メインシステムにエソテリックの「D-07X」を導入しました。久々の高い買い物だったのですが、2週間ほど鳴らし込んで、少しずつ調子が出てきた感じです。ただし、本領発揮までにはもう少し時間がかかると思いますので、詳しい報告は今しばらくお待ちください。
今日の話題は、PARASOUNDの「D/AC-800」です。
随分古い機種で、定価8万円で実売価格は5万円程度。「安物DAC」です(^^;。
しかし、その価格にしては「電源が強力で、抵抗やコンデンサーも信頼性の高いものを使って」いるらしくて、なかなかに渋い音を聞かせてくれます。
個人的には結構好きな音だったので長くサブシステムに組み込んでいました。
そして、「D-07X」の導入でサブシステムにBENCHMARKの「DAC-1」が下りてきたので、再びメインシステムの一角に復帰させました。
これが、現時点のメインシステムの構成です。この構成図は「Diagram Designer」というソフトを使って作成しているのですが、あらためて、とんでもなく複雑な構成になっていることに驚かされました。
おそらく、この複雑さを「楽しめる」人はPCオーディオの虜になるでしょうし、「願い下げ」にしたい人は背を向けるのでしょう。
本線は
「Voyage MPD (Starter Kit)」→「UDIF7(自作ケース)」→「D-07X」→「プリアンプ」
です。
こちらの方は、いわゆる「ハイエンド系」の音がします。(^^v
「Voyage MPD (Starter Kit)」→「UDIF7(自作ケース)」という構成はハイエンドのトランスポートと肩を並べられる性能を持っていますので、それが「D-07X」とつながることで、実に持って「そっち系」の音がします。
それに対して、PARASOUND「D/AC-800」の方は
「Voyage MPD (ファンレスPC)」→「ND-S1(専用電源)」→「D/AC-800」→「プリアンプ」
という、全く別のラインを構成して、その中に組み込みました。
さて、驚いたのは、この新たに構成したラインが生み出す音の何とも言えない摩訶不思議な味わいと魅力です。
はっきり言って、このラインには現代オーディオに求められる要素は何一つありません。
透明度も解像度も高くありません。レンジも広くありません。情報量も多くないのでザックリとした感じの音がします。
ところが、そこから聞こえてくる音には何ともいえない野太さみたいなものがあって、ソナスのエレクタアマトールとの相性が実にいいのです。神経質なところが全くなくて、のんびりとくつろいだ感じで音楽を楽しむことができます。
特に、女性ボーカルとはベストマッチングで、高橋真梨子や中島みゆきなどの年増のお姉様方(失礼!)はとりわけ魅力的です。もちろん年増でなくても、高橋真梨子が高橋まりと名乗っていた若き頃の『ジョニィへの伝言』や『五番街のマリーへ』なんかも悪くありません。
エディット・ピアフやアマリア・ロドリゲスなどの古い録音も実にいい雰囲気で再生してくれます。
まさに、「ナローレンジの美」です。
これと比べると、エソテリックの本線ラインが描き出すのは全く違う世界です。
そこでは、崩れた感じが後退します。どのお姉様方も理知的でお利口さんになってしまい、どこか取り澄ました感じがします。
それにしても、全く同じファイルを再生しながら、これほどまでにも異なる世界を描き出してくれる事にはいささか驚かされました。
『DAC=カートリッジ論』なるものがあります。
アナログの時代は、聞きたい音楽によってカートリッジを使い分けるのは常識的なことでした。私のようなものでさえ、3種類くらいのカートリッジを音楽や気分によって使い分けていました。
『DAC=カートリッジ論』というのは、このアナログ時代のカートリッジのようにDACを使い分けようというものです。
しかし、新しいDACと古いDACを同じシステムに同居させても、古い方はグレードが落ちた音を聞かせるだけで、結局はいつの間にか電源も入らない状態になってしまうことが一般的でした。現実には、アナログ時代のカートリッジのように「使い分ける」という風にはなりませんでした。
しかし、今回は見事なまでに2つの世界を描き出してくれました。狙ったわけではなく、ただのラッキーだっただけなのですが、この結果は望外のものでした。
私のメインターゲットであるクラシック音楽に関しては、圧倒的に本線ラインの方が優れています。レンジの広さ、解像度の高さ、情報量の多さ、そのどれをとっても「D-07X」のラインの方が圧倒しています。
しかし、お姉様方のボーカルを聞きたいときは、断然、PARASOUNDの「D/AC-800」のラインを選択します。
音楽によっては、物理特性が劣り、それ故のナローレンジが生み出す美もあるのです。
それにしても、オーディオというのは実に持って面白くもあり、難しくもあるものです。
怖れずに言いきってしまえば、オーディオのシステムというのは音楽という神霊を呼び出すための「想像の依り代(憑代)」なのかもしれません。
そう思えば、仇や疎かにはできません。
今日も、PARASOUND「D/AC-800」は素敵なお姉様方の声を聞かせてくれています。
さらなる詳しいダイヤグラムありがとうございます!非常にためになります。
かなり頻繁に拝見しています。私はMACBOOKなので、わからない部分も多いのですが、大変参考になります。
ところで、乏しい知識で御尋ねしますが、DACの場合、デジタル系よりも、実際はアナログ系が最終的な音に影響するという話を聞きますが、エソテリックよりも、PARASOUNDの方が音決めが良いということは考えられますか?
オーディオに関しては、最新=最良というのが、微妙なのではと感じる事があるからです。
こんにちは!
D-07X良さそうですね!
このDACはVoyageMPDとUSB Audio2.0での接続はすんなりと出来ているようですが、もしご存知であれば、使用されているUSBインターフェースチップをご教授いただけますでしょうか。
VoyageMPDと接続するためのUSB I/Fチップ(XMOSやTE-8802Lなど)を少し研究しておりますので、お手数ですがよろしくお願いいたします。
> ナローレンジが生み出す美
この表現に拍手です。素晴らしい表現だと思います。
DAC=カートリッジ論はもう一つ納得できます。
いやはや、今回、これを読ませていただいて溜飲が
下がりました。
>DACの場合、デジタル系よりも、実際はアナログ系が最終的な音に影響するという話を聞きますが、
全くその通りで、DACはアナログ段の性能が一番重要だと思います。
そして、この価格帯でいえばエソテリックかフェーズメーション(HD-7A192)あたりが一番丁寧に作り込まれているように思います。
最終的にはこの2機種をじっくりと試聴させてもらって、好みも加えてエソテリックを選択しました。
しかし、
>エソテリックよりも、PARASOUNDの方が音決めが良いということは考えられますか?
これは、ないと思います。一般論としていえば、やはりエソテリックは優秀です。
ただ、良い悪いではなくて、ある限られた世界に対して非常に相性がいいということです。(ですから、PARASOUNDでクラシック系の音楽を聞く気にはなりません。)
アナログ段の作り込みという点ではエソテリックとPARASOUNDでは比較するのも気の毒なくらいの差があります。
しかし、そう言う物理特性だけでは割り切れない面白さがオーディオにはあるということです。
>このDACはVoyageMPDとUSB Audio2.0での接続はすんなりと出来ているようですが、もしご存知であれば、使用されているUSBインターフェースチップをご教授いただけますでしょうか。
エソテリックのDACは遊べる部分が多くて、まだどういう状態でUSB接続できているのかは確認し切れていません。何となく、2.0ではなくその下の1.0で接続しているような気がします。
また。転送方式もアシンクロナスでは亡いような雰囲気も・・・します。
この辺りのことは、もう少し使い込んでから食わしkほうこくしたいと思います。
なお、現状はVoyage MPDとエソテリックの間にはフェーズメーションの「UDIF7」を自作のケースに入れたDDCをはさんでいます。
こんにちは、ご回答ありがとうございました。
> どういう状態でUSB接続できているのかは確認し切れていません。
メーカーホームページの内部写真(あまりはっきりしていないもの)から推測するにはTENOR TE-8802Lが使用されているようにも思いました。このチップはかなり音が良いと感じています。ただし、このチップはファームウエアによってはLinux(VoyageMPD)とUSB Audio2.0で接続できない(Accupbase DC-901がそうでした)こともあり、少し気になって調べている次第です。
確認できましたら是非ともご教授お願いいたします。
>このチップはかなり音が良いと感じています。ただし、このチップはファームウエアによってはLinux(VoyageMPD)とUSB Audio2.0で接続できない(Accupbase DC-901がそうでした)こともあり、少し気になって調べている次第です。
上でも少しふれましたが、確かに「USB Audio2.0」では接続できていないように思います。おそらく、間違いはないと思います。
USB接続をすると、「D-07X」の方では「NORM」としか表示されません。「NORM」の時は96kHzまでで、アシンクロナスモードにも対応していません。
192kHzまで、さらにはアシンクロナスモードに対応させるには専用のドライバが必要なようです。当然のことながら(^^;、Linuxに対応したドライバは配布されていません。
ただし、個人的には「Voyage MPD」からDACに直接USB接続するよりは、間に「DDC」を挟み込んだ方が音質的にはかなり有利だと思っています。
「D-07X」を購入したお店の店員さんは「Voyage MPD」の事も詳しくて、その点では私と同意見でした。
yungさま、こんにちは。
最近、ブログを拝読させて頂いているものです。
最近、PC Audioを始めまして、貴ブログに出会えたこと大変光栄です。
いつも楽しみに読ませて頂いています。
「DACカートリッジ」的位置づけ論、はい、確かに理解できます。
しかし、それも色々なDACを聴き修行を積んだ結果だと思います。
不思議なもので最初は聴き分けられなかった音色が分るようになり
一度分ってしまうと、つい気がついてしまう業の深さに苦笑いです。
PC Audioとは、響きが新しく、何か今までのオーディオと異分野的扱いを
年配のオーディオフィルの方にされるのが残念です。
少し思いを馳せたなら、後は実践がしやすいのがPC Audioだと思います。
ですので私は自身のブログで「こちらがわ」へおいでと言っています(笑)
PC Audioも従来のオーディオ(個人的にレガシーオーディオと読んでます)
で築いたテクニックが有効でちゃんと効果が出るのに…と(笑)
時代は、確実にこちらへ流れていますが、時々「あちら」に回帰して
温故知新をしています。
>PC Audioも従来のオーディオ(個人的にレガシーオーディオと読んでます)で築いたテクニックが有効でちゃんと効果が出るのに…と(笑)
これは全くその通りだと思います。PCオーディオと言っても、結局はCDトランスポートに該当する部分までですから、DAC以降は今までのオーディオとは全く変わるところがないですからね。
特に、スピーカーのセッティングやリスニングルームのチューニングなどはきちんとやらないと、いくら入り口の部分であれこれやってみても意味がないと思います。
Voyage MPDに変わるより魅力的な提案が出てくるまでは、漸く一段落できそうですので、そういう「レガシーオーディオ(いい表現だと思います。広げたいですね。)に関わる情報も取り上げていきたいですね。
本日、仙台でオーディオフェアがありましたが、ほとんど全てのブースで、PC Audio がはいっていました。なかには、CDプレーヤーは高級機、USB-DACは入門機というブースもあり、過渡期らしい現象も体験しました。
PC-Audio に関して情報に乏しかったのですが、HiFace Two が XMOS だと教えてもらいました。 (ただ、担当者が Voyage MPD を知らないので、話は進みませんでした。)
さて、本題ですが、“ナローレンジの美”という言葉に共感します。 でも周波数特性は同じかも・・・(笑)。
【DAC=カートリッジ】は実によい表現だと思います。 少しずつ増やす予定です。
現在は、メインにひとつ、サブシステムにひとつですが、メインシステムをグレードアップして、現在のも残すつもりです。
>本題ですが、“ナローレンジの美”という言葉に共感します。 でも周波数特性は同じかも・・・(笑)。
私の場合は、絶対に違いますね。「PARASOUND」の場合はホントに上も下もでていません。それと比べると、ベンチマークのDACはかなりレンジが広がっていました。そして、エソテリックとなると、これは圧倒的です。
天満敦子の「祈り」のパイプオルガンが初めてきちんと再生されました。(ヤマハのサブウーファー、初めて実力の片鱗をみせてくれました。)
>現在は、メインにひとつ、サブシステムにひとつですが、メインシステムをグレードアップして、現在のも残すつもりです。
趣味として楽しむならば、全く違う傾向の機種を選ぶと楽しいですね。
私の場合は、「PARASOUND」という時代遅れのDACゆえの面白みが言い方向に引っ張ってくれました。もちろん、狙ったわけでhなく、ただの偶然ですが・・・。(^^;
こんにちは、いつも楽しく拝見させてもらってます。私はヘッドホンもしくはカスタムiem専門で音楽を楽しんでいます。そこで、イヤホンに長けたDAC若しくはヘッドホンアンプご存知でしょうか。あつかましいですが、ひとつアドバイスを頂けたら幸いです。
あ、もちろんvoyage mpdを使用しています。
私、新しいDDC、DACの購入を検討しています。
Voyage mpd で認識する機器について教えていただけませんか。
エルサウンドDDC-192 ALLはどうでしょうか。
Fostex、HP-A8は?
TEAC、UD-H01は?
これらの購入を考えています。
いずれも、「アシンクロナス・モードで動作」と仕様に書いてありますが。
Voyage mpd で認識するかどうかを見分けるポイントを御教授いただけると有り難いのですが・・・。
>Voyage mpd で認識するかどうかを見分けるポイントを御教授いただけると有り難いのですが・・・。
これについては既に解決していますね。
http://www.yung.jp/UseBB/topic.php?id=39
ポイントだけを抜き出せば以下のようになります。
「この悩ましい問題は「Voyage MPD」の作者に直接問い合わせてくれた人がいまして、基本的には解決しています。
「最新のMacに特別なドライバなしで認識すればVoyage MPDでも問題なく認識します」
Windoes7にはドライバが必要でも最新のMacならドライバなしでもOKと言うものも結構あります。そう言うときは、ほぼ間違いなくVoyage MPDでも大丈夫です。
これは、最新のMacもVoyage MPDも「USB Audio Class 2」という規格をサポートしているからです。Linuxへの対応はカタログに記載しているものはほとんどないのですが、Macならば記載されているのが一般的ですから、それを確認すればほぼ見当がつくと思います。」
ということです。
yungさん
早速の連絡、有り難うございました。
私が検討しているDDC、DACはすべてOKのようですね。
yung さん
>ただし、個人的には「Voyage MPD」からDACに直接USB接続するよりは、間に「DDC」を挟み込んだ方が音質的にはかなり有利だと思っています。
「D-07X」を購入したお店の店員さんは「Voyage MPD」の事も詳しくて、その点では私と同意見でした。
VoyageMPDの「USB Audio Class 2」対応と合わせてこの問題に自分なりに考えてみたいと思うのですが、DDCを入れたほうが音質的によいというのは、単なる試聴の結果なのか、何らかの根拠があってのことなのか詳しく教えていただけますか。
単純に考えるなら、DDCを入れることによってSPDIF変換/転送が入ることなどを考えると、必ずしもDDCを入れることが有利であるとはいえないような気もしますが。
自己レスですが、DAC直結とDDC経由の差がどのような条件で比較してのことなのかは不明ですが、考えられる要因として、USB接続がネックになっている可能性はあると思います。USBDACが雨後の筍のように登場してくる以前は、FF400のようなFirewire接続のオーディオインターフェイスが主流で、USB接続のものは音が悪いと見下されていました。
USBDACが主流となったのは、音質的に優れているからではなく、PCの世界でUSBがスタンダードになっているからというのが理由であって、2.0になっても、USBというのは鬼門であることに変わりはないようです。
DSのようなネットワークプレーヤーがPCオーディオに対して優位性があるとすれば、USB接続が不要であるという点かもしれません。
DDCを経由してもUSBを使わざるを得ないことに変わりはありませんが、FIDELIXのCAPRICEでは、USBは音質的に劣るから使わないと明言していますね。
訂正です。
USB接続が不要であるという点
↓
USB接続やS/PDIF接続が不要であるという点
忙しさにかまけてコメントを返すのを忘れていました。
>VoyageMPDの「USB Audio Class 2」対応と合わせてこの問題に自分なりに考えてみたいと思うのですが、DDCを入れたほうが音質的によいというのは、単なる試聴の結果なのか、何らかの根拠があってのことなのか詳しく教えていただけますか。
理由付けはしようと思えばいくらでもできると思うのですが、最近は「デジタルの世界は未だに未開拓」という思いが強くなり、最終的には自分の耳を信じることにしています。
この件についても、理由付けはあれこれしているのですが、基本的には聴感上の判断です。
ただし、その差はかなり大きいです。
ブラインドでも聞き分ける自信は・・・「有り」です。(^^v
この問題は、よく考えてみるとPCからデータをどう受けてどう次のステップに渡すかの問題であって、DDCを経由するかどうかの問題ではありませんね。DAC直結でも内部でDD変換は行われているわけですから、議論すること自体ナンセンスなような気もしてきました。
そう考えると、LINNが主張するDSの優位性というのも、クロックの統一とか、経路の単純化など、確かに理には適っています。KLIMAXの能書きを読むと、PCオーディオなんかと一緒くたにすな、と言いたくなる気持ちは、まぁわからないでもないですが。。。
それでも法外としか思えないこの価格、現地価格を調べてみると何とたったの1万ポンドですね。つまり、DSが登場した2007年当時のバブルポンドレートで決めた定価を、リーマン・ショック後レートが半分になっても変えていないということですね。さすがはハイエンドオーディオ、すごい殿様商売だな。。。
RMEなどはきっちりとユーロレートを反映させていますが、あちらはもともと業界も市場も違いますからね。
業界の内部事情についてまでは知りませんが、ひょっとしたら業界全体として、規模の縮小を円高差益で何とかカバーしてきたという面もあるのかもしれません。でも、ニクソン・ショック以来続いた歴史的円高トレンドも、今年の2月でまず間違いなく終わってますからね。