NASを選ぶ基準は?

今日はいよいよPCオーディオの本丸の一つともいうべき「NAS(Network Attached Storage)」を選ぶときの基準について考えてみたいと思います。
実は、NASを選ぶことの重要性に関しては重々承知をしていながら、長い間いい加減な形で放置していました。
理由は簡単でして、自分の中で「選ぶ基準」が全く分からなかったからです。
世間では「QNAP」のNASは音がいいといわれているのですが、そして、おそらくは多くの人がそう言っているのだから音がいいのだろうとは思うのですが、「なぜ音がいいのか?」という点については釈然としないので、そう言う「流れ」に乗っかるだけというのは潔しとしない部分があったのです。
まあ、つまらん意地と言えばそれだけなのですが、こういう手がかりの少ない世界では、自分なりに納得した上で前に進むというのは重要なことだと思います。

NASを選ぶ時の必須基準

しかし、最近になって、どうやら電磁波ノイズに対する徹底的な対策がPCオーディオにおける重要な「肝」であることに気づいてきました。これは既に何度も述べていることですが、最初は様々な試行錯誤の中から経験則で効果のある対策を探っていたのですが、その効果のあった対策を列挙していく中で、どうやら「電磁波ノイズ」に対する対策が重要ならしいということに気づいていったというわけです。
この延長線上で考えると、NASもまた同じ理屈で選ぶことができるのではないかと思えるようになりました。
ですから、選択の基準は基本的にはHUBの時と同じです。

  1. 「クラスB」のEMI規格を取得している機器(必須)
  2. メタル筐体(必須)

<補足>
「クラスB」に関しては「EMI」と「EMS」の二つが関係します。そして、この二つを統合して「EMC」というそうですから、「クラスBのEMC規格」と言う方が正しいようです。しかし、未だに「クラスBのEMI規格」という言い方が広く使われていますので、取りあえずはその言い方で統一しておきます。
ちなみに、

  • EMI:機器から漏れ出てくる電磁波を評価する
  • EMS:機器の外来の電磁波に対する耐性を評価する

と区別されています。
<補足終わり>

おそらく、この2点だけは必須だろうとは思います。
ところが、探してみると、この2点を満たす製品はこの世には存在しないということに気づかされました。

まずは、国内メーカーの製品をあれこれ調べてみましたが、「クラスB」のEMI規格を取得している機器はほとんど存在しないことが分かりました。「クラスA」のEMI規格を取得している機器はいくつか見つけることができましたが、「クラスB」を取得している機器は、PLANEXの「MZK-NAS01SGS」という製品しか見つけることができませんでした。

それに対して、音がいいといわれる「QNAP」や「Synology」などのNASは全ての製品が基本的には「クラスB」を取得しています。
もちろん、これが全てではないでしょうが、「QNAP」は音がいいといわれる理由の一端を垣間見たような気がしました。

問題は2番目の要件である「メタル筐体」です。
これもあれこれ調べてみたのですが、「メタル筐体」のNASは業務用の機器以外では存在しないようです。ところが、そう言う業務用の機器は「クラスB」ではなくて「クラスA」の機器しか存在しません。
つまりは、個人的には「必須」と思えるたった2つの条件であるにも関わらず、それを満たす製品は存在しないようなのです。

「メタル筐体」に関しては、おそらくは家庭用として使用するNASに対して、そこまで気を遣って放熱する必要はないと言うことなのでしょう。また、外来ノイズに対するシールドということに関しても、「クラスB」を取得しているので、筐体をメタルにしてまでシールドに気を遣う必要はないということなのでしょう。

と言うことで、「自作」でもしない限り「クラスB」のEMI規格を取得したメタル筐体のNASというのは用意できないようなので、取りあえずは「クラスB」を取得してる製品の中からチョイスを始めることになります。

NASを選ぶときの二次的要望

次に、上記の必須条件に続く二次的要望をあげておくと以下のようになるでしょうか。

  1. 最低2ベイでRAIDが構成できる(必須)
  2. 2TbのHDは最低限認識して欲しい(必須)
  3. 外部電源で動作する(必須)
  4. CPUはできれば低速のものが望ましい(必須)
  5. プラウザから簡単に設定できる(任意)

データを失うのが一番怖いですから、「最低2ベイでRAIDが構成できる」というのは必須条件でしょう。また、「RAID 1」の構成で2Tbは欲しいでしょう。
と言うことで、この時点で国産メーカーの機器としてはかろうじて残っていたPLANEXのNASが脱落して、結局は面白みのない結論ですが「QNAP」と「Synology」だけが残る事になりました。

なお、外部電源で動作するというのは、今後の発展性として「電源」にこだわりたいからです。HUBなんかだと、それほど電源部を奢る必要はないでしょうから耐久性の点で内部電源を選ぶ方が無難だと思います。しかし、音楽ファイルを直接扱うNASの場合だとできる限り電源部にもこだわりたいと思います。
そう言う意味での発展性を考えると外部電源で動作する機器の方が面白いかと思います。

また、CPUに関しては、音楽ファイルの置き場として使うわけですから、それほど高性能のものは必要ありません。それよりも、ノイズの関係で言えば低速のものの方が有利ですから、できる限り低速のものを選んだ方がいいのではないかと思います。

このような条件を考えていくと、選択肢は以下の二つになるのでしょうか。

QNAP TurboNAS TS-212

Synology DiskStation DS212j NAS サーバー

両方とも、CPU 周波数 は 1.2GHzで、メモリも256MBです。
この一つ下の機種は、両者ともにCPU 周波数が800MHzなのですが、対応しているHDの機種が少なく、さらには1ベイですからRAID構成が組めません。
ですから、PCオーディオ用のNASとしては、現時点ではこの2機種がベターな選択かと思われます。

そして、最終的には「QNAP」の方がよく使われているので、今回は「Synology」の方を選ぶことにしました。
まあ、へそ曲がりと言えばへそ曲がりなのですが、できれば情報が少ないものを選んで報告した方がいいだろうという発想です。それに、理屈から言っても、どちらを選んでも大きな差はないだろうと思えるのも、へそを曲げられる理由です。

では、「Synology DiskStation DS212j」を導入した結果なのですが、結論から言えば、「激変」とも言うべき音質改善効果がありました。その違いは絶大で、今までWindows PCで苦闘していたところへ、Voyage MPDを導入したときに匹敵するほどの変わりぶりなのです。
NASはPCオーディオにおける本丸の一つだとは思っていたのですが、この違いを聞かされると、今までは何を聞いていたのだろうかと思ってしまうほどの違いです。
と言うことで、次回は、このNASの設定の勘所や音質改善に関する報告をしたいと思います。
やはり選択の基準は間違っていなかったと確信できました。


10 comments for “NASを選ぶ基準は?

  1. のっち
    2012年2月12日 at 5:57 PM

    初めまして、のっちと申します。
    こちらのサイトや「PCで音楽」,「viola ,viola!」さん達のサイトを拝見してVoyageMPDに興味を持ち、PCはズブの素人のくせにVoyage MPD Starter Kitを購入してしまった者です。案の定NASの接続設定が出来ずほとほと困っておりました。今回のお話がNASについてだったので御教授いただけないものかと思いコメントさせて頂きました。
    よろしくお願いいたします。

  2. ユング君
    2012年2月12日 at 8:14 PM

    NASの設定と勘所については次回レポートしたいと思いますが、基本的なことは以下の通りです。

    「/etc/fstab」を編集します。

    # vi /etc/fstab

    そして、以下のような記述を追記すればOKです。
    2行に表示されるかしれませんが、追記するときは1行です。

    //192.168.0.x/Music /music cifs username=hoge,password=hoge,uid=mpd,file_mode=0644,dir_mode=0755,iocharset=utf8 0 0

    //192.168.0.x/Music
    NASのアドレスと音楽ファイルを置いてある共有フォルダです。環境によって変わります。

    /music
    Voyage MPDの方でマウントするためのディレクトリです。あらかじめ作成しておく必要があります。

    username=hoge,password=hoge
    NASの共有フォルダ(上記の例では「Music」)を読み込む権限のあるユーザー名とパスワードを記入します。hogeと書いても接続しませんので(^^;、必ず正しいユーザー名とパスワードを記入してください。

    uid=mpd,file_mode=0644,dir_mode=0755,iocharset=utf8 0 0
    これ以下の部分は「おまじない」だと思ってこのままコピーしてください。

    お使いの環境に合わせて変更が必要な部分は書き直して「/etc/fstab」に追記して保存してもらえれば問題なく「Voyage MPD」にマウントできます。

    うまくいかない部分や分からないところがあればまたコメント欄に書き込んでください。
    きっと同じように悩んでいる方がたくさんおられると思いますので、こういう公開でのやりとりは多くの人を幸せにすると思います。

  3. やまさん
    2012年2月12日 at 11:11 PM

    ごぶさたしています。やまさんです。

    NASの導入おめでとうございます。

    私の場合、昨年5月にNASをどうしようか?と悩んだ結果、

    ・ファンレス
    ・データ損失のリスクを極力抑える
    ・音質がよいと言われている

    を考慮の上、最終的に

    QNAP TS-119をマスターにして、リモートレプリケーションで
    TS-109にデータをバックアップする運用にしています。

    RAIDを組んでも、筐体そのものが、地震等で落下した場合
    ディスクがすべて読めなくなる可能性があるため、
    NASを2台構成にして、別々の部屋に置いています。

    ラックの上にNASを置かなければ、RAIDでもいいかとも
    思いましたが、PCとRAIDを傍に置きたかったので、
    こうなりました。

  4. Phoenicia
    2012年2月12日 at 11:44 PM

    NASはAspire easyStore H340-S4を使用しています。

    当初は映像データのサーバも兼ねようと思い、さる方に実使用での転送能力と価格を考慮して選択していただいたものです。
    実体はWindows Home Serverです。

    万一Voyage MPD側が誤動作しても音楽ソースには被害が及ばないようにVoyage MPDに対してはリード権限しか与えていません。

    また、別のディスクに定期的にバックアップを取るようにしています。
    音の優劣よりもデータ保全を第一にしています。

  5. コージー
    2012年2月13日 at 7:50 PM

    音楽再生用NAS、、、ついに来ましたか、、、というか待ってました!

    機種選定に関して私なりに調べて見ましたが、ユングさんの選定はきわめて妥当だと思いました。

    さて選択要素として、先輩方にぜひ議論していただきたい項目があって投稿しました。
    それは、「ファイルシステムの種類」です。

    おなじみの「みみず工房」や「シンさんのHP」などで、voyage MPDのファイルシステムをex2からXFSにすると音質がかなり向上するという情報もあるので、NASのファイルシステムも音質に関係するのでは?などと思った次第です。

    ちなみにQNAPは「ext3または4」、Synologyは「ext4」のようですね。
    バッファローのNASなどXFSがデフォルトになってる製品もあるようなのですが、音がいいという噂はあまり聞かないので、NASのファイルシステムは音質にあまり完成しないのかもしれませんが、、、

  6. ユング君
    2012年2月13日 at 8:43 PM

    >別のディスクに定期的にバックアップを取るようにしています。音の優劣よりもデータ保全を第一にしています。

    私もこれが一番大事かと思います。1000枚を超すリッピングデータが消えてしまったらその場に崩れ落ちてしまいますよね(^^;

    私も、RAID 1で保存しながら、定期的も打ち台のHDにバックアップを取っています。
    おそらく、これは必須だと思います。

  7. のっち
    2012年2月15日 at 10:49 PM

    のっちです。御教授ありがとうございました。早速追記を試みうまく行ったのですが次ぎの# mkdir /music/でエラーが出てしまいました。
    Kitに付属の取説、ともちんさんのコメントを参考に(結果的に取説のままですが・・・)
    //192.168.3.5/Music /mnt/public cifs username=admin,password=admin,uid=mpd,
    file_mode=0644,dir_mode=0755,iocharset=utf8 0 0で追記保存して
    # mkdir /mnt/public
    # mount ?a
    # ln ?s /mnt/public/ /var/lib/mpd/music/public
    # chmod ?R ugo+r /mnt/public/
    とエラーメッセージでずに入力できました。これでいいのでしょうか?
    ただ #mpd ?kill # /etc/init.d/mpd startはメッセージ(そんな機能ありません的な)がでてしまいました。
    よくわからないので、この状態のままGMPCをmpdにConnectしFile Browserを確認したところ今までなかったpublicフォルダができてました。ただ、アップデートしてもフォルダの中には何もありません。これは失敗でしょうか?一歩前進したようですが、まだまだ道のりは遠いようです。こんな私ですが引き続きの御教授お願いいたします。

  8. ユング君
    2012年2月16日 at 8:03 PM

    >一歩前進したようですが、まだまだ道のりは遠いようです。こんな私ですが引き続きの御教授お願いいたします。

    やはり、NASを導入したときはここが最大の「躓きの石」となるようですね。
    Linuxに不慣れな方にも理解してもらえるようなマニュアルのようなものをアップする必要があるようですね。

    暇を見つけてがんばってみたいと思います。

  9. Qoo
    2012年3月15日 at 10:41 PM

    誰でも出来るNASのセッテイングでお世話になっているQooです。
    向こうのページにコメントを貼り付けられません。
    何度かやっているのですが・・・。

  10. ユング君
    2012年3月16日 at 10:15 PM

    どうやら、スパムと判断して弾かれていたみたいです。
    調べてみると、他にも結構弾かれているみたいです。その辺の判断は全て「Akismet」に任せているのですが、現時点でこれに勝るスパムフィルターはないので、時々スパムとして弾かれたコメントもチェックしないといけないですね。

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