フェライトコアの功罪

少し前になりますが「こまめなノイズ対策~フェライトコア」ということを報告して、最後に「個人的には悪影響は出ていないように思いますが、音の感触が少しばかり変化したようで、全体として「改善」と言えるかどうかは微妙なところです。」とまとめておきました。
そして、「しばらくこの状態で聞き続けてみて、私の感性が(そんな大したものではありませんが^^;)受け入れるようならば使い続けたいと思います。」と報告しておきました。

あれから、NASを導入したり、タブレット端末をリモコン化したりと、報告しておきたいことがたくさんあってこのノイズ対策にふれる余裕がなかったのですが、そのあたりの対策も一段落したので、小ネタではありますが簡単にその後を報告しておきます。

ノイズと一緒に肝心の音楽データもカットしいる疑惑

まず、結論から言いますと、音楽データが流れる経路に挿入したフェライトコアは全て外すことにしました。
つまりは、「効果」よりは「弊害」の方が大きいと判断したわけです。

フェライトコアをケーブルや電源のラインに挟み込むと解像度が上がってしゃきっとした感じになります。一聴した感じでは改善されたような気がします。
そこで、調子に乗って(大量にフェライトコアを買い込みましたので・・・^^;)、ケーブルの両端にフェライトコアを挟み込めばもっと効果が出るだろうと言うことで、やってみました。理屈から言えば、一つフェライトコアを挟み込んでノイズ対策の効果が出るのならば、2つ挟めばもっと効果が期待できるはずです。
ところが、これは明らかにやりすぎで、音楽が痩せて聞こえるのがはっきりと分かります。そこで、今度は両端だけでなく、ケーブルの真ん中にも挟み込んでみました。これはもう、明らかに音楽データが削り取られてガリガリ感がはっきりと分かります。

と、言うことは、フェライトコアはノイズと一緒に肝心の音楽データの一部もカットしているのではないかという疑惑が浮かび上がったのです。
つまり、フェライトコアが一つだけだと削り取られるデータはごくわずかなので、ノイズ対策とのバーター関係で解像度が上がったような気がするのですが、2つ、3つと足していくと削り取る弊害が前面に出てくると言うことなのでしょう。

実は、ノイズ対策としてフェライトコア以外にもこんなものを買い込んで試してみました。

SANWA SUPPLY TEL-RJ45NF RJ45用ノイズフィルタ

LANアイソレーターの「RLI-1」があまりにもお高いので、その代わりになればうれしいなと思って買い込んだものです。
しかしながら、これもまた結論から言いますと、パッと聞いただけでは解像度が上がったように聞こえるのですが、明らかに肝心の音楽が痩せてしまいます。
そして、その痩せた雰囲気が、フェライトコアを挟み込んだときの雰囲気とそっくりなのです。

つまりは、こういう事なのでしょう。
これらのノイズフィルターは確かに、高周波の電磁波ノイズをカットする働きは持っています。しかしながら、そのカットする領域が思いの外広いようで、その下端の裾あたりが音楽データーの上端と被さってくるのではないかと睨んでいます。
フェライトコアだと、そのカットする量が小さいのでその弊害はあまり目立ちませんが、上記のような「RJ45用ノイズフィルタ」みたいなものだと、その弊害がはっきりと表に出てくると言うことなのでしょう。フェライトコアを2つ、3つと足していった場合も事情は同じなのではないでしょうか。

となると、問題点は、フェライトコアを一つ使った場合なのですが、これはおそらくメリットデメリットを天秤にかけると言うことなのでしょう。この辺りは、それぞれの方の環境に偉人する問題だと思うのですが、個人的には最初から「全体として改善と言えるかどうかは微妙なところ」と書いていたように、最終的にはデメリットの方が大きいと判断して外すことにしました。(外したところで、一個90円ですから・・・)

効果的なノイズフィルタの使い方

しかしながら、このチャレンジは結果として無駄にはなりませんでした。
なぜなら、あれこれやっているうちに、この手のノイズフィルタの効果的な使い方に気づいたからです。

それは、音楽データは流れていないけれども、システムの使い勝手を保つためにはどうしても接続しておいた方が便利なネットワーク上の機器に使用する方法です。
ざっと思いつくだけでも、

  • ハブの電源ケーブル
  • ルーターの電源ケーブル
  • ハブとルータをつなぐLANケーブル(強力なRJ45用ノイズフィルタを使用)
  • ルータに繋がっているLANケーブル

等々です。
つまりは、音楽データが流れる経路にはアコリバの「RLI-1」以外は使いません。
しかし、そこに繋がる機器の電源やLANケーブルにはフェライトコアやRJ45用ノイズフィルタを挟み込んで、音楽データが流れる経路に外部からノイズが流れ込むのを徹底的にカットします。

これは、アコリバの「RLI-1」を音楽データが流れる経路に挟み込んだような劇的な改善は期待できませんが、しらみつぶしに対策していくと最終的には結構な効果を発揮します。
当然のことですが、音楽データが流れる経路には使用しないので、音楽が痩せるというようなことはおきません。

やはり高いだけの価値はある「RLI-1」

私がアコリバの「RLI-1」を紹介したときに、コメント欄でその効果は認めながらも、2万円近い価格設定が「オカルト」だという書き込みがありました。
私も最初はそうだなぁ・・・と思ったのですが、こうしていろいろな対策を試していくと、アコリバの「RLI-1」はなかなかに大したものだと思うようになり、その価格には(やはり高いことは高いですが・・・^^;)理由があると思いました。
おそらくは、ノイズのカットの仕方にそれなりのノウハウがあるのでしょうね。

と言うことで、近いうちに、あといくつか「RLI-1」を仕入れて音楽データが流れる経路に複数使ってみたいと思います。


3 comments for “フェライトコアの功罪

  1. nino
    2012年3月19日 at 5:58 PM

    ユングさん、

    アイソレーショントランスについては、その後いろいろと調べてみました。

    その前に、フェライトコアについてですが、LANですからデータが失われるということはありませんね。では、なぜ音が痩せて聴こえるかというと、フェライトコアによるインピーダンスの不整合が原因だと思います。インピーダンスを上昇させることでノイズを通さなくすることがフェライトコアの仕組みですから、使い過ぎるとケーブルとしてのインピーダンスが大きく上昇します。その結果インピーダンスの不整合が起こって送信データの反射が起こります。跳ね返されたデータはすべてが揃うまで繰り返し送信されることになりますから、最終的なデータには変化がなくても、受信側(PC)のデバイスに余計な動作をさせて、余計な電流が流れることになります。ここでまた同じ理屈の繰り返しになりますが、データが一致してもちょっとした電位の変動などでタイミングが揺さぶられれば(つまりジッタ)音質は変わりますから、おそらくこういうことが原因だと思います。電源に使った場合もインピーダンスが上昇しますから、弊害も大きいと思います。

    フェライトコアを使う場合は対象とする帯域によって使用するコアも変わってきますから、そのあたりの専門知識なしで使ってみても、気休め程度にしかならず、オーディオ用途ではしばしば逆効果となってしまうようです。

    それからよく勘違いされるのですが、アナログの場合とは異なり、デジタルの場合データの一部が欠落したら、音質が劣化するのではなく、そこで音が途切れるとか雑音が出るとかという結果になるはずです。

    サンワサプライのフィルターは明らかにADSL回線のノイズと雷対策を意図した商品で、「不要電波(ノイズ)除去帯域:30Hz~1.1MHz帯域」とあることから、通常のLAN回線で使っても弊害だけで効果はないと思います。

    ところでタイミングよく、ON爺さんの3月15日のブログにアース(グラウンド)の話が出ていますが、複雑なグラウンドループを形成してしまうLANではこの理解は重要です。そこでアイソレーションの手段の1つとしてアイソレーショントランスの出番となるわけですが、業務用のしっかりした作りのルーターやスイッチでは、RJ45ジャックにトランスとチョークを内蔵したものが必ず使われています。ただ、家庭用の実売価格数千円台のルーターなどでは、コストダウンのため使われていないようです。

    いろいろと調べていく過程で部品のデータを眺めていると、その見分け方に気づきました。トランスとチョーク入りのものは、例外なく金属製で奥行きが21ミリ前後あります。それに対してトランスなしの単純なジャックは、樹脂製か金属製で奥行きが13ミリ前後しかありません。この見分け方が間違っていなければ、ALIXやQNAPのジャックはトランス入りのようですが、NECやBuffaloなどの家庭用ブロードバンドルーターと称されるものはトランスなしと考えてよさそうです。そうすると、使用すべき(すべきでない)場所が見えてきます。

    ただし、残念ながらトランスではLANで使用される高周波帯域のアイソレーションは不可能で効果を期待しすぎてもだめなようです。回路図を見ると、ほとんどの場合雷対策で通常は小容量のコンデンサを介してグラウンドに接続されていて、アイソレーション効果は一層低くなります。この点についてアコースティックリバイブに問い合わせてみたところ、同社の製品はこのコンデンサは使用していないそうです。日本光電の医療用トランスは、100Mで使用される1-2、3-6番のみ接続されていて他は未接続で、コンデンサもチョークもない、アイソレーションを重視した回路になっています。

    どうでもいいことですが、RLI-1はケーブルダイレクトのLANアダプタCAT6と外観がそっくりですね。サイズが若干違いますが。RJ45ジャックは膨大な種類が生産されているので、その中から音質的に優れたものを選んで、それに同社のLANケーブルを付けて、ケーブルダイレクトあたりで特注ケーブルとして製造させているのかもしれません。

    考え方として、高価なアクセサリを購入するのなら、初めからそれなりのルーターやハブを購入するということも選択肢に入れるべきでしょう。ルーターでも2万台であればそれなりのものが買えます。音質的にどちらがいいかはやってみなければわかりませんが。

    デジタル伝送ではインピーダンスのマッチングが重要ですが、その意味で接点の問題も無視できません。接点が不安定だとインピーダンスが上昇してそこでもデータの反射が起こります。ですから、接点の数をむやみに増やすと逆効果になることも考えられます。RLI-1を増設するのであれば、こういった点を考慮されるといいのではないでしょうか。もちろん増やすことで音質が向上する可能性も十分ありますし、それを否定するつもりはありません。

    最後に、アイソレーションという観点からは、信号ラインだけでなく電源ラインのアイソレーションも重要です。個人的には、ネットワークオーディオの音質対策で最優先すべきなのは、LAN機器で使用されるACアダプタ(スイッチング電源)の排除にあると考えています。スイッチング電源の弊害は、ノイズの発生源であるというだけではありません。トランスを使用したリニア電源との比較で考えると、実は電源トランスというのはそれ自体がアイソレーショントランスでもあります。したがって、電源ラインを通じたグラウンドループの問題が基本的に解決されます。これがスイッチ電源の場合は、電源を介してグラウンドがすべて接続されてしまいますから、信号ラインでいくらアイソレーションしても片手落ちということになります。

    以前コメント欄で、安価なリニア電源化の方法として無線機用の電源の話を紹介したのは、そのためです。トランス式のACアダプタでもOKですが、安定化されていないので、とくに大型のものについては電圧に注意が必要です。電源をリニア化すれば、付帯音が減ってすっきりした再生音になると思います。

    では、トランスよりも完璧なアイソレーションということで、光伝送となるのですが、またまた長くなりましたのでこれは次の機会に。

  2. まさし
    2012年3月22日 at 12:50 AM

    フェライトコアは、発生する磁界と90度交わる方向で磁界を発生する事によって、その後に連続して発生する電界を発生しないようにする効果のある物だったはずです。つまり外部に放射する電磁波の抑制ですかね?
    なのでデータそのものに影響は与えていないのではないでしょうか?

  3. nino
    2012年3月31日 at 3:59 PM

    もともとフェライトコアについて書くつもりはなかったので、フェライトコアを全否定するような内容になってしまっていますが、ちょっと補足です。

    要はフェライトコアをどこに使うかという使い方の問題であって、

    >つまりは、音楽データが流れる経路にはアコリバの「RLI-1」以外は使いません。しかし、そこに繋がる機器の電源やLANケーブルにはフェライトコアやRJ45用ノイズフィルタを挟み込んで、音楽データが流れる経路に外部からノイズが流れ込むのを徹底的にカットします。

    これでいいのであって、さらにケーブルダイレクトあたりで大量に買い込んで、近くのコンピュータとその周辺機器、さらには家中の家電製品のすべての電源コードに付けると効果大でしょう。私はそこまでやっていませんが、実際に百個ほど買い込んでやった人もいるようです。結構効果があるそうです。オーディオラインには使わないほうがいいというだけです。

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