PCオーディオの都市伝説は結構面白いと言うことで、意外なほどに多くのコメントやメールをいただいています。ということで、調子に乗って(^^;、これからも思いつくままに書いていこうかと思っているのですが、今回は一休みをして、onkyoが18年ぶりに発売したセパレートアンプに搭載している「DIDRC(Dynamic Intermodulation Distortion Reduction Circuitry)」なる回路についてふれてみたいと思います。
しかし、その前に、過去2回の都市伝説を通して自分なりに見えてきたことを整理しておいた方がいいようです。
取り上げたテーマは「電源で音が変わる」と「LANケーブルで音が変わる」でした。
この2つのテーマを検討していく中で見えてきたのは、デジタル部分にのってくる何らかのノイズがアナログ部に対する悪さをしているのが音質変化の原因ではないかということでした。
ですから、できる限りノイズの少ないクリーンな音源を用意することはPCオーディオにおいても有効であり、LANケーブルについても何らかの形でノイズをフィルターすれば音質改善が見込まれる可能性は否定できないことなどを確認しました。(ただし、LANケーブルを通して持ち込まれるノイズの量はあまり多くないようなので、そこにお金を投入するのはコストパフォーマンスが悪すぎるようです。)
そして、こういうデジタル部における「あれこれのノイズ」がアナログ部に悪さをしないためには、デジタル部とアナログ部の結節点において何らかのノイズ対策を施すことができれば、怪しげなケーブルに大枚を投じるよりははるかに真っ当ではないかという「思いつき」なども述べさせてもらいました。
ただし、あれこれの議論を拝見させていただくと、このノイズ対策というのはそれほど簡単なものではないということも見えてきました。
ここまでのことをふまえた上で、onkyoの製品についてふれてみたいと思うのです。
<P-3000R>
実はこのアンプは日本橋のとあるお店で鳴っていたのを聞いて、そのすばらしい透明感と美しい響きにすっかり感心してしまって、思わず買ってしまおうかと思ったほどのアンプでした。
いや、正確に言うと順番は逆です。
日本橋のとあるお店で、驚くほどに透明感のある美しい響きでスピーカが鳴っていたので思わず足を止めてしまったのです。どのスピーカーが鳴っているのだと思ってチェックしてみると、ありふれた1本10万円程度のトールボーイ型のスピーカーでした。ということは、この美しい響きの「犯人」はアンプだなと思って確認してみるとonkyoの「P-3000R(プリ)」と「-5000R(パワー)」だったというのが正しい順番でした。
ちょうど四半世紀使っていたアキュフェーズのアンプが壊れてしまって後継機を探していたときだったので、発作的に買ってしまおうかと思ったほどに魅力的な響きでした。ただ、今度の買い換えは「一生もの」という思いがあったので、おかしな話ですが、実売価格がプリで14万円台、パワーが21万円台という「安さ」のために踏みとどまりました。
後継機探しのためにはもう少し多めに資金を用意していましたし、何よりも中継ぎのYAMAHA「MX-1」が思いの外いい感じで鳴っているので、もう少し時間と手間をかけて探そうという「理性」がはたらいたのです。
もちろん、オーディオは「お金」でないことは十分理解はしています。しかし、長く厳しい交渉の末にせっかく確保した資金ですから、もう少し選択の楽しみを味わいながら、納得のいくチョイスをしたかったのです。
とはいえ、心の片隅に残るアンプであったことは事実です。
ところが、都市伝説についての議論を重ねていく中で、このアンプに搭載されている「DIDRC」なる回路の事が思い出されました。
この「DIDRC」なる回路についてonkyoのサイトでは次のように説明されています。
「オンキヨーはこれら測定値には表れない動的ノイズの発生メカニズムを究明し、高周波帯域まで増幅性能に優れ、上下の対称性が良く、低歪率を達成した新回路DIDRC(Dynamic Intermodulation Distortion Reduction Circuitry)を、モジュール化することでP-3000Rの増幅器に搭載しました。」
何度読んでもよく分からないのです。
そして、分からないのは私だけでなく、たとえば価格ドットコムの口コミ掲示板などを見てみると「DIDRCモジュールって、デジタルフィルター前のオーバーサンプリングと、やっていることは違うけど、効果は同じですか?」とか、「(カタログを)見ますと、THD や IM という意味の明確な用語がある一方で、それ以外の記述はポエムのような文章だと感じました。」というやりとりがされていますから、みんなよく分からないようです。
ただ、都市伝説のやりとりがあったおかげで、次のような記述には「ぴん!!」ときました。
「可聴帯域を越える高い周波数の音は、シグナル(単音)で発しても、われわれの耳には聴こえないが、アコースティック楽器の倍音成分など、複数の周波数の波形を合成したカタチで発せられると、音の違いに気づくといわれている。専門的にはビート現象と呼ばれているのだが、異なる周波数の波形が合成されると、両周波数の差を値とする周波数の音が、ノイズとして付加されるという。例えば、可聴帯域を越える350kHzと349kHzの音が同時に発せられた場合、可聴帯域の1kHz(=350kHz-349kHz)に音がのる。ところが、このノイズレベル(音量)はとても小さいので、残念ながら現在の測定器で測ることができない。一方、人間の耳は、このノイズよりさらに小さな音量の音、例えば楽器の倍音まで聴き取ることができるとされている。」
なるほど、これが事実だとしたら、このような理屈でデジタル部にのってくる高周波ノイズがアナログ部に悪さをするんだなと実にスッキリと理解できます。そして、どうやらonkyoはこの「残念ながら現在の測定器で測ることができない」ノイズレベルを計測できる測定器を作ることから開発を始めたようなのです。
そして、これに続けて
「従来は、ビート現象によるノイズの影響を高調波歪率(THD)や可聴帯域内混変調(IM)を減らすことで解決できると考えていた。しかしながらこれらの項目は、アナログオーディオ時代につくられたものなので、デジタルオーディオで発生するさらに高い周波数の問題は想定されていなかった。そこでオンキヨーは、これらの測定値に表れない動的ノイズの発生メカニズムを研究し、対策を施した新回路DIDRCをモジュールとして設計した。DIDRCモジュールは、コントロールアンプ、パワーアンプ、CDプレーヤーの各増幅部に投入されている。」
と書いてあるではないですか。
うーん、これを素直に読めば、私が思いつきで書いた「デジタル部とアナログ部の結節点における何らかのノイズ対策」が試みられれているように思うのですが、どうなのでしょうか?
もしもそうだとすれば、PCオーディオが抱え込んでいるノイズ対策としてきわめて真っ当な試みだと言えます。さらに言えば、私がお店で聞いた透明感のある美しい響きにこの回路が貢献しているとすれば、このアンプは私の中でアキュフェーズの後継機として再度急浮上してきます。(余った資金は別のところにも回せるし・・・!!)
そんなわけで、さらに気になるので図書館に行ってオーディオ雑誌を探ってみると(この10年ほど買ったことがないもので・・・^^;)、ステレオ紙の4月号に特集が組まれていて、その中で開発陣がかなり詳しく「DIDRC」について語っています。ただし、その専門的な解説、「高周波回路でよく使われているベース接地と呼ばれる回路を基本に、下側にもうひとつエミッタフォロアを反転方向で入れてそれを上下対称にした回路です」とか、「負帰還の方法も・・・一点で引き算をさせることで高周波領域でも正確に負帰還がかかるようにしたのです」とか、云々カンヌン、チンプンカンプンなのですが、要は「ノイズを除去するものではなく、ノイズが入ってきても影響されない回路」らしいということは分かりました。
ただし、この手の新しい技術というのは新製品の「売り」としてうたわれることが多くて、その効果のほどはクエスチョンマークのつくものが多いのですが、今回の件については、都市伝説をめぐる論議の中ではジャストミートするような話だったので、思わず取り上げてしまった次第です。
それともうひとつ、onkyoは日本のオーディオメーカーの中ではPCオーディオに対して最もまじめに取り組んできたメーカーだという評価が私の中にはあります。その信頼感を背景にすれば、今回のこのような技術的チャレンジも信頼に値するものだと信じたい思いもあります。
ただし、onkyoの営業陣はいったいどこを向いて「宣伝」をしているのでしょうか?オーディオ愛好家の大部分が電気関係の専門家で占められているとでも思っているのでしょうか?
今回の技術的成果が、PCオーディオの世界において重要な課題となっているデジタル部における高周波ノイズをアナログ部との結節点で対策するものだと説明すれば、近時急増しているPCオーディオ派の人々は一斉に振り向くはずです。
それとも、スッキリとそうは言い切れない弱みがこの回路にはあるのでしょうか。
この辺りのことに詳しい方のご意見がいただければうれしいです。
万が一にでもonkyoの技術陣の方がこれを見てくれていたら、一言でもコメントをいただけるとうれしいです。(さすがにそれは差し障りがあるでしょうね^^;)
ついでながら、さらにこのアンプを実際に使われているか違いましたら、その率直な感想なども伺いたいです。
長文なのでPDF文書にしました。良ければ御覧ください。
http://hotfile.com/dl/131779485/0250806/DIDRC.pdf.html
tapoサン、貴重なコメントありがとうございます。
実は、これ以外にも表にさらすには「差し障り」があると言うことで、何人もの方からメールで情報をいただきました。
できれば、それらも含めて自分なりに理解できたことをアップしたいと思うのですが、なかなかそのまとめる「能力」がなくて困っています。
ただし、この「DIDRC回路」だけでなく、いろいろな面で今回のONKYOの「ReferenceHifi」シリーズは要注目の製品のようです。
それから、私が「日本橋のとあるお店で鳴っていたのを聞いて、そのすばらしい透明感と美しい響きにすっかり感心してしまって、思わず買ってしまおうかと思ったほどのアンプでした。」と書いたので、そのときなっていた音楽に興味がありますというメールもいただきました。
残念ながら、いくらも思い出そうとしても肝心の音楽がなんだったのかは浮かんでこないで、ただただ響きが美しかったという「印象」だけが強く残っているのです。
そんなにファーストインプレッションがよかったのなら「買っちゃえば!」というご意見もいただきました。
実は、現在7~8割ぐらいの確率で買っちゃおうかな・・・と思っています。
tapoサンのコメントの「個?的にDIDRC はオーディオの歴史の中で”かなり”重要な変更だと思っています。」という一言がさらにその思いを強くしつつあります。
さて、どうしたものか・・・(^^;
調べてみるとこういうスピーカーのダイナミックな状態変化に対応する技術は以前もあったようです。ですからそこまで画期的じゃなかったかも。シグマドライブやリモートセンシングなどです。調べてみてはいかがでしょう。
>スピーカーのダイナミックな状態変化に対応する技術は以前もあったようです
私の理解が間違っているかもしれませんが、「DIDRC回路」というのは、「スピーカーのダイナミックな状態変化に対応する技術」だけではないように思います。
たとえば、プリアンプにはDACが搭載されているのですが、その機能をオン・オフできるようになっていますね。開発陣は、そう言うデジタル回路と同居しても「DIDRC回路」があるので大丈夫なんだが、精神衛生上の問題としてそう言う機能をつけたと書いていたような気がします。
詳しい仕組みはよく分からないのですが、いわゆる「伝導ノイズ」を何らかかの仕組みでアナログ回路にまで持ち込まないような工夫がされているのではないかと思います。
ただ、その仕組みがあれこれの解説を読んでもよく分からないので困っているのです。
ただ、音に関しては、今までのアンプとはどこか違うような気がしています。一度時間を確保して、日本橋へ視聴に行かないといけないかもしれませんね。
いつも拝見させていただいています。PCチューニングについて、教えていただきたい事がありまして、コメントを使わせていただきました。こちらでお聞きしてよろしいでしょうか?
>PCチューニングについて、教えていただきたい事がありまして、コメントを使わせていただきました。こちらでお聞きしてよろしいでしょうか?
どういう形であってもご自由にコメント欄はお使いいただいても結構です。ただし、最近はWindowsを使っての再生からは離れていますので、もしもWindows関連でしたら私に答えられることはあまりないかもしれません。特に、Windows7に関しては使ったこともないので全く見当もつきません。
ただし、私が分からなくても、誰かがコメントはつけてくれるかと思います。