ずいぶん前ですが、こんな事を書いていますね。
「PCオーディオをめぐる状況はあまりにも過小か、あまりにも過剰かの両極端しか存在しないように見えます。
しかし、PCオーディオの世界を楽しむためには『ハイエンド』ではない『そこそこのオーディオシステム』と『特別仕様のパソコン』ではない『普通のパソコン』を組み合わせるだけでも十分です。この『真ん中の世界』がすっぽりと抜け落ちているというのはとても不幸なことです。」
この言い方を敷衍するならば、「Voyage MPD」をめぐるやりとりは『過剰』の最たるものでしょう。ただし、この場合の過剰はお金ではなくて技術的なことにまつわる手間の過剰です。
しかし、この「過剰」にも意味があって、「物事というのはとことんまでやらないと本質は見えてきませんから、パソコンを音楽再生機器として使っていく上での問題点とメリットを明らかにしていく上で彼らが果たしてきた役割はとても貴重なものだったと言うことは付けくわえておきます。」とも述べています。
つまり、重要なことは、その過剰の中で見えてきたものを、普通の環境の中でいかに生かしていくかと言うことです。
今回の「Windows PCで気楽に音楽再生」というのは、そのあたりの問題意識から出発しています。
Windows PCの再生システム(^^;
気がつけば、現時点のサブシステムは価格的には普通とは言えない再生システムになってしまったかもしれません。(^^;
メインシステムを入れ替えていくうちにこんな風になってしまったわけなのですが、しかし、前回も触れたようにPCオーディオに関わる部分は必ずしも「価格」と「音質」は比例しません。少しお高い機器も混じっていますが、現在ならば普及価格帯の機器と入れ換えてもクオリティ的には大差はないと思います。
「Voyage MPD」という「とことんやってみる世界」をさまよっているうちに、お金をかける値打ちのある部分と、そうではない部分が少しずつ見えてきましたので、そのあたりのことも少しずつふれていければと思います。
これが、現時点のサブシステムです。
PC:オーダーメイドの静音PC
注文した当時としてはハイパワーでメモリもたっぷり積んであります。
音楽再生に特化するならばPCはできる限りシンプルな方がいいと言うことが分かってきたのでメインシステムから引退しました。
しかし、Windows PCとして普通に使用する環境で音楽も再生するとなると、ある程度のパワーは必要です。CPUはデュアルコア、メモリは2Gbあたりがストレスなく使える最低ラインだと思います。
さらに「静音仕様」だと理想的です。
NAS:Synology DS212
音楽ファイルを収納しています。当然のことながらメインシステムと共通です。音質面でも、使い勝手の面でも、PCのHDや外付けのHDに音楽ファイルを収納するよりはNASをお勧めします。
ただし、どういう訳か、国産のNASは簡単に壊れます。音質面だけでなく安全性も含めて考えると、お金をかけてでも「Synology」や「QNAP」を導入する値打ちはあります。
DDC:hiFace Evo
極めて高性能なDDCです。しかし、Linuxに対応させるためのドライバをすぐに(as soon as)公開するというアナウンスを信じて購入したのですが、だまされました。(~ロ~゚。)
今は行き場もなく、サブシステムの片隅で不遇を託っています。
DAC:Fireface400
一枚基盤の「Starter Kit」がメインの主役におさまってはfirewire接続のFireface400の出番はなくなり、これまたサブシステムの片隅でひっそりと暮らしています。
サブシステムのDAC(PARASOUND D/AC-800)は時代物なので、DDCとしてではなくDACとして使っています。
ただし、メインのDACが近いうちに入れ替わるので、現用のDAC(BENCHMARK DAC1)がサブに下りてきます。そうなると、これもまたDDCとして使われることになるかと思います。
DAC:PARASOUND D/AC-800
時代物のDACですので、USB入力はありません。入力も48Kまでしか受け付けません。(^^;高解像度でワイドレンジという今の流れとも全く正反対のDACですが、不思議な味を持ったDACなので今も大切に使い続けています。
DAC:BENCHMARK DAC1
長きにわたってメインシステムのDACとして君臨していたのですが、近々サブに引退することが決まっています。
これもまた、USB入力はないのですが、音の傾向はPARASOUNDとは正反対で超がつくほどの高解像度です。人によっては「耳が痛い」と言われるDACなのですが、業務機特有の素直さがあるので、使いこなしによっていかようにも手なずけることができる優れものです。
何度か日本橋に出かけていっては、これに変わるDACを探していたのですが、その数々の挑戦を退けてレギュラーの座を確保し続けていました。
しかし、今回、ついにESOTERICの『D-07X』の前に、その主役の座をゆずることになりました。
アンプ:YAMAHA AVX-2200DSP
ホームシアターに凝りはじめた頃に導入したアンプです。
そちらの方の興味はその後エスカレートして、AVC 3000DSPを導入してパワーアンプ3台をつなぎ、ソニーの3管式プロジェクターにキクチの80インチスクリーンと言うところまで突っ走ったのですが、今はすっかり熱が冷めてしまっています。
しかし、プロジェクターとスクリーンはもの入れで眠っていますが、AVC 3000DSPとパワーアンプ(MX-1)はリビングのシステムでがんばっています。そして、AVX-2200DSPもサブのアンプとして現役です。
こうしてみると、私は結構物持ちがいいなと感心しています。
スピーカー:キット屋 kit LS3/5A black special
これが唯一、サブシステムのために購入したものです。確か、ユニット(SA/F80AMG)も込みで5万円程度だったと思います。
あとでも詳しくふれますが、個人的には、これがサブシステムの肝だと思っています。
Windows PCを核としたデスクトップオーディオを考えるとき、このスピーカーの選択が最も重要かと思われます。
難点は、年に一度、限定数しか発売されないことです。特に昨年は本家Rogersの「LS3/5a」の復刻版(15万円)と全く同じ内容で発売されたために、わずか10分程度で蒸発したという「入手難」の商品です。
Rogersの「LS3/5a」はBBCがどこにでも設置できる小型ののモニタースピーカーとして導入したもので、幅19cm、高さ30cm、奥行き16cmというかわいらしさです。誰かが言っていたように、この小ささ故に犠牲になった部分もあるのですが、限られた空間において力を発揮するという特性に関してはこれに代わるものはなかなか見つかりません。
これが、現時点でのWindows PCにつながっているサブの面々です。
10万円PCオーディオシステムの提案
少し前に「3万円PCオーディオシステムの提案」をしたことがあります。おそらくは、これで充分と思われる方も少なくないと思います。しかし、このシステムは一つの完結した世界を作ってしまっていますので、ここからグレードアップしていくのは難しいシステムになってしまっています。
そこで、今回は、これよりはもう少しお金もかけてもっと上の世界を狙い、さらに、この先少しずつグレードアップも可能なようなシステムを考えていきたいと思います。
設定金額は、3万円の次なので10万円という事で考えてみたいと思います。
そう考えると、まず最初に投資したいのはスピーカーです。
投資できるお金は全体の半分でしょうから、5万円という事になります。
どんなレベルのシステムであろうと、オーディオの王様はスピーカーです。その意味は、スピーカーによってクオリティの上限が決まってしまうと言うことです。
ただし、いくら上限のレベルを上げたいからと言って15インチウーファーのスピーカーを導入するわけにはいかないのであって、Windows PCを核としたデスクトップ環境での再生という前提で考えると、自ずと制限が出てきます。
その最たるものが「サイズ」でしょう。
これが、現在のサブシステムの様子です。個人的には結構気に入っています。
キット屋特製の「kit LS3/5A」の収まりが非常にいいです。
本家Rogersの「LS3/5a」も、基本的にはこういう風に卓上にポンと置かれて使われることを前提としていますので、この状態で非常に優れたクオリティを発揮してくれます。
定価15万円の本家復刻版と大差のないクオリティが5万円前後で入手できるのですから、これは絶対にお買い得だと思います。問題は入手しにくいことです。
どうしてもこれが入手できないとなると、何がいいのでしょう?
例えば、長谷弘工業の「UMU-131XS」や「UMU-121SS」。
これだと、「kit LS3/5A」よりもさらに小型です。ユニットも込みの完成品ですから「kit LS3/5A」のように組み立てる手間もいりません。
もしも、お金にもっともっと余裕があるのならば、WoodWillあたりに注文すると、素敵なスピーカーができるでしょうね。(個人的にはいつかは!とねらっています。)
普通のメーカー品ではなくて、ちょっと小粋なものを選んでみたいものです。
この次に、お金をかけたいのがDACです。
このあたり意見は分かれるかもしれませんが、USB入力でPCからDACに直接つなぐよりは間にDDCを挟んだ方が音質的には有利だと感じています。エキセントリックにノイズ対策などはしないで普通にPCを使う環境を前提とすると、余計にPC→DDC→DACというつなぎ方は有利かと思います。
そうなると、現時点での一番のお勧めはTEACの「A-H01」にOnkyoの「ND-S10」を組み合わせる形です。
<TEAC USB DAC/ステレオプリメインアンプ A-H01-S>
< ND-S10(S)>
もしくは5000円ほど追加して「ND-S1000」というのもひとつの選択肢です。
TEACの「A-H01」はDAC内蔵のプリメインアンプですから、直接スピーカーに接続できます。
実は、ESOTERICの『D-07X』の音を聞きがてら、このTEACの「A-H01」の音も聞いてきましたが、なかなかのものです。価格はオープンなのですが、実勢では4万円を切っています。
お店では、TEACの「S-300NEO」につないで鳴らしていましたが、なかなかのものでした。
そのドライブ力をみていると、完全密閉型の「kit LS3/5A」でも充分鳴らし切れると思います。
そして、「A-H01」にはUSB入力がついていますから無駄なように思うかもしれませんが、さらにOnkyoの「ND-S10」を追加したいと思います。
「ND-S10」は今もメインのシステムに組み込んで使っているので自信を持ってお勧めできます。
Pod/iPhoneiからも非常に高いクオリティでデジタル情報を取り出せますから、普通使いのPCオーディオには非常に便利です。さらに、DDコンバーターの性能は非常に優秀で、PCからのデジタル情報を非常にいい状態でDACに送り込んでくれます。
今後のグレードアップでDACのグレードを上げていっても、かなりのレベルになるまで使い続けることができるクオリティを持っています。
こちらは実勢価格で1万円ちょっとですから、「A-H01」+「ND-S10」でちょうど5万円程度です。
ただし、このOnkyoの弱点は入力が48Kまでしか対応していないことです。
今時48Kかよ!と言う声が聞こえてきそうですが、このあたりはそれぞれの「価値観」が反映されますね。ハイレゾ音源が扱えないと我慢できないという人は却下でしょうし、CDクオリティの44.1Kで十分という人にとってはいい選択となります。
もちろん、TEACの「A-H01」は192Kまで対応していますから、ハイレゾを聞きたいときはPCから直接「A-H01」に入力すればいいだけです。
ただし、44.1KのCDクオリティの音源を再生するならば、何故かは分かりませんが、間にDDCをはさむ方が音質的にはかなり有利です。
もしも、「kit LS3/5A」+「A-H01」+「ND-S10」≒10万円でシステムが組めれば、使い勝手も良く、かなり魅力のあるシステムになるのではないでしょうか。
スピーカーをTEACが推奨している「S-300NEO」にすると、10万円から1万5千円程度のお釣りがきますから、それを使ってCDを買うのもいいかもしれません。もしくは、使い勝手を良くするソフトを買うのもいいかもしれません。
もしくは、その1万5千円で国産のNASを買うのも一つの手段です。
しかし、個人的には、安全性も考えると、お金が貯まってから「Synology」や「QNAP」を買った方がいいかと思います。
<追記>
書き終えたものを読み直してみて、まるでメーカーの宣伝文みたいだなと苦笑してしまいました。
もちろん、上記で紹介した商品が、全ての人のお気に召すかは分かりませんので、購入されるときは自分で判断して決断してください。ただ、昨今のデフレ状況の中で、10万円あれば、かなり魅力的な音が楽しめると言うことに驚かされました。あまり好きな言葉ではありませんが、「kit LS3/5A」+「A-H01」+「ND-S10」というのは非常にコストパフォーマンスの高い組み合わせではあると思います。
次回は、こんなソフトが便利!と言うのを提案したいと思います。(予定しているのは「dBpoweramp」です。)
yungさん、こんにちは。
普段、音楽とは無縁の生活を送っているのですが、
このサイトを見てふと、PCオーディオに挑戦してみたいと思いたち
・静音PC(マウスコンピュータ LUVLIB)
・スピーカー 長谷宏工業 UMU-121SS
・プリメインアンプ TEAC AH-01
・NAS QNAP TS-459ProII
を導入しました。
物が届くまで、スピーカーケーブルが別売りと知らないほどの
のんきさですたが、何とか設置を終えると、
今までのテレビのスピーカーとは違い、今まで聞こえなかった
たくさんの楽器の音がクリアに、調和して聞こえるのにびっくりしました。
今、 Blue Sky Label を楽しませていただいております。
ヴィヴァルディの「冬」、久々に聞きましたが良いですね。
これからも、初心者にもわかりやすい記事を期待しています。
>・スピーカー 長谷宏工業 UMU-121SS・プリメインアンプ TEAC AH-01
長谷宏工業のスピーカーはなかなかに優れものですよね。ティアックのアンプは実際に聞いたことがあるので保障できるのですが、この価格帯としては信じがたいほどのクオリティです。
>今までのテレビのスピーカーとは違い、今まで聞こえなかったたくさんの楽器の音がクリアに、調和して聞こえるのにびっくりしました。
難しいことは願い下げだが、もう少しまともな音で楽しみたいという要望はこれからも増えてくると思います。マニアックな情報に偏りすぎるのもよくないと思っていますので、これからも気軽に活用できる情報が見つかればドンドン報告していきたいと思っています。
昔の記事への質問になりますが、よろしくお願いいたします。
先日、スピーカーを買い換え、この際だからと他も新調しつつPCオーディオに取り組もうとしています。予定しているシステムは以下の通りです。(ND-S10、AI-301DA-Bは現在未購入)
外付けHDD→Windows8.1 (foober2000)→ND-S10→AI-301DA-B→DYNAUDIO DM2/6
目下の問題は、ND-S10→AI-301DA-Bの部分の接続について、同軸ケーブルを使うべきか光デジタルケーブルを使うべきかということです。Google先生に聞いてみても、両方一長一短だと言われるだけなので、どうかアドバイスをお願いいたします。このこと以外にも、私のシステム(予定)について何かありましたら、アドバイスをいただけるとうれしいです。
年末の忙しい中、恐縮です。
理屈抜きに私の経験から言えば、同軸ケーブルをお勧めします。理屈を言えば、オプティカルの方がデジタル領域のノイズをカットできるから有利だという人もいるのですが、音質的には明らかに同軸の方が好ましく思えます。
ただ、一つ気になるのは、「AI-301DA-B」で「DYNAUDIO DM2/6」を十分に駆動できるのか?という問題です。
「DM2/6」は結構言いスピーカーなので、それなりにアンプを奢ってやるとかなりいい音でなると思います。・・・なんてな事を書くと、どこかのオーディオショップの店員みたいなのでいやなのですが、結局音の最後の出口はアナログ段であり、アナログ段は煎じ詰めれば物量なので、そのあたりは慎重に見極める必要があるかと思います。
丁寧なご返答ありがとうございます。
ケーブルの方は、アドバイス通り同軸を使おうかと思います。同軸の優位性については、ジッターの影響について言及している方がいるのを見たことがありました。
>ただ、一つ気になるのは、「AI-301DA-B」で「DYNAUDIO DM2/6」を十分に駆動できるのか?という問題です。
これについては、スピーカー購入時に店員にも言われました……笑
実のところ、本当に欲しいのは、MARANZ PM7005です。DM2/6は低音が非常に厚く、その分高音が結構控えめなので、高音に強い(少なくともそういう世評の)MARANZのアンプとの相性は良いのではないかと考えたからです。
しかし、実売7万のため価格的に悩ましく、妥協しかけてのAI-301DA-B選択でした……
やはり、一度都心の専門店などで聴き比べてみるしかないようです(スピーカーを買った店では、スピーカーの視聴比較はできてもアンプの視聴比較はできませんでした。自分の家の近くには他に詳しく聴き比べができるところはありません)。
よろしければ、DM2/6におすすめな組み合わせを教えていただけないでしょうか? 何分、プリメインアンプを買うのは初めてのため、どうしても未経験の不安がつきまとうのです。
視聴する際の参考にさせていただきたいです。
年明け早々のお願いで申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
そうでしょうね、やはりアンプはアナログの世界なのでアナログのクオリティ=物量=物量相応の価格という「公式」が成り立ってしまいます。
そして、もう一つ「公式」を持ち出せば、少なくとも「スピーカーの価格=アンプの価格」というのもあります。
でも、それじゃ予算オーバーなんですね。
そう考えると、ティアックのアンプの駆動力の大きさは経験していますので、予算内と言うことなら悪い選択ではないと思います。
もし予算が許すなら、ROTEL RA-1062あたりはどうでしょうかね。
私もパワーアンプにはROTELを使っています。悪くないブランドだと確信しています。