ファイルから元のファイルに戻すことを「デコード」と呼びます。・・・豆知識(^^v
確かに、適当なソフトを使えばMP3ファイルをWAVEファイルにすることは出来ます。
しかし、ご注意あれ、実は「MP3ファイル」をデコードして生み出された「WAVEファイル」は元の「WAVEファイル」とは似て非なるものです。最初に圧縮した時に引き起こされる音質の劣化はリカバリーされることはなく、その劣化した状態でWAVEファイルに変換されるからです。
具体的に言うと、「MP3ファイル」は圧縮の過程で人間の耳には聞こえにくい高音域の情報をばっさりとカットしてしてしまいます。ですから、そのようにして圧縮された「MP3ファイル」をデコードしてもカットされた高域の情報はよみがえることはないのです。
ですから、WAVE→MP3→WAVE→MP3→WAVE・・・なんてなバカな事をやると、どんどん音質が劣化して「聞けたものではない」状態になってしまいます。
そこで登場、可逆圧縮
人間とは欲深い生き物です。
MP3の優れた技術は認めながら、それでも元のWAVEファイルに戻したいときはきっちりと元に戻せるような形式で圧縮できないかと欲が出てきます。
こういう、圧縮しても、その気になれば元通りの姿に戻せる圧縮方法を「可逆圧縮」と言います。
残念ながら、MP3は「不可逆」という十字架を背負っていますから、このような役割を担うことは出来ません。
ここで登場するのが「FLACファイル」などの音楽用の「可逆圧縮ファイル」です。「可逆圧縮」ファイル」には、これ以外にも「APEファイル」とか「WMA Lossless」、「Apple Lossless」などの形式がありますが、私の見たところ「FLACファイル」が最も広く普及しそうな雰囲気です。
この「FLACファイル」は知名度という点では「MP3ファイル」と比べるとうんと落ちます。
しかし、「FLACファイル」は「WAVEファイル」に戻したいと思えば、1ビットの狂いもなくきっちりと元の「WAVEファイル」に戻すことができるのです。
おお、そんな素晴らしいファイル形式ならばもっと知名度が上がってもいいのに、と思われるかもしれません。
私もそう思います。
しかし、この世の全てのことはバーター取引です。一方的に全てが満たされることはありません。一つを得れば、一つを犠牲にしなければなりません。
「FLACファイル」に代表される「可逆圧縮ファイル」は「可逆圧縮」という素晴らしい性質を手に入れるために犠牲にしたものがあります。
それが「圧縮率」です。
「MP3」は元の「WAVEファイル」を10分の1にまで圧縮しましたが、「FLACファイル」の場合はせいぜい半分に圧縮するのが限界です。
つまり、「MP3ファイル」だと、5分程度の小品が「5Mb」、1時間の大作シンフォニーでも「60Mb」にまで圧縮してくれたのが、「FLACファイル」だと5分程度の小品で「25Mb」、1時間の大作シンフォニーだと「300Mb」程度にしか圧縮できません。
これは実に微妙です。
おそらく、モデムを通した電話回線の時代なら間違いなく「NG」です。
しかし、ADSLの時代になるとこれも「有りかな?」というレベルになりました。
そして、光回線が主流になってくると、これはおそらく「有り」でしょう。
現在の光回線ならば、電話回線の時代にMP3ファイルをダウンロードするよりも快適に「FLACファイル」をダウンロードできるはずです。
つまり、「可逆圧縮」を実現するために犠牲にした「圧縮率」の低さが、光回線の一般化によって必ずしも「犠牲」ではなくなりつつ・・・あるのです。そうなると、ネット上の音楽ファイルの主流が「MP3ファイル」に代表される「不可逆圧縮ファイル」からから「可逆圧縮」の「FLACファイル」などに置き換わっていくかもしれないのです。
今回の「FLACファイルデータベース」の開設はそのような流れに対して先鞭を付けたいという思いがあったからです。
基本はダウンロードしてからWAVEファイルにデコードする
では、ダウンロードした「FLACファイル」はどのようにして再生すればいいのでしょう?残念ながら「iTunes」や「WMP」というメジャーなソフトでは再生できません。
現時点で「FLACファイル」を問題なく再生できるのは、
・foobar2000
・SoundPlayer Lilith
・cplay
あたりが一般的です。
しかし、私は「FLACファイル」をそのまま再生するのはお勧めしません。
「FLACファイル」の最大のメリットは「可逆性」です。ならば、そのメリットを最大に活かす方法は「FLACファイル」をデコードして元の「WAVEファイル」に戻してから再生することです。そして、「cMP2 = cMP + cPlay」や「Wave File Player」などの優れた再生ソフトで再生すれば、「MP3ファイル」とは一線を画した高音質を享受できるはずです。
・cMP2 = cMP + cPlay
・Wave File Player
ハードディスクの大容量化と低価格化もこの流れに追い風となっています。
また、PCオーディオに未だ踏み込めない人でも、「WAVEファイル」ならばそのままCDに焼いてCDプレーヤーで再生することが出来ます。音質劣化の全くない「可逆圧縮」ですから、そのようにして作成したCDは市販のものと全く同等のクオリティです。
さて、いかがでしょう?
ここまで読んできて「FLACファイル」に興味を持たれた方は、「FLACファイルデータベース」に行ってダウンロードしてみてください。
次回は、「FLACファイル」を使い倒すための第一歩として、「FLACファイル」をデコードして「WAVEファイル」に復元する方法を解説します。
Gonzaemonです、こんにちは。
FLACファイルに関する考察、興味深く拝見させていただきました。
ファイルサイズと音質の天秤には当方も悩むところではありますが、当方は「FLAC形式に一本化」を決心し、手持ちのアナログレコード、CDのデータベース化を進めていますので、少し紹介させていただきます。
PCオーディオを楽しむにあたり、当方は以下のようなFLAC形式を標準としてデータベース化を進めており、既に一万曲を越えるまでになりました。
1.CDからの取込み (Exact Audio Copyを使用)
16bit/44.1KHZのままFLAC化。再生は88.2KHz。
2.アナログレコードの取込み (Audacity、さざなみを使用)
(1)標準
16bit/44.1KHZにてFLAC化。再生は88.2KHz。
(2)高品質
24bit/96KHZにてFLAC化。再生は96KHz(cPLAYで再生)
FLACファイルの最大の利点は「TAGにより音楽情報(ジャンル、アーティスト、アルバム名、トラック名等)を持たせられる」こと考えております。膨大なファイル数となってきますと、ファイル自体に詳細な情報を持てないWAVE形式では管理が非常に面倒(ファイル名とフォルダー名で工夫するしかないので)になってしまいます。将来的に再生ソフトウエアを変更する場合にもFLACE形式のファイルであれば、簡単に詳細情報をTAGから取り込むことが可能です。また、cPLAY用のCUEファイルも、「タグ情報」を読み込ませて作成しています。(このため、トラック名の持たせ方に若干の工夫をしています)
確かにMP3形式に比較すればサイズが大きいのですが、それとてWAVE形式に比較すれば「半分以下で済む」とも言えます。データベースが増えれば増える程DISK容量にはインパクトありますので、Lossless圧縮であることの音質上の観点と合わせて、そのメリットを評価しています。近未来的にはおそらく24bit/96KHz(あるいはそれ以上)のFLACファイルが音楽ソース市場の一角を成すものと(勝手ながら)予想している次第です。
いくつか気づいたことを・・・。
これは掲示板の方でも紹介しました「SuperTagEditor改 Plugin Version」を使えば、WAVEファイルのタグ付けが可能です。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA012911/STEP/step.html
ただ、このタグを表示できる再生ソフトと出来ない再生ソフトがあるようです。国産再生ソフトの雄、lilithは問題なく表示してくれます。
これは凄いですね。
「タグ情報」を読み込ませてCUEファイルを作成する手法を教えていただけると嬉しいです。
最終的にはここが一番問題ですよね。数年前まではWAVEファイルのままでHDに保存するなんて考えられなかったからですね。
ただ、個人的にはHDの大容量化と低価格化はさらに進むと考えています。今は、RAID1構成で4TのHDが4?5万円でしょうか。これだと、バックアップしてくれてCD3000枚程度は収納できますから、これに4?5万円の投資は高くないと私は考えています。それに、この価格は来年度中には半分程度になるんじゃないでしょうか。
と言うことで、私はWAVE一本化で行こうかと思っています。
これに関しても、当分は16bit/44.1KHzをシャブリ尽くそうかと考えています。
ただし、この世界は今やドッグイヤーですから、今後一年でこのあたりの状況は劇的に変化している可能性はありますね。
どちらにしても、楽しい限りです。
Gonzaemonです、こんにちは。
貴重な情報いつもありがとうございます。
>「タグ情報」を読み込ませてCUEファイルを作成する手法を教えていただけると嬉しいです。
当方のつたないやり方ですが、ご参考となれば幸いです。
1.CUE FILE作成には「Recursive Cue Creator」を使用しており、作成時のOptoinにて以下をチェックしています。
「Use Embeded Tags when Processing FLAC and MP3」
2.なお、CUE FILE作成はアルバムを1フォルダーの単位として処理させていますので、EACで普通に読み込んだままですと、トラック名(曲名)の順番となってしまい、cPlayで再生する時に、トラック番号順にならない、という不都合が発生します。このため、当方はEACでの読み込み時に「トラック番号+トラック名」というファイル名で作成するようにしております。
細かいことかもしれませんが、結構なファイルを管理するようになると、この辺りの「自分なりの管理ルール」をしっかりとさせておくことが結構重要と考えております。
いつもいろいろ参考にさせていただいています。
FLACファイルも全てダウンロードして、WAVEファイルに変換して、E?MU0404を通して聴かせてもらっています。
今ダウンロードしたカラヤンのオーケストラ集を聴いていますが、どうしてこんなにノイズのないきれいな音が出るのか不思議です。僕も古いLPをWAVEにしていますが、何か特別なことがあれば教えてください。もちろん機器が良いためとは思いますが。
「ATRAC Advanced Lossless」も忘れないでください。
この方式は、ソニーが開発した技術ゆえ、知名度も汎用性もFLACや他のロスレスファイルより下ですが、他のロスレスファイルにはない特徴を持っています。
というのは、この形式は不可逆圧縮ファイルと、不可逆圧縮の過程でカットした情報を圧縮したデータの2階建て構造になっています。
圧縮率は決していいとは言えませんが、不可逆圧縮ファイルだけを取り出せるというメリットがあります。そのため、転送するプレーヤー側がそもそもロスレス形式に対応していない場合や、対応はしているがデバイス容量が少ないという時に、再圧縮をせずに転送できるという利点があります。
可逆圧縮のデメリットは、せいぜい半分に圧縮するのが限界であることよりも、メジャーなソフトやプレーヤーの対応状況がまだ浅いということだと思います。
不可逆圧縮ファイルだけ取り出せることは、可逆圧縮未対応機器が多く残る現状において、一つの方法ではないかと考えています。
ATRAC に対応しているプレーヤは、SONYぐらいでしょう。
メジャーなプレーヤ・ソフトは、可逆圧縮なら Apple Lossless や FLAC に対応しているものが大半ですね。
音楽配信サイトでも、Apple Lossless や FLAC が主流です(海外では、ATRAC は使われてません)。
今更、ATRAC に対応するメリットは全くないですね。
> しかし、私は「FLACファイル」をそのまま再生するのはお勧めしません。
「FLACに対応するソフトウェアでリアルタイムにデコードしながら再生する」のと「あらかじめWAVEにデコードしておいてそれを再生する」のとに、どういう違いがあるのでしょうか?
かなりの部分で論議が出尽くしている・・・でしょうか。
http://www.yung.jp/bony/?p=1739
http://www.yung.jp/bony/?p=1749
これにさらにつけ加えるものが有れば論議していただいても結構かとお思います。
ただし、同じような内容の蒸し返しはほとんどの人にとって興味をひかないと思われます。
ただ、本質的には、理屈がどうのこうのより、個人的に差異が感じられればwaveメインでいくでしょうし、気にならなければFLACメインでいけば済む話だろうと思います。
私個人は気になるので、waveメインでいっています。
拝見しました。かなり既出の話題だったようで失礼しました。
デコード時のCPU負荷に差異の原因があると仮定するならば、データのI/OにまつわるCPU負荷も、NASかローカルディスクかとか、I/Oコントローラの種類によって変わるので、そのあたりも比較されるといいのかもしれません。または、目一杯RAMを積んで音楽データはすべてRAMディスク上に置いて極力I/Oを無くすとか、CPUのパワーの差による音質の違いはあるのかとか、そのあたりの実験結果がもしあれば興味があります。