Vine MPDを使いこなす(3)~「HPET」をオンにする

「HPET」とは何者だ?

「HEPT」とは、「High Precision Event Timer (高精度イベント タイマー)」の事で、2005年あたりのチップセットから組み込まれ始めたようです。

この「HPET」なる代物が何者なのか、あれこれ説明を読んでみたのですが、最後まで上手く理解できませんでした。(^^;
しかし、巷では「音楽再生としてパソコンを使うときは「HPET」はオンにすべし!!」と言う報告が多数あります。理屈は分からなくても、結果がよければそれでよし、とする現場優先主義のPCオーディオ派にとっては実験あるのみです。

しかし、これまた巷では「BIOSに「HPET Support」という設定値があり、これを「Disable(無効)」にすることでトラブルがあっさりと解消しました。」
なんて言う報告も多数で、「悪の根源」みたいに言われている側面もあります。

この「HPET」なるもの、なかなかの優れものらしいのですが、初期の頃はあれこれとトラブルが多かったようです。また、圧倒的多数派を占めていた「Windows XP」ではこの「HPET」がサポートされていなかったために、その存在も真価も広く知れ渡ることがないまま今日に至っているようです。
それだけに、「音楽再生としてパソコンを使うときは「HPET」はオンにすべし!!」と喝破したPCオーディオ派が存在することは賞賛に値します。

サポートしているOSは、Linuxの場合はカーネルが2.6以上、Windowsの場合はVista以上らしいです。
Vine5をインストールしたならば、問題なく「HPET」をサポートしています。

「HPET」をオンにする

まずはじめに、「BIOS」で「HPET」が「Enable(有効)」になっているかどうか確認します。
BIOSの「APM Configuration」の中に「HPET Support」の設定項目があるのが一般的です。
最近のBIOSならば最初から「Enable(有効)」になっていることが多いようで、一昔前なら「Disable(無効)」になっていることが多いようです。当然のことながら、ここが「Enable(有効)」になっていないと「HPET」をオンにすることはできません。
なお、さらに古いBIOSだとこの設定項目がそもそも存在しないようですが、必要な要件を満たしていれば「HPET」をオンにすることは可能なようです。

まずはじめに、念のために、カーネルのバージョンを確認します。

# uname -r
2.6.27-57vl5

さらに、Linux Kernels 2.6.24 以降の場合は下記コマンド実行で「HPET」が設定可能であるか検出できるようです。

# cat /sys/devices/system/clocksource/clocksource0/available_clocksource
tsc hpet acpi_pm jiffies

「hpet」が含まれていれば大丈夫です。
次に、現在のシステムで「current clocksource」として何が使用されているか確認します。

# cat /sys/devices/system/clocksource/clocksource0/current_clocksource
tsc

これは、「hpet」ではなく「tsc」が使われていることを示しています。
以上の確認で、「HPET」は使用されていないが、使用可能なことが分かります。

では、「HPET」が使用可能なことを確認した上で、「HPET」をオンにします。
弄るのは、「grub.conf」です。(/boot/grub/grub.conf)

「grub.conf」は一般的にこんな風になっています。

#######################################################

default=0
timeout=5

title Vine Linux (Current kernel)
root (hd0,0)
kernel /vmlinuz ro root=LABEL=/ resume=swap:/dev/sda3 vga=0x314 splash=silent
initrd /initrd.img

title Vine Linux (Previous kernel)
root (hd0,0)
kernel /vmlinuz.old ro root=LABEL=/ resume=swap:/dev/sda3 vga=0x314 splash=silent
initrd /initrd.old.img

#######################################################

この「kernel /vmlinuz ro root=LABEL=/ resume=swap:/dev/sda3 vga=0x314 splash=silent」みたいな行の最後に

「clocksource=hpet」

と追記して再起動するだけで、「HPET」がオンになります。

# cat /sys/devices/system/clocksource/clocksource0/current_clocksource
hpet

となればOKです。

ネット上では「hpet=enable」と追記すればいいと言う情報もあったのですが、「Vine5」では効果なしでした。

「HPET」をオンにした効果

一番大切なことは、この設定変更によって音質的な効果があるか否かです。
ですが、これはもう、悩む必要もないほどの「圧倒的な効果」が確認できます。

「Vine_MPD」にすることで、十分すぎるほどの解像度を確保したと思ったのですが、それのさらに上があったのです。ただ、少しばかり響きが固くなるような雰囲気もありますが、この解像度で描かれる空間表現は圧倒的です。
オーケストラの各楽器が雛壇の上に並んだように前後左右に広がる様は見事としか言いようがありません。
ただし、Jazz畑の人で、音が前に飛んでこないと不満な人にとってはあまり有り難くないかもしれません。しかし、Classical畑の人間にとっては願ってもない描写力、表現力です。

なお、「/etc/mpd.cof」の下記項目を弄れば、さらに細かい音色の調節ができるようです。
「mpd.conf」の一番下の方に「audio_buffer_size」の設定項目があります。

デフォルトは「2048」なのですが、「1024」「512」等に変更すると微妙に音色が変更します。小さくすると解像度が上がり、音色も固めになるような雰囲気です。しかし、私のシステムでは「HPET」をオンにした状態では「512」が聴感上ベストでした。

また、その下に「buffer_before_play」の設定項目があります。
デフォルトは「10%」ですが、メモリに十分な余裕があるのならば「100%」がベストではないかと思われます。

なお、この「HPED」オンの設定は「MPD」でなくても、通常の一台のPCで再生するような場合でもオンにした方がいようです。ただし、Windowsではどのようにして設定するのかは、未だに「XP ユーザー」である私には確認できませんでした。


8 comments for “Vine MPDを使いこなす(3)~「HPET」をオンにする

  1. シン
    2010年12月7日 at 5:13 PM

    はじめまして、、
    いつも色々お役に立つ情報、ありがとうございました。
    やはりHPETの効果ありですか、、小生の所ではPCI Latency Timerの調整も効果ありでした。余計ですが小生の設定です。
    setpci -v -d 1412:1724 latency_timer=ff
    では、今後ともよろしく

  2. ユング君
    2010年12月8日 at 10:19 PM

    こちらこそ、いつも貴重な情報をありがとうございます。

    >小生の所ではPCI Latency Timerの調整も効果ありでした。余計ですが小生の設定です。

    Windowsには便利なソフトがあったので、あれこれ弄ってみたことがあるのですが、Linuxではどうやれば操作できるのか分かりませんでした。
    なるほど、「setpci」というコマンドを使うんですか。もう少し勉強してから試してみたいと思います。

  3. シン
    2010年12月13日 at 7:59 PM

    ユング君さん
    小生もインストールなどで苦労しましたが知人がユング君さんのVINEにも似たultra slim ubuntu studio10.04+MPDとvoyage MPDとの比較でvoyage MPDが音質において一枚上ではないかとの意見がありました。ささやかですが小生のブログです。これから経験の共有の意味で順次アップデートしていくつもりです。
    暇が御座いましたら一度遊びにおいでください。ただしハングル語のブログですが日本語での内容も書き込んでおりますので戸惑うことはないと思います。
    では、、http://blog.naver.com/manishin

  4. seiji
    2010年12月14日 at 7:42 PM

    シンさま>暇が御座いましたら一度遊びにおいでください。
      ただしハングル語のブログですが
     日本語での内容も書き込んでおりますので
     戸惑うことはないと思います。

    「シン様の優しいお気遣い」、・・・深謝&深謝。
     早速、立ち寄りました。
      シンプルなお考えにビックリ&驚喜しました。
     私は、ATOM525をベースにしようかと考え準備していますが、・・・
       Alixシステムとは、・・・
     驚嘆しています。
     <大和の国のオーディオ爺>は、
      貴男の挑戦に学ぶことができ、感謝しています。
     ではごきげんよう。
     師走 吉日

  5. ユング君
    2010年12月14日 at 7:57 PM

    私のほうもじっくりと拝見させていただきました。
    年末年始の休暇を使って、私もシンプルなシステムを構築しようかと考えています。

    さて、そこで思案するのが、どのようなパソコンを用意するのがベストかということです。
    まずは、オーディオルームにおいてもまったく不自然さを感じないような小型の静音パソコン・・・というのは「絶対条件」でしょう。
    問題は、CPUとメモリです。そして、それと関連するのでしょうが電源をどうするかです。
    Voyage MPDならば、本当に低スペックのパソコンでも問題なく動作すると思いますが、いらぬノイズの発生源を抑えるためにもあえて低スペックで行くのか、それとも「Core i3」くらいはつんだほうがいいのか、悩むところです。
    さらには、電源部も余裕を持たせるほうがいいのか、それともぎりぎりに動く状態くらいのほうが音質的には有利なのか?

    このあたり、考え出すときりがないのですが、それも楽しみの一つです。じっくり考えて、近々、新しいのを一台発注しようかとおもっています。

  6. シン
    2010年12月15日 at 11:24 AM

    小生の拙いブログのご訪問に感謝します。
    昨日、先週注文したAlix 3D2ボードとケースが香港から届きました。
    ALIXボードのなかでも一番シンプルなものです。
    ボードサイズも10cmx16cmなので如何に小さいかお解かりかと思います。ちょっとしたテストでは消費電力は12Vで3W程度、発熱と騒音ゼロでとりあえずのスペックはクリアしてます。
    とりあえず音だしまで行きましたが感触がいままでとは大分違います。
    ちょっと聞いただけなのと調整が終わってないので正しい評価は下せませんが
    雰囲気的にはP3-700、ASUS?CUSL2、512Mの出す音がWADIA860みたいだとすればALIXボードで出す音はSTUDER730、もしくは小生のアナログのような音です。
    まだ色んな面で安定してない状態での印象なのでそう当てにならないでしょうからそれほど信じないことをお願い致します。
    詳細は今週末にかけて小生のブログにてご報告したく存じます。では、、

  7. yo
    2010年12月17日 at 9:03 PM

    コメントツリーの皆様こんにちは。盛り上がってますね。

    すでに話題になっていますが、Voyage MPD にして気がついたのはパソコンによる音の差ですね。
    居間の音楽専用機(Atomベヤボーン)と使い古したノートブックの二つにインストールしてみたのですが、圧倒的に音楽専用機の方がいいです。あとノートブックは蓋をとじて、ディスプレイに何も表示させないと音がよくなります。面白いですねぇ。

    あと、ずいぶん時間がかかりましたが、Voyage MPD 使い方の記事を書き、僕のサイトで公開しました。よろしければご覧ください。
    http://kubotayo.web.fc2.com/articles004.html
    ユングさんの記事をあっちこっちでリンクしています。ご了解よろしくです。

  8. ユング君
    2010年12月17日 at 10:57 PM

    皆さん、貴重な情報、ありがとうございます。
    実はあれからいろいろ思案して以下の通りにすることにしました。

    結論から言うと、新しいPCを導入するのは見送ることにして、現在音楽専用PCとして使っているPCに「Voyage MPD」をインストールすることにしました。理由は、このPCは音楽再生専用と言うことでお店にいろいろ注文も出して組んでもらったPCなので、やはりクオリティ的に頭が一つ抜けているような気がするからです。
    ですから、適当なPCを見繕って「Voyage MPD」をインストールするよりは、これを使った方が音質的には有利ではないかと判断した次第です。
    ただ、「Windows」+「Vine5」とデュアルブートしている上に「Voyage MPD」をさらにインストールするのは大変そうだったのですが、まあやってやれないことはないだろうと言うことで、チャレンジしてみるtこにしました。
    ただし、その時に、おそらくはWindowsで音楽再生をすることはないであろうから、思い切ってHDを新たに4分割して、全てのOSを新たにクリーンインストールすることにしました。
    全体構成の抜本的な見直しです。

    1.Windows XP(50Gb・・・Cドライブ)
    2.Windows XP(200Gb・・・Dドライブ)
    3.Vine5(40Gb・・・当然のことながら自動起動するMPD)
    4.Voyage MPD(10Gb)

    Windowsは、あれこれの作業用に使うつもりです。リッピングやアナログデータのデジタル化、MP3やFLACへのエンコードなど、いわゆる重たい作業は全てここで行います。
    そうなると、ネットにつないだ方が便利なので、セキュリティソフトも入れました。
    オーディオインターフェイスには贅沢に「fireface400」を使っています。(仕方がない・・・^^;)

    次に、私ご自慢の「Vine_MPD」と「Voyage MPD」の聞き比べをしてみたいので、とりあえずは両方入れてみることにしました。
    「Vine_MPD」の方は、何度も入れたり消したりしていますので、やっと勘所をつかむことができました。今度は、わずか1時間足らずで全ての作業が完了しました。

    最後は、「Voyage MPD」ですが、これは皆さんの情報のおかげで、苦労しながらも、何とかこの10Gbの領域にインストールすることができました。
    今日はもう遅いので、音出しまでは言っていませんが、「Vine_MPD」でかなり経験を積みましたので、あまり悩むことなく音は出るだろうと思っています。

    そうなれば、おそらくは最強の「音楽再生マシン」になのではないかと思っています。
    「Voyage MPD」で無事に音が出れば、その感想も含めてあれこれのジタバタを報告したいと思います。

    あー、それにしても、設定するのには勘所が分からずに悪戦苦闘しましたが、肝心のOSのインストールが数秒で終わるというのははじめて経験しました。まさに、そこにこそ、「Voyage MPD」の軽さの所以があるんでしょうね。
    音出しする明日が楽しみです。

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